「赤と青のガウン オックスフォード留学記」彬子女王
2024/11/20公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(85点)
要約と感想レビュー
皇室とオックスフォード
著者彬子女王(あきこじょおう)は、三笠宮家の故寬仁(ともひと)親王殿下の第一女子です。寬仁親王殿下は、昭和天皇の弟である三笠宮崇仁(たかひと)親王殿下の第1男子ですから、今の天皇陛下からみると従兄弟ということになります。著者は、父である寬仁親王殿下から「お前はオックスフォードに行くんだ」と小さい頃から聞かされていたという。
天皇陛下は、オックスフォード大学マートン・コレッジに2年留学、雅子様は、オックスフォード大学ベイリオル・カレッジに2年留学、父の寬仁親王殿下は、オックスフォード大学モードリン・コレッジに2年留学と皇室はオックスフォードと関係が深いのです。
また、父の寬仁親王殿下は、「留学記はきちんと書くんだろうな」と再三言っていたという。自分が「トモさんのえげれす留学」を出版したように、娘の留学記を読むのが夢であったというわけです。
幼いころから事あるごとに「お前はオックスフォードに行くんだ。オックスフォードに行くんだ・・」と繰り返し呪文のように聞かされた(p38)
皇族と一般国民との違い
興味深いのは、皇族と一般国民との違いでしょう。まず日本国内では、皇族には護衛官が付き添います。幼稚園のころは、両親の代わりに側衛が迎えにくることがほどんどであったという。ただし、EU圏内における二週間以上の滞在の場合、護衛官は付かないというルールのようで、著者が生まれて初めて一人で街を歩いたのは日本ではなくオックスフォードということになったのです。
また、皇族は戸籍や住民票はなく、国民健康保険にも加入していないという。パスポートも表紙に「外交旅券」と記載された 茶色の外交官がもつパスポートと同じものであるという。
なぜ皇室がイギリス留学するのかといえば、ぎゅうぎゅうに管理された日本から離れ、自由な一般人と同じ生活を一生のうち一度でも体験するためではないのかと、私は勝手に想像しました。
生まれて初めて一人で街を歩いたのは日本ではなくオックスフォードだった(p51)
皇族として初めて博士号を取得
著者は日本美術について研究を続け、留学期間は五年。皇族として初めて博士号を取得して帰国しました。本書は非常に読みやすく、エピソードも豊富で、エッセーで食えるくらいの文章力ではないでしょうか。著者は留学中、父と二週間に一度くらいのペースで文通をしていたというので、そうした手紙の内容がベースになっているのかもしれません。
皇族とはいえ、一人の人間であると感じました。彬子女王、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・皇族は海外旅行に出かける前・・・本来は古来皇室にとって特別なお社である伊勢の神宮に参拝するのが通例であったが、海外への渡航も頻繁になってきた昨今では、毎回伊勢までうかがうのは大変ということで、(皇居内の)賢所に参拝することでそれに代えている(p157)
・迷子になった側衛を探し回ったことも何度かある。レストランで食事をするときは、・・サラダ、魚料理、肉料理と上から下まですべて訳したあとで「サラダにします」といわれたときは、心のなかで「なんですと!?」である(p53)
・「そういえば昨日、女王陛下にお目にかかって、役者絵の展覧会がとてもよいので、とお勧めしてきました」・・・「なんだって!女王陛下をお誘いした!?」といったあと、絶句した・・英国人にとっての女王陛下とは大きな存在なのだ(p118)
・大英博物館が所有する日本美術品の総数は約三万点もある・・日本でいう明治時代に蒐集(しゅうしゅう)されたものである(p97)
【私の評価】★★★★☆(85点)
目次
百川学海
大信不約
苦学力行
日常坐臥
合縁奇縁
一期一会
千載一遇
危機一髪
多事多難
奇貨可居
五角六張
一念通天
日常茶飯
骨肉之親
前途多難
一以貫之
玉石混淆
古琴之友
傾蓋知己
忍之一字
当機立断
随類応同
七転八倒
進退両難
不撓不屈
著者紹介
彬子女王(あきこじょおう)・・・1981年(昭和56年)故寬仁親王殿下の第一女子としてご誕生。学習院大学を卒業後、英国オックスフォード大学マートン・コレッジに留学され、女性皇族初の博士号を取得してご帰国(専攻は日本美術)。立命館大学総合研究機構のポストドクトラルフェロー、特別招聘准教授を経て、現在は日本・トルコ協会総裁、一般社団法人日英協会名誉総裁、公益社団法人日本プロスキー教師協会総裁、公益財団法人日本ラグビーフットボール協会名誉総裁、一般社団法人心游舎総裁、京都産業大学日本文化研究所特別教授、京都市立芸術大学客員教授など。
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