アッラーとは何か「イスラムから見た西洋哲学」中田 考
2024/12/11公開 更新本のソムリエ [PR]
Tweet
【私の評価】★★★☆☆(70点)
要約と感想レビュー
イスラームとは
イスラム教がよくわからないので、手にした一冊です。
イスラームでは「哲学者」といえばアリストテレスであり、アリストテレスの言う「世界のすべての原因である永遠不滅の唯一の不動の動者」がアッラーであると考えたという。
したがって、イスラームではアッラーが命じたことが善であって、アッラーは善しか命じないと信じるのです。アッラーが「殺してはいけない」と命令すれば、それを守る義務があり、全員が守れば安全が確保されるのです。
ただ、イスラーム法では、神に仕えるために「生きなさい」という命令があるので、仮に盗まなければ生きていけない状況なら、盗むのが義務になるというのです。著者はイスラームのこの特徴を、有益なものが善、有害なものが悪とする功利主義であると表現しています。
最終的には多数派のスンナ派神学では、神が命じたことが善であって、神はすべてのことを命じることができるが、神は自由な意思によって善しか命じない、といった話に落ち着きます(p203)
西洋キリスト教世界とは
西洋のキリスト教世界では、自分たちだけが天国に行けると考え、他の人間は地獄行きの野蛮な異教徒だと考えていました。そして、その考え方が帝国主義時代には植民地の住民を差別し隷従させるという思想に転化したと著者は解説しています。
また、現代の西洋における「政教分離」は、過去に教会と国家という二つの組織の間での権力闘争の結果、生まれたものであるとしています。そして現代欧米人の問題点は、自由や人権を無理やり他人にも押しつけようとすることだとも批判しているのです。
そうは言いながら、イスラームではムハンマドを風刺したりすると、暗殺されるので、どっちもどっちのように私には感じられます。
中世のカトリックは・・自分たちだけが天国に行ける、他の人間はみんな地獄行きの野蛮な異教徒だと考え・・征服地の住民を差別し隷従させる植民地支配のイデオロギーに転化していきました(p53)
イスラムの矛盾
イスラームの最初の教えは「ラー・イラーフ」、つまり崇拝すべきものは存在しないということです。だから「偶像」は実体を有さない虚構なので、イスラームでは「偶像」禁止です。「偶像」の具体例としては、国家、貨幣、税金、憲法などだという。
そのように偶像を禁止しながら、「ただしアッラーは別である」というのがイスラームです。禁止しながら、アッラーは別というロジックについては、私は理解ができませんでした。それが宗教たるゆえんなのでしょうか。
イスラームにおいては、背教の焦点は、神への信仰の有無ではなく予言者ムハンマドが神から遣わされた予言者であることを肯定すると信じるかどうかになります(p72)
世界の考え方は多様
私には、スピノザが言った「神は存在するが、神と自然は一つだ」という話が一番、腹に落ちました。キリスト教、ユダヤ教、イスラム教、資本主義、共産主義など世界の考え方は多様です。イスラム教でもシーア派、スンナ派とわかれているわけで、人間の権力闘争というか主義主張は際限がないのかもしれません。
自分としてはイスラム教がよいのか悪いのか、まったく評価できませんでした。イスラムについてはもう少し勉強してみます。中田さん、良い本をありがとうございました。
無料メルマガ「1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』」(独自配信) 3万人が読んでいる定番書評メルマガ(独自配信)です。「空メール購読」ボタンから空メールを送信してください。「空メール」がうまくいかない人は、「こちら」から登録してください。 |
この本で私が共感した名言
・ファーラービーは「有徳都市」という書籍で、哲学者が劣った人間たちを支配するという世界観を承認し、一番上に善で完全な神がいて、そこからどんどん劣化して我々の世界が一番混沌としていてレベルが低いものになるという考え方を示しました(p23)
・指導者を選ぶという段になると、シーア派は神がその予言者の口を通じて指導者を任命すると考えるのに対して、スンナ派は人々が自分たちで選ぶと考えます(p43)
・イスラーム経済においてもっとも大切なのはアドル(正義)です。アドルとは自分に関係ないものは一切受け取らない・・・借金の利子を取ることは、貸した元金以上のものを取ることなのでアドルに反することになる(p139)
・イスラームは勝者、征服者の宗教ですので・・強いものは強く、弱いものは弱いなりに自分の力に応じて義務を負う(p155)
【私の評価】★★★☆☆(70点)
目次
第1章 ソクラテス、プラトン、アリストテレスとイスラーム哲学
第2章 イスラームと近世哲学
第3章 イスラームと近代哲学
著者紹介
中田 考(なかた こう)・・・1960年生まれ。イブン・ハルドゥーン大学客員教授。1983年イスラーム入信。ムスリム名ハサン。東京大学文学部宗教学宗教史学科卒業。カイロ大学博士。山口大学教育学部助教授、同志社大学神学部教授など。
イスラム関連書籍
「イスラムから見た西洋哲学」中田 考
「池上彰の講義の時間 高校生からわかるイスラム世界」池上 彰
「イスラム教再考 18億人が信仰する世界宗教の実相」飯山 陽
「イスラムから見た「世界史」」タミム・アンサーリー
この記事が参考になったと思った方は、クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓
この記事が気に入ったらいいね!
コメントする