「熔ける 再び そして会社も失った」井川 意高
2024/11/22公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(82点)
要約と感想レビュー
カジノで100億円を消失
著者の井川意高(もとたか)さんのYouTubeが面白すぎて、やっと読んでみようと手にした一冊です。井川さんはエリエールの大王製紙の社長、会長を歴任しています。社長のときカジノで会社の金100億円を使ってしまい、背任で有罪となりました。
もともと井川さんは、切手集めや釣り、ワインや車にハマっており、興味をもったことはとことん突き詰めてしまう強迫気質だと自分を分析しています。アルコールも限界を超えるまで飲まなければ、その日を締めくくることができないという。そして、ギャンブルにハマってしまったのです。
ギャンブルをしていると勝ったり負けたりの変化によって、まるでジェットコースターに乗っているかのように、脳髄が痺れるという。
バカラならではのヒリつくスリルが、たまらなく心地よく、破滅願望を満たしてくれるのだ(p11)
大王製紙は400億円で創業家を追い出す
仕事では、年間赤字70億円、借入金1000億円の子会社の名古屋パルプを収支トントンにしています。また、年間80億円の赤字を出していた家庭紙部門も黒字化させたという。こうした実績を出して創業家として社長、会長にまで上り詰めたのですが、結局、ギャンブルで金も会社も失うことになったのです。
ただ、会社の金については、所有する株式で支払うことで計画していましたが、大王製紙側が「現金での返済」と主張し、持株を400億円で大王製紙に売却することになったという。大王製紙としては、400億円で創業家を追い出して、やっと普通の会社なったということなのでしょう。
アップルを追い出されたスティーブ・ジョブズを思い出しました。いくら優秀であっても、人間性に問題があると普通の会社員は耐えられないのです。
創業家が持っていた株式は相場の2.5倍もの高値で売却に成功した・・440億円もの売却金額を得た(p159)
ギャンブラーにゴールはない
著者が「私の興味関心は仕事には向いていかなかった」というように、社長になってもどこか埋められない心の穴があったのではないでしょうか。私は、井川さんがカジノにはまったのは、潜在意識の中で、「これは自分の人生ではない」と自ら今の生活を破壊してしまったのではないかと妄想していました。
ただ、井川さんは現役時代より今の顔のほうが楽しそうに見えます。今後もYouTubeで経済界の実態を暴露していただきたいと思います。ギャンブラーの気持ちはわかりませんが、井川さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・フーコーは「ほとんどの人間は他人の人生を生きている」と言った(p23)
・ギャンブラーにゴールはない。すべての戦いは通過地点であり、人生のプロセスなのだ(p62)
・安倍総理は電話口でこうおっしゃって私を励ましてくださったのだ・・「私の祖父なんて50過ぎてから巣鴨に行って、戻ってきて総理になったんですよ。まだまだこれからですよ、井川さん!」(p186)
【私の評価】★★★★☆(82点)
目次
序 章 賭場
第一章 懲役
第二章 出獄
第三章 鉄火
第四章 蕩尽
第五章 暴君
第六章 修羅
第七章 回向
著者紹介
井川 意高(いかわ もとたか)・・・1964年、京都府生まれ。東京大学法学部卒業後、1987年に大王製紙に入社。2007年6月、大王製紙代表取締役社長に就任、2011年6~9月に同会長を務める。社長・会長を務めていた2010年から2011年にかけて、シンガポールやマカオにおけるカジノでの使用目的で子会社から総額約106億8000万円を借り入れていた事実が発覚、2011年11月、会社法違反(特別背任)の容疑で東京地検特捜部に逮捕される。懲役4年の実刑判決が確定し、2013年10月から2016年12月まで3年2カ月間服役した。
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