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小氷期と印象派の関係は?「天気でよみとく名画」長谷部愛

2024/12/10公開 更新
本のソムリエ
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「天気でよみとく名画」長谷部愛

【私の評価】★★★☆☆(74点)


要約と感想レビュー


14世紀から19世紀は小氷期

読む本がなくなって、仙台駅の書店で購入。実は、本のソムリエは絵画が好きなんです。小学生の頃は、百科事典に挿入されている絵画だけ探して眺めていたりしました。


著者が言いたいのは、自然の気候変動によって絵画も変わってきたということです。例えば、14世紀から19世紀後半までは、小氷期と呼ばれるほど寒冷化しており、絵画も暗いものが多かったのです。


そして、19世紀後半から明るい光を強調した印象派の絵画が描かれるようになりました。印象派の絵が明るかったのは、小氷期が終わり、晴天の日が増えたからではないのかという仮説が成り立つわけです。


欧米の美術館41館が所蔵する1400年から1967年に描かれた絵画1万2千点の天候を定量的に調べたところ、小氷期の絵画には曇天で、かつ暗く描かれた傾向があることがわかりました(p19)

ムンクの「叫び」の赤の正体は夕焼け

それ以外にも、印象派のクロード・モネが描いたロンドンの霧は、産業革命によって昼もスモッグに覆われていたから。ムンクの「叫び」の赤の正体は夕焼け。当時大噴火が起きて、空気中に火山性粒子が増えたために太陽光が拡散され、夕日がより赤く見えた可能性があるなどの小ネタが面白いのです。


雪の絵画を見れば、そもそも地球上で雪が積もる地域は、ヨーロッパの一部やアメリカ五大湖周辺、日本くらいで実は珍しいというトリビアもわかるのです。絵画は基本的に目で見たものを、画家が解釈して描いていますので、天候による絵画への影響度は大きいのです。


モネの「連作」は、葛飾北斎が<富岳三十六計>で、一つのモチーフ、つまり富士山を異なる時間と季節で描いていることからヒントを得たのではないかと言われています(p87)

天気で絵画を見る

天気で絵画を見るという切り口は、よいアイデアだと思いました。ただ、後半はネタが足りなくなったのか、気象ネタだけで1章追加しています。
 

気象について言えば、14世紀から19世紀には小氷期があり、縄文時代には温暖化で海水面が120メートルも上がっています。そんなCO2と関係ない自然の気候変動を絵画を通して考えるきっかけになるとすれば、面白いと思いました。


自然の気候変動の中で行きてきた、先祖の生活を想像してしまいました。長谷部さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・北斎ブルー、広重ブルー・・川や海、空に好んで使われたベロ藍(べろあい)という鮮やかな顔料を使って摺られた青・・ゴッホやモネをはじめ、ヨーロッパの画家にも好まれました(p152)


・浮世絵・・最初の200枚は初摺(しょずり)と言われ絵師の立ち合いの下で行われますが、その後の後摺では、摺師に一任されるため、色味が大きく変わることがあります(p161)


・ブロッケン現象・・日本では、阿弥陀如来などの円光に見えることから、御来迎(ごらいごう)とされてきました(p210)


▼引用は、この本からです
「天気でよみとく名画」長谷部愛
長谷部愛、中央公論新社


【私の評価】★★★☆☆(74点)


目次


第1章 低地・高緯度のオランダが育んだ「光の絵画」
第2章 島国イギリスの気象が生んだ「風景画」
第3章 温暖なフランスだからこそ印象派が花開く
第4章 豊かな日本の雲と雨
補 章 マンガ、アニメで描かれる気象現象



著者紹介


長谷部 愛(はせべ あい)・・・気象予報士・東京造形大学特任教授。1981年神奈川県生まれ。信州大学教育学部卒業。テレビ・ラジオ局員として、番組制作・キャスター・リポーターを経験したのち、2012年に気象予報士資格を取得。翌年からTBSラジオ、Yahoo!天気災害動画などに出演。2018年からは東京造形大学特任教授として教鞭を執る。オランダの放送局KRO‐NCRVやフジテレビなどに出演の他、講演など幅広く活動


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