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「GDPで日本を超えた!のんびり稼ぐドイツ人の幸せな働き方」熊谷徹

2025/01/15公開 更新
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「GDPで日本を超えた!のんびり稼ぐドイツ人の幸せな働き方」熊谷徹


【私の評価】★★★★☆(81点)


要約と感想レビュー


ドイツの労働時間は1343時間

著者は、1990年からドイツで34年間働いてきました。ドイツの労働時間は1343時間。日本の労働時間は1611時間で、ドイツ人は日本人の8割しか働いていません。ドイツの多くの企業では年30日間の有給休暇を与えており、さらに残業時間を年10日間まで代休として消化することを許している企業も多いというのです。


ドイツで2,3週間の長期休暇をとることは常識だし、そもそも1日当たり10時間を超える労働は法律で禁止されているのです。日曜日や祭日に会社や店で働くことも禁止され、日曜日は町は閑散としているという。


実際ドイツ人は、1月になると、夏の長期休暇が同僚の長期休暇と重ならないように調整をはじめます。全員が交代で休暇を取るので、ドイツ人の間では長期休暇について罪悪感も不公平感も全くないという。


電車が4時頃に混む理由の一つは、ドイツ人の労働時間が我々よりも短いからだ。朝7時に仕事を始めて、早めに家に帰る人も多い(p54)

傷病休暇は有給休暇とは別

ドイツの労働環境は、どうしてここまで日本と違うのでしょうか。


まず、日本では有給休暇を半分強しか取っていませんが、ドイツ人が有給休暇を全て消化できるのは、傷病休暇を有給休暇とは別に取れることが原因であるとしています。ドイツでは傷病休暇と有給休暇が厳格に区別されているので、病気で休むときのために有給休暇を残しておく必要はないのです。


ちなみに、ドイツでは産前産後休暇の14週間は、有給休暇とすることが義務付けられています。また、1日10時間以上労働させた場合、ドイツでは摘発されれば、罰金を支払うことになります。兵庫県のように通報者が懲戒される日本とは違うのです。


文化の面でいえば、ドイツ人は「他人は他人、自分は自分」、「仕事は生活の糧を稼ぐための手段」と割り切っている人がほとんどであることも理由としてあげています。集団の調和や統率、他人への配慮を重視する日本の文化とはドイツの文化はまったく違うのです。


ドイツで長時間労働が摘発されるケースが多い業種は病院、IT企業、建設業界だ(p67)

ドイツ企業は冷たく厳しい組織

しかし、労働時間が短いからといって、ドイツは天国ではありません。ドイツ企業では、事実を正確に伝えることを重視しており、業績評価が悪い社員の降格は日常茶飯事だという。日本人から見ると、冷たく、厳しい組織だというのです。


また、上司の存在を気にして、上司が帰るまで帰れない日本とは逆で、仕事が終わらないと上司に仕事を任せて帰宅してしまう社員もいるという。つまり、「高い給料の上司は、平社員よりも長く働くのは当然」と誰もが考えており、上司が遅くまで残っていても、平社員が先に帰宅することは当たり前という感覚だというのです。(この点は、私も理解できません)


そもそもドイツには「お客様第一主義」という考え方はないので、労働時間を増やすような規則にないサービスは引き受けません。閉店時間とは退社する時間なので、10分前には片付けはじめ、閉店時間にとっとと帰宅するという。


郵便でも再配達などせず、不在の場合は、顧客が後で自分で取りに行くことになるのです。


ドイツ・・「おもてなしの国」ではなく、「サービス砂漠」だ・・悪いサービスに慣れている(p118)

会社の仕事だけが人生ではない

著者は1980年代にNHKで働いていたときに、徹夜でNHKスペシャルの編集作業をした経験を紹介しています。編集時間に余裕を取っていないために、徹夜を余儀なくされるも、それでも頑張るメンバーの何人かは若い年齢で他界したという。


その一方で、ドイツ人は、「会社の仕事だけが人生ではない。働くだけではなく、人生を楽しむことも重要だ」と考え、実践しているというわけです。日本人は、仕事に人生をかけて素晴らしい番組を作ってきましたが、命を削らなくてもよい番組は作れるのではないかと著者は言いたいのでしょう。


熊谷さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・無休で休むサバティカル制度・・休暇は3か月から5年まで千差万別(p99)


・仕事の抱え込みをやめることだ・・サーバーの中に、誰もがアクセスできる共有ファイルを作ることが重要だ(p189)


・ドイツは、グループの調和を重んじる日本に比べると、はるかに個人主義が強い社会である「すべての人は、自分のことだけを考え、神様は全ての人のことを考える」(p140)


▼引用は、この本からです
「GDPで日本を超えた!のんびり稼ぐドイツ人の幸せな働き方」熊谷徹
熊谷徹、ぱる出版


【私の評価】★★★★☆(81点)


目次


第1章 なぜドイツの名目GDPは、55年ぶりに日本を抜いたのか
第2章 ドイツは世界最大の時短国家。働き過ぎを防ぐ仕組みは?
第3章 ドイツのワークライフバランスは日本を上回る
第4章 コロナ後、ドイツ人の働き方はどう変わったか
第5章 ドイツはさらに時短を目指す・週休3日制への模索
第6章 日本でもできる、時短のためのヒント


著者紹介


熊谷 徹(くまがい とおる)・・・1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、NHKに入局。ワシントン支局勤務中に、ベルリンの壁崩壊、米ソ首脳会談などを取材。1990年からはフリージャーナリストとしてドイツ・ミュンヘン市に在住。過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題、エネルギー・環境問題を中心に取材、執筆を続けている。


ドイツ人の働き方関連書籍

「GDPで日本を超えた!のんびり稼ぐドイツ人の幸せな働き方」熊谷徹
「ドイツ人のすごい働き方―日本の3倍休んで成果は1.5倍の秘密」西村栄基
「ドイツ人はなぜ「自己肯定感」が高いのか」キューリング恵美子
「住んでみたドイツ8勝2敗で日本の勝ち」川口 マーン 惠美


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