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「ずっとそこにいるつもり?」古矢永 塔子

2025/03/04公開 更新
本のソムリエ
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「ずっとそこにいるつもり?」古矢永 塔子


【私の評価】★★★★★(90点)


要約と感想レビュー


楽しめる短編小説

あまり小説を読まない本のソムリエですが, 本書の短編5つはすべて楽しめました!


例えば,カメラマンを目指す男と映画に関連する仕事をしたい女の夫婦が,夢と現実の中で葛藤するドラマ。男はカメラマンとしては駆け出しで,稼ぎは就職した女のほうがいいのです。仕事がない男は主夫のように料理をしながら,二人の関係はギクシャクしていくのです。


そこに女の職場の近くの実家に住む男の母親(姑)が乱入してきて,女と姑は緊張した関係から,本音で話し合える関係になっていきます。


弥生と友樹はこの部屋で一緒に暮らすようになっていた(p23)

男女の恋愛事情

別の短編では,料理の道に進みたいと思いながら一般企業への就職との間で悩んでいる男と,就職を勧める彼女のドラマでした。そこに昔,男と一緒に暮らしていた女性が男のところに戻ってくるのです。この男,昔の女性をどう処理するんだろうとハラハラしました。


また別の短編では,売れないけど絵がうまいマンガ家と絵は下手くそだけどストーリーが秀逸な原作者のドラマでした。二人は一時離ればなれになったのに,再びタッグを組んで,新しい作品を作り始めるのです。


建生がこども食堂とあのお店にこだわるのは,前に進むのが怖いからじゃない?居心地がいい場所から,抜け出したくないだけだよ(p78)

最後の落ちを推理しよう

男女の恋愛をベースとしながら,最後に推理小説並みの落ちを用意しているエンタメ小説でした。すべての短編で本のソムリエの予想を超える落ちが用意されていて,ずっこけました。


恋愛小説としてだけでも緻密な描写があり,だれでも楽しめる内容ではないでしょうか。古矢永さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・「有紀ちゃんは欲望に忠実で清々しいね」「夢を叶えるために邁進している,って言ってくださーい」(p13)


・何とか絞り出したものを編集者に差し出し,面白くない,あなたの描きたいものがわからない,と言われる。峯田はもう8年近くも,このぬかるみの中でもがいている(p106)


・血まみれの喪服姿の女がよほど恐ろしいのか,タクシー運転手はサエコを薄暗い住宅地で降ろすと,逃げるように去って行った(p140)


▼引用は、この本からです
「ずっとそこにいるつもり?」古矢永 塔子
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古矢永 塔子、集英社


【私の評価】★★★★★(90点)


目次

「あなたのママじゃない」
「BE MY BABY」
「デイドリームビリーバー」
「ビターマーブルチョコレート」
「まだあの場所にいる」


著者経歴

古矢永塔子(こやなが とうこ)・・・1982年青森県生まれ。弘前大学人文学部卒業。高知市在住。小説投稿サイト「エブリスタ」にて執筆活動を行い、「恋に生死は問いません。」を改題した『あの日から、君とクラゲの骨を探してる。』でデビュー。2019年「七度笑えば、恋の味」で第1回日本おいしい小説大賞を受賞。他の著書に『今夜、ぬか漬けスナックで』がある。


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