【書評】暗殺は一人当たり300万円から「外国人ヒットマン」一橋 文哉
2025/03/03公開 更新

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【私の評価】★★★☆☆(76点)
要約と感想レビュー
未解決の殺人事件
外国人ヒットマンが実行犯ではないか?と考えられる過去の事件についてまとめた一冊です。日本では未解決の殺人事件が数多くあります。
1993年の阪和銀行副頭取射殺事件、1994年の住友銀行名古屋支店長射殺事件、1995年の八王子スーパー強盗殺人事件、2000年の世田谷一家惨殺事件、2006年の元ライブドア取締役死亡事件、2013年の「餃子の王将」社長射殺事件など外国人ヒットマンが捜査線上に浮かび上がったものの、立件には至っていません。
「餃子の王将」社長射殺事件では、現場からバイクに乗って逃走した犯人は,映像から細身の女性ではないかとの情報があるという。そして、事件当日に関西国際空港から入国し,事件当日のうちに同空港から出国した不審な中国人女性が入出国記録に記録されているのです。
著者はこうした事件の取材を通じて,故人に恨みを抱いた人間が外国人ヒットマン組織に暗殺を依頼したのではないか、と推測しているのです。
2013年12月19日・・「王将フードサービス」・・大東隆行社長(当時72歳)が,本社前で何者かによって射殺された事件(p113)
指紋を残す犯人
事件の中には、指紋や持ち物を残すなど日本の捜査能力不足を見切っている状況も観察されます。例えば、世田谷一家惨殺事件では、犯人の両手の指紋や掌紋が残されていました。八王子市スーパー殺人事件では、三人を射殺した犯人は、女子高生を縛った粘着テープの裏に指紋の一部と汗を残していました。
日本では証拠がなければ逮捕されないし、入国時に指紋を採取されないし、国外逃亡すれば逮捕される怖れはほとんどないに等しいのです。仮に捕まっても、1人殺しただけでは死刑にもなりません。
犯人は手袋もせずに日本人を殺して、簡単に出国してしまうのです。
日本では同じ犯罪で捕まっても,中国より日本の方が量刑が軽いなどという風評が広がり,犯罪者や貧困者の日本への流入が止まらないのだ(p126)
暗殺は一人当たり300万円から
著者の取材では、中国マフィアにヒットマンを一人派遣してもらう場合、成功報酬は暗殺一人当たり300万円から400万円が相場だという。
こうした中国マフィアは日本人との偽装結婚の斡旋仲介で日本に進出しました。さらには、日本への留学生名目で中国、韓国、オランダやロシア、ブラジル、アルゼンチン、フィリピン、タイなどの売春婦を集めて風俗業者に売り飛ばしたりもしていたという。
さらに中国マフィアは、麻薬・拳銃の密売から違法カジノ,売春パブ,ヘルスやホストクラブ,ゲイバーまで、あらゆる金儲けに手を出しているというのです。
300万円から400万円で中国マフィアに簡単に頼めるなら、頼んでしまう人もいるのでしょう。
香港の(暗黒)組織の拠点はどこも、今や台湾や韓国、日本、東南アジア、そして米国へ分散してきている。もはや全世界を相手にするしか、生き残る手だてはないからだ(香港マフィアの元ボス)(p29)
恥ずかしい警備の実態
そもそも日本では、元首相が素人に暗殺されたり、現役首相が素人に爆弾を投げつけられています。暗殺に対する要人警護能力はアメリカやロシアに比べれば、存在しないに等しいように感じます。
日本の警察は、1995年に國松警察庁長官が銃撃されますが、犯人は捕まっていません。オウム真理教幹部の村井秀夫も刺殺されたし、豊田商事会長も刺殺されるなど日本の警察も恥ずかしい警備の実態なのです。
トランプ大統領の暗殺未遂事件がありましたが、大統領の近くにはスナイパーが配置されていました。また、アメリカでは入国する際に、両手の指紋と顔写真を撮影されます。日本もアメリカと同じレベルで、要人警護、入出国管理の厳密化を行う必要があるのでしょう。一橋さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・(元ライブドア)野口副社長は自ら非常ブザーを押して助けを求めており、自殺者の行動としては不可解な点が多数見られる(p61)
・世田谷の一家皆殺しの事件は、俺たちの組織のヒットマンがやった犯罪と聞いている(在日韓国人の仲介代理人)(p84)
・フィリピンは自由で明るくていい国なんだが,政財界はもちろん警察も軍隊も裏でどこかに繋がっているんで,今一つ信用が置けない(香港闇社会の大物)(p159)
・オウム真理教幹部の村井秀夫の暗殺にかかわった弘道会系下部団体の暗殺組織「十仁会」(p199)
▼引用は、この本からです
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【私の評価】★★★☆☆(76点)
目次
序章 香港 荒ぶる「黒」の裏側で
第1章 台湾 ライブドア「懐刀」の切腹
第2章 韓国 世田谷一家惨殺事件の謎
第3章 中国 「王将」とスーパー襲う悪い奴
第4章 フィリピン 多国籍暗殺団の養成機関
第5章 東南アジア カンボジアに蠢く北の影
著者紹介
一橋 文哉(いちはし ふみや)・・・1954年東京都生まれ。早稲田大学卒業後、全国紙・雑誌記者を経てフリージャーナリスト。1995年「ドキュメント『かい人21面相』の正体」でデビュー。グリコ・森永事件、三億円強奪事件、宮崎勤事件、オウム真理教事件など殺人・未解決事件や、闇社会がからんだ経済犯罪をテーマにしたノンフィクション作品を発表している。
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