【書評】旅好きによる「アジフライの正しい食べ方」浅田 次郎
2025/06/09公開 更新

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【私の評価】★★★★☆(84点)
要約と感想レビュー
旅行好きによるコロナ回想
タイトルの「アジフライの正しい食べ方」とは、「あなたはアジフライに何をつけますか?醤油ですか、ソースですか、タルタルですか?」という問いです。こんなどうでも良いことがタイトルになった理由は、出版社の作戦なのでしょう。
この本はコロナ禍で旅に出ることができない「旅好き」作家による愚痴と過去の思い出の回想です。著者は68歳男性。狭心症の基礎疾患あり。喫煙歴50年。ハゲ。A型。コロナに罹患したときの重症化リスクが高いので、家にこもって原稿を書き続けていたのです。
コロナ禍の三年余、旅を渇望していた。当たり前だ。私の人生は一年のうち二か月か三か月が旅先だったのだから(p248)
ノスタルジジイとは
昔を回想する70歳の著者は「ノスタルジジイ」と自虐しています。「ノスタルジジイ」は、昔は荷物が少なかったなあ~と語るのです。必要な品物は現地調達。なるべく使い捨て。みやげは買わない。旅は身ひとつがいいと考えていた。
ところが有名作家になった今は、会食するためのスーツやタキシード、シャツ、ネクタイ、靴などと荷物が増えていると愚痴るのです。
著者は作家なので、講演、サイン会、シンポジウム、現地取材等の仕事にプライベートの旅行を加えると、一年のうち三分の一をホテルに宿泊してきたという。
特にプライベートでは、長編小説を書き上げたらラスベガスでギャンブルをしながら過ごすのが定例行事でした。コロナ禍の三年余、旅が出きないことが著者には苦しかったのです。
「昔はこうだった」と好んで語る手合いを、「ノスタルジジイ」と呼ぶらしい(p55)
一に花。二に書物。三に食事
作家だけあって、著者の趣味は読書です。著者の読書の流儀は、一に花。二に書物。三に食事です。つまり、金がなくても、まず一輪の花を机に飾り、次に書物を購入し、余裕があれば食べ物を買うのです。
旅行中は文庫本を三冊。旅先で読む本がなくならないよう軽めの本を持っていくという。
ただ、読書のデメリットは運動不足になることです。締切のストレスと運動不足で、著者の体重は増え続けたのです。働けば働くほど動かなくなるのが、作家なのです。
読みたい本はいくらでもある。テレビの前に座りこんで、重複する情報を耳目を傾けても意味はない(p14)
温泉は7回入浴
なお、温泉での著者のノルマは、一泊二日で最低7回サウナ付きの入浴であるという。ただし、狭心症で心臓にステントを入れていることと、コロナ時に肺炎にかかってしまったことを考えると、70代となった著者の健康が心配です。
良い作品をこれからも書いていただくためにも、無理せず健康に過ごしていただきたいものです。浅田さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・ホテルのセーフティボックスにエアチケットを忘れるという大事件もあった・・この出来事以来、私は必ずエアチケットのコピーを財布に入れておくことにした(p202)
・同居の祖父が結核を病んでいた。のみならず一族には同じ病で亡くなった人が多かった。よってわが家では、みんなして当たり前にマスクをかけていたのである(p26)
・アメリカ人はなぜ一年中短パンをはくのか・・・いったんこういうファッション・ライフに入ってしまうと、なかなか元には戻れないのである(p101)
▼引用は、この本からです
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浅田 次郎 (著)、小学館
【私の評価】★★★★☆(84点)
目次
旅欲
読書のすすめ
オリーブのめざめ
マスクの福音
旅と薬と
ロス空港の大捕物
ごちそうさま
昭和十一年の忘年会
昭和三十年の温泉旅行
命のパン
サナトリウムの記憶
続・スパ・ミステリー
吾輩はゲコである
昭和四十年のスキー旅行
瘋癲とタンピン
短パン考
コロナごえ
勘ちがい
事件の顛末
サウナの考察
続・サウナの考察
靴を履いた猿
続・靴を履いた猿
アジフライの正しい食べ方
クスリのリスク
人生七十古希稀なり
落ちつかない部屋
続・落ちつかない部屋
ナポリを見て死ね
灼熱のドッペンゲンガー
ステロイド・ハイ
振り返る人
鞄の中身
煙花三月 揚州に下る
ハッピー・ジェネレーション
「楢山節考(ならやまぶしこう)」考
破倫の国
ホットドッグ&ハンバーガー
東京の緑
旅のゆくえ
著者経歴
浅田 次郎(あさだ じろう)・・・1951年、東京都出身。1995年『地下鉄に乗って』で吉川英治文学新人賞、1997年『鉄道員』で直木賞、2000年『壬生義士伝』で柴田錬三郎賞、2006年『お腹召しませ』で中央公論文芸賞と司馬遼太郎賞、2008年『中原の虹』で吉川英治文学賞を受賞
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