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「こころ」夏目漱石

2024/04/11公開 更新
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「こころ」夏目漱石


【私の評価】★★★☆☆(75点)


要約と感想レビュー

後半は先生の遺書

松山旅行を計画している時に、夏目漱石ははずせないとの思いで読み始めた一冊です。ストーリーとしては、前半は先生と呼ばれる男性とわたしが出会い、私は妻を持つ先生に惹かれつつ、先生はあまり心を開いてくれないという展開で進みます。そして、突然先生は自殺し、遺書がわたしに届くのです。ちなみに、わたしは男子学生です。


後半は先生の遺書となります。遺書を読んでわるのは、先生の友人Kが思いをよせるお嬢さんと先生が結婚し、その後、友人Kが自殺してしまったことです。自殺の原因はわからないのですが、先生は妻となったお嬢さんを見ると友人Kを思い出いし、精神的に不安定となってしまうのです。


なぜなら、先生は友人Kがお嬢さんを好きであることを知っていたのに、お嬢さんに結婚を申し込んだからです。


ただ、遺書を読むと、先生は被害妄想的な傾向があることがわかります。遺書のなかで先生は、「叔父に遺産を盗まれた私は、これから人には欺されまいと決心した」と言っています。また、うまくいった人は嫉妬されることを指摘し、将来嫉妬され、足を引っ張られたり、侮辱されないよう今、尊敬されるのを避けたいとまで言っているのです。


かつてはその人の膝の前に跪いたという記憶が、今度はその人の頭の上に足を載せさせようとするのです。私は未来の侮辱を受けないために、今の尊敬を斥けたい(p42)

友人Kの好きな人と結婚

そんな被害妄想的な先生は、友人Kからお嬢さんに恋をしていると告白されたとき、驚きながらも、実はお嬢さんもKを意識しているのではないかと心配になるのです。先生はこれを「嫉妬」ではないかと分析しており、嫉妬は愛の半面ではないかとも語っています。先生がお嬢さんを女性として意識しているのは明らかなのでしょう。


先生は友人Kがお嬢さんの前に現れたことで、お城さんを強く意識し、お嬢さまに結婚を申し込んでしまいます。そして婚約。婚約したことを、先生は策略と言っているのです。それは策略じゃないでしょうと私は思いますが、頭が良すぎるからなのか、先生は策略と考えて、自分を追い込んでしまうのです。


「おれは策略で勝っても人間としては負けたのだ」という感じが私の胸に渦巻いて起こりました(p270)

自己否定の幻聴

Kが恋しているお嬢様を、横取りしたという思いの中で、先生は自殺してしまうのです。遺書では、「恐ろしい力」が先生に「お前は何をする資格もない男だ」と抑え付けるように語りかけてくるというのですから、自己否定によるある種の妄想や幻聴のようなものなのでしょう。


夏目漱石は、イギリス留学時にうつ病またはノイローゼになったと言われており、心の中にトラウマを持っていた可能性があります。


私には先生とは夏目漱石自身のこころなのではないかと感じました。成功しているように見えるけれども、こころの中には自己否定の気持ちや、嫉妬や人間への猜疑心があるのです。夏目漱石の死の2年前の作品ということで、自分の気持ちをぶっちゃけたいという思いだったのでしょうか。夏目漱石さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・あなたは死という事実をまだ真面目に考えた事がありませんね(p17)


・君は今あの男と女を見て、冷評(ひやか)しましたね。あの冷評のうちには君が恋を求めながら相手を得られないという不快の声が交っていましょう(p37)


・私は金に対して人類を疑ったけれども、愛に対しては、まだ人類を疑わなかったのです(p180)


・「私のようなものが世の中へ出て、口を利いては済まない」と答えるぎりで、取り合わなかった。私にはその答えが謙虚過ぎてかえって世間を冷評するようにも聞こえた(p33)


▼引用は、この本からです
「こころ」夏目漱石
夏目漱石、集英社


【私の評価】★★★☆☆(75点)


目次

上 先生と私
中 両親と私
下 先生と遺書


著者経歴

夏目漱石(なつめ そうせき)・・・1867-1916。教師・小説家・評論家・英文学者・俳人。武蔵国江戸牛込馬場下横町出身。 本名は夏目 金之助。俳号は愚陀仏。明治末期から大正初期にかけて活躍し、今日に通用する言文一致の現代書き言葉を作った。


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