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「14歳のためのシェイクスピア」木村龍之介

2024/09/20公開 更新
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「14歳のためのシェイクスピア」木村龍之介


【私の評価】★★★★☆(81点)


要約と感想レビュー

きれいは汚い、汚いはきれい

英語圏に行くならシェイクスピアの知識は、不可欠です。なぜなら近代英語はシェイクスピアによって作られたとさえ、言われているからです。シェイクスピアの基礎を、この本で学びましょう。


460年前のイギリスに生まれたシェイクスピアは、37もの戯曲を生みだし、今も読み継がれています。映画の「ウエスト・サイド・ストーリー」や、ディズニーの「ライオン・キング」も、シェイクスピアの作品から影響を受けているという


シェイクスピアの戯曲の特徴は、魅力的なキャラクターを言葉で生み出していることでしょう。「マクベス」では「きれいは汚い、汚いはきれい」と反対のものを組み合わせることでフレーズを印象的にさせていますです。「ハムレット」の「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」も反対の組み合わせです。


また、「ああ、ヘレナ、女神、森の精、完璧な神々しい人!」とか「死ね、死ね、ラヴィニア」など、畳みかけるようなフレーズもシェイクスピアは多用しています。


五幕構成というのが面白くて、第一幕だけ観ていると想像もつかないようなことが二幕、三幕、四幕で展開され、第五幕でそれらすべてが回収されて、あらゆる出来事が共鳴し合いながらフィナーレに到達する(p75)

To be, not to be, that is the question.

この本の最後の章の、シェイクスピア全作品を翻訳した松岡和子女史との対話が面白いと感じました。彼女はそれまで男性の翻訳者が女性言葉として訳していた「ですわよ」「ごさいますのよ」は気持ち悪いので、全部普通言葉に置き換えたという。


また、松岡女史は「ハムレット」のTo be, not to be, that is the question.を「生きてこうあるか、消えてなくなるか、それが問題だ」と訳しています。この場面は、生きるか死ぬかではなく、父を暗殺した犯人を許すか、死を覚悟して復讐するかで悩んでいるところだからです。


同じように「ロミオとジュリエット」では、ジュリエットがロミオのことを珍しくmy lord(主人)と言ったAnd follow thee my lord throughout the world.(世界じゅうどこへでもついて行く)で「私の旦那様」と訳しています。つまり、ジュリエットはロミオとの結婚に憧れ、早くロミオのことをmy lord(主人)と呼びたいと思っていたわけです。


「ハムレット」のTo be, nto to be, that is the question.・・松岡さんの訳は「生きてこうあるか、消えてなくなるか、それが問題だ」です(P218)

黙読は知識に、音読は体験になる

カルチャースクールでシェイクスピアの授業をするとき、音頭してもらうと、よりシェイクスピアを楽しめるという。 「黙読は知識に、音読は体験になる」のです。


そして、シェイクスピアは、「お気に召すまま」の中で「この世すべてが一つの舞台、人はみな男も女も役者にすぎない。」と言っています。人生は神の演劇。その主役は私たちなのです。名言が多いですね。木村さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・タイタス・アンドロニカス・・ゴートの女王は悲しみます。自分の息子が、タイタスにひどい殺され方をした。彼女は誓います。いつの日か、愛する我が子を殺したローマのタイタス一族を、根絶やしにしてやろうと(p140)


・そこに渦巻く人間の感情で遊んでいる・・戦争は良いものではない、しかし、そんな世界でも人間は人間を謳歌している(p124)


・ランカスター家は赤バラ、ヨーク家は白バラの紋章です・・ローズ・ウォーズ=薔薇戦争について、シェイクスピア「ヘンリー六世」「リチャード三世」で描いています(p186)


・シェイクスピアが生きた16世紀から17世紀のイギリスは、プロテスタントとカトリックという、二つのキリスト教のグループが対立していました(p196)


▼引用は、この本からです
「14歳のためのシェイクスピア」木村龍之介
木村龍之介、大和書房


【私の評価】★★★★☆(81点)


目次

前説 What'sシェイクスピア?
第1幕 ことばの時間
第2幕 ストーリーの時間
第3幕 PLAYの時間
第4幕 演出の時間
第5幕 タイムトラベルの時間
課外授業 翻訳の時間



著者経歴

木村龍之介(きむら りゅうのすけ)・・・1983年生まれ。東京大学文学部でシェイクスピアを研究。現場で俳優・演出を学び、2012年に「カクシンハン」を立ち上げる。多数のシェイクスピア作品の演出を手がける。外部プロデュース作品での演出・潤色にも携わる。演劇教育や一般向けのワークショップも多数開催し、誰でも通える「演劇の学校」を運営する。近年の演出作品に『シン・タイタス』など。


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