「ウソみたいな人体の話を大学の先生に解説してもらいました」中尾篤典、毛内拡
2024/11/26公開 更新本のソムリエ [PR]
Tweet
【私の評価】★★★☆☆(74点)
要約と感想レビュー
うんちを移植する
人体に関わる最近の話題を集めた一冊です。私が興味を持ったのは、「うんちの移植」と「免疫療法」です。
「うんちの移植」とは、人の免疫力や体質が腸内細菌によって決まってくるということを活用して、健康な人のうんちを移植するものです。私も家内の腸内細菌を移植すれば、おならが臭くなくなるかもしれないと希望を持ちました。
また、「免疫療法」はがんの種類によって最低5%から最高で30%と効果に差があり、平均しても10%程度しか効果がないという。そこで、がん細胞を半殺しにして体内に戻すことで、そのがん細胞への免疫を強化するという研究があるという。副作用が少ないと言われる免疫療法も、将来に期待できるかもしれません。
うんちを移植する治療法がある・・・腸内細菌によって、その後の免疫力や体質が決まってくる(p14)
歯周病菌は血糖値を上げる
普通の生活で活用できそうなのは、お酒や砂糖や歯周病への警告でしょうか。お酒は基本的に身体にとって毒ですが、お酒を飲みすぎると膵炎になり、インスリンが分泌されにくくなり、糖尿病になるという。
砂糖や果糖は、脂肪生成を促進させ、糖尿病や肥満の原因となります。当たり前のことですね。また、歯周病については、糖尿病の原因になるだけでなく、筋肉を脂肪化させ身体に炎症を起こすという。できるだけお酒や糖分を避けて、歯周病はちゃんと治療することが大事なのです。
歯周病菌は血糖値を上げるという直接的な糖尿病の原因となるだけでなく、筋肉を脂肪化させ身体に炎症を起こし、腸内細菌の多様性を奪う(p151)
宇宙にいると心臓が小さくなる
身体の不思議な能力については、宇宙に行ったり、泳ぎ続けると心臓が小さくなるという話が面白いと思いました。生活習慣を数ヶ月変えることで、身体はその環境に適応するのです。
また不思議な身体の仕組みとしては、免疫の主役T細胞が、胸腺で自分の身体を攻撃しないように教え込まれるというのも面白い。胸腺には皮膚・筋肉・肺・肝臓・腸など様々な身体の部位を真似た細胞が展示されているというのです。
生まれたばかりのT細胞はまず胸腺に送られ、そこで自分の身体を攻撃しないように教え込まれる(p114)
血液型性格分類に科学的根拠はない
ビッグサンダーマウンテンに乗ると尿管結石が出てきやすくなるといった噂レベルのものもありました。ちなみに日本で言われるA型は几帳面、B型はマイペース、O型がおおらかで、AB型変わり者という血液型による性格分類は、科学的根拠はないという。
テーマが一貫していないので、あちこちに飛ぶイメージでした。この本で身体の不思議について興味を持つ人が増えるといいなとも感じました。中尾先生、毛内先生、良い本をありがとうございました。
無料メルマガ「1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』」(独自配信) 3万人が読んでいる定番書評メルマガ(独自配信)です。「空メール購読」ボタンから空メールを送信してください。「空メール」がうまくいかない人は、「こちら」から登録してください。 |
この本で私が共感した名言
・寒い冬に私たち人間の抵抗力が下がる・・鼻の粘膜細胞が冷えてくると、感染したときに分泌される細胞外小胞の「質と量の両方」が大幅に低下することがわかったのです(p106)
・短期既往から長期記憶への移行には、睡眠が欠かせない・・1日~数日の適度な間隔で学習することにより、前回の内容を思い出す過程で記憶を増強させる(p197)
・私たちはリアルタイムで最新の映像だけを見ているのではなく、実際にはそれ以前の映像を含めた「過去15秒間」を平均化した映像を見ていた(p171)
【私の評価】★★★☆☆(74点)
目次
1章 驚きの内臓
2章 病と戦う免疫の新事実
3章 知らなかった目、鼻、口、手の働き
4章 謎だらけの脳
5章 想像できない未来の人体
著者紹介
中尾 篤典(なかお あつのり)・・・岡山大学大学院医歯薬学総合研究科救命救急・災害医学講座教授。1967年京都府生まれ。岡山大学医学部卒業。
毛内 拡(もうない ひろむ)・・・脳神経科学者、お茶の水女子大学基幹研究院自然科学系助教。1984年、北海道函館市生まれ。2008年、東京薬科大学生命科学部卒業、2013年、東京工業大学大学院総合理工学研究科博士課程修了。博士(理学)。日本学術振興会特別研究員、理化学研究所脳科学総合研究センター研究員などを経て2018年より現職。同大にて生体組織機能学研究室を主宰。専門は、神経生理学、生物物理学。
この記事が参考になったと思った方は、クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓
この記事が気に入ったらいいね!
コメントする