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「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」フィリップ・K・ディック

2023/12/08公開 更新
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「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」フィリップ・K・ディック


【私の評価】★★★☆☆(79点)


要約と感想レビュー

「ブレード・ランナー」とは賞金稼ぎ

映画「ブレード・ランナー」の原作であり、鉄塔文庫読書会の課題本ということで読了しました。「ブレード・ランナー」とはアンドロイド暗殺専門の賞金稼ぎのことです。核戦争後の地球では、生物の多くが死滅する一方で、オリジナルと見分けのつかない機械化生物が製造され、共存しています。人間そっくりのアンドロイドが生産され、火星に移住した人にはアンドロイドが支給されるという設定となっています。


そうした火星に配分されたアンドロイドの一部が主人である人間を殺して、地球に逃亡することがあり、そうしたアンドロイドを抹殺するのが「ブレード・ランナー」の仕事なのです。技術の発達によりアンドロイドと人間を見分けることが難しくなり、見分けるためには、骨髄の細胞分析をするか、「感情移入度」測定検査しかありません。「感情移入度」検査は簡単ですが、単に質問してその反応を測定することで、共感性があるかないかを測定するのです。こうした試験だと、共感性のない人間はアンドロイドということになってしまいます。


アンドロイドには偽の記憶を植えつけることができるという設定なので、自分は本当に人間なのか、主人公さえ本当に人間なのか、読みながらわけがわからなくなりそうでした。
 

アンドロイドが、感情移入度測定検査にかぎって、なぜ無残にも馬脚をあらわすのか(p41)

感情を持ったアンドロイド

この本が面白いのは、感情を持ったアンドロイドは人間と見分けがつなかないということでしょう。主人公はアンドロイドを追い詰めながら、人間とほとんど変わらないアンドロイドに感情移入します。そして女性アンドロイドと性交までしてしまう。


そして本物の人間の感情といえば、これも不安定なのです。主人公はペットとして電気羊を買うために、妻を自宅に置いて、逃亡したアンドロイドを命をかけて殺して賞金を稼いでいます。電気羊を買いたいという主人公の欲望と、そのために命の危険を犯しているというバランスの悪さをアンドロイドに笑われるシーンが印象的でした。
 

人間は、お笑いテレビ番組を見ながら、笑いで気をまぎらし、新興宗教マーサー教を信仰して不安をやわらげようとしているように見えます。実はこれらは人間が、テレビ番組や宗教に精神面を支配されているのではないかと、著者は知恵遅れの地球人に問いかけさせてもいるのです。


あなたはわたしよりもその山羊を愛しているのね。たぶん、奥さんより以上に。一が山羊。二が奥さん(p265)

現実とは何か

「トータル・リコール」と似たような世界観の本だな~と思ったら同じ著者でした。「トータル・リコール」のほうは、どちらが夢で、どちらが現実か訳がわからなくなりましたが、「ブレード・ランナー」はわかりやすい。


本物と見分けのつかないアンドロイドの話を読んでいるうちに、このメルマガも人工知能が書くようになってしまうのではないかと妄想してしまいました。そもそも人間を含めた地球上の生物はDNAで設計された有機アンドロイドなのかもしれません。


こうした本が1968年に書かれていることに驚きました。ディックさん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・生命の不在を感じとりながら、それに対してなにも反応しないことが・・むかしは、そういう鈍感さが精神病のひとつの症候と考えられていたのよ。"適切な情動の欠如"(p10)


・偽の記憶かもしれませんわ。アンドロイドは偽の記憶を植えられることもあるんでしょう?(p132)


・脱走までして地球へやってきても、ここじゃわれわれは動物なみにさえ扱われない。(p159)


▼引用は、この本からです
「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」フィリップ・K・ディック
フィリップ・K・ディック 、早川書房


【私の評価】★★★☆☆(79点)



著者経歴

フィリップ・キンドレド・ディック(Philip Kindred Dick)・・・1928年-1982年。1963年、『高い城の男』でヒューゴー賞 長編小説部門を受賞。1975年、『流れよ我が涙、と警官は言った』でジョン・W・キャンベル記念賞を受賞。1978年、『暗闇のスキャナー』で英国SF協会賞を受賞。『ブレードランナー』、『トータル・リコール』、『スキャナー・ダークリー』、『マイノリティ・リポート』が映画化された。


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