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「ルトワックの"クーデター入門"」エドワード・ルトワック

2024/12/13公開 更新
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「ルトワックの


【私の評価】★★★☆☆(77点)


要約と感想レビュー


大統領による非常戒厳はクーデターか

韓国の尹錫悦(ゆん・そんにょる)大統領による12月3日夜の非常戒厳は、実質的にクーデターと感じたので、ちょうど手元にあった本書を読んでみました。


そもそもクーデターが起きる国では、腐敗が蔓延していることが多いという。なぜなら、クーデターを起こす側からすれば、貧富の差をクーデターの理由にしやすいし、仮にクーデターが成功すれば、自分が権力者として億万長者になれるからです。


しかし、今回の韓国の大統領による非常戒厳は、メリットが小さく、リスクが大きすぎるように感じます。つまり、すでに自分は大統領という権力者であるので、成功したときの金銭的メリットは限りなく小さく、失敗して失脚するというリスクだけが大きいのです。


そういう意味では、韓国の尹(ゆん)大統領は、「北朝鮮と連携する野党議員が政府を無力化させるために、予算案を通さず、政府高官の弾劾案を提出したりしている」と批判していますが、これは本心なのかもしれません。


多くのクーデター発生のきっかけが「腐敗」にあった・・腐敗が存在している場合、権力を奪った側は莫大な富を得ることができる・・すぐに億万長者になれる(p2)

クーデターのコツは反対勢力の無力化

この本ではクーデター成功の戦略は、スピードと反対勢力の完全な無力化であるとしています。そのために、ネット、SNS、マスコミなどのメディアを短時間に遮断・コントロールし、情報を検閲・遮断することで、抵抗勢力が現れないようにする必要があります。


つまり、交通網や通信網を掌握し、麻痺させて、「政治」勢力からの脅威を中立化させておくのです。対立する指導者も、あらかじめ逮捕しておくことが肝心だという。


ところが今回の非常戒厳では、特殊部隊が派遣されたのは、国会議事堂、中央選挙管理委員会、ニュース工場社屋の3カ所だけだったのです。テレビ局やネットを掌握・麻痺させず、非常戒厳への抵抗運動を伝えるニュースが報道されるようでは、失敗するのは当然だったということなのでしょう。


クーデターの戦略は・・スピードの最大化であり・・反対勢力の完全な無力化である(p95)

クーデターとしては準備不足

それにしても、尹(ゆん)大統領による非常戒厳は、クーデターとしては準備不足だったように感じます。それとも尹大統領は、これはクーデターではなく正当な非常戒厳であり、テレビやネットも賛成してくれると思っていたのでしょうか。


思ったより韓国には北朝鮮寄りの人が多いことと、野党も国会でやりたい放題やっていましたが、違法なことはやっていなかったという面があるのかもしれません。今回の失敗により、韓国が北朝鮮に支配されないことを祈っています。ルトワックさん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・「市民の反乱」によって転覆されたという事例は少ない。むしろ多くの場合では、軍事独裁者というのは同業者によって置き換えられているのだ(p23)


・過去15年間において、約120件の軍事クーデターが発生しているのだが、その中でゲリラ活動から権力の座に就いた例は、たった五件しかない(p25)


・クーデターの支持に必要とされるのは「何もしないこと」なのであり、たいていの場合、エリートたちは何もしないのである(p60)


・一つの部隊を「取り込む」ためには、その部隊内の実権を持った多くのリーダーたちの積極的な協力が必要になる(p125)


▼引用は、この本からです
「ルトワックの
エドワード・ルトワック、芙蓉書房出版


【私の評価】★★★☆☆(77点)


目次


ウォルター・ラカーによる序文(1978年)
第1章 クーデターとは何か?
第2章 クーデターはいつ可能か
第3章 クーデターの戦略
第4章 クーデターの計画
第5章 クーデターの実行



著者紹介


エドワード・ルトワック(Edward Luttwak)・・・ワシントンにある大手シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の上級アドバイザー。戦略家であり、歴史家、経済学者、国防アドバイザー。国防省の官僚や軍のアドバイザー、そしてホワイトハウスの国家安全保障会議のメンバーを務めた経歴もあり。世界各国の政府や高級士官学校でレクチャーやブリーフィングを行う。1942年、ルーマニアのトランシルヴァニア地方のアラド生まれ。イタリアやイギリス(英軍)で教育を受け、ロンドン大学(LSE)で経済学で学位を取った後、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学で1975年に博士号を取得。同年国防省長官府に任用される。専門は軍事史、軍事戦略研究、安全保障論。


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