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「三千円の使いかた」原田 ひ香

2023/05/09公開 更新
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「三千円の使いかた」原田 ひ香


【私の評価】★★★★★(90点)


要約と感想レビュー

本音はハワイに行きたい

テレビドラマでちょっとだけ見ていたので手にした一冊です。少子高齢化といわれる今の日本人の節約生活を描写しているので、そうだよね!と素直に読めました。主人公美帆の姉の真帆は、月給23万円の消防士と結婚して、子供をつくって、働いた証券会社を辞めてしまいました。経済的には共働きが最強戦略といわれる中で、専業主婦を選ぶのは経済的にまずいんじゃないの、というのが主人公美帆の印象だったのです。


ところが、姉の真帆の話を聞いてみると、食費は月2万だし、スマホ代は月2000円。一方で主人公の美帆は、一人なのに食費は月3,4万、スマホ代だけで月1万円だったのです。もう少しお金の使い方を工夫してお金を貯めないとまずい!と考える主人公美帆なのでした。実は、姉の真帆も証券会社を辞めると経済的に苦しくなるのはわかっていたのです。ただ、証券会社のノルマで手数料が高く値上がりしそうにないファンドを押し売りするのに嫌気がさして辞めた、というのが本音だったのです。心の中では、ハワイにも行きたいし、お金もほしいというのが本音なのでした。


・自分だったら、年収三百万円ちょっとの人と結婚するのはともかく、すぐに子供を作ってやめるなんて考えられない(p31)


働くとは感謝されること

主人公の祖母の琴子は73歳。夫に先立たれ、年金生活をしています。夫婦二人の時は年金は月13万円くらいでしたが、一人になって年金は月8万ほどになってしまいました。月8万円ではランチを外で楽しむのも、ちょっとした買い物も金額を考えて買わなくてはなりません。そうしたときに、娘(主人公の母)から「おせち料理教室」を開いてほしいとの話があり、臨時収入5000円を得ることができたのです。感謝され、お金をもらい、なんともいえない喜びが心の中に広がりました。働くことというのは、お金を稼ぐだけでなく、自分の存在する意味を感じられることなのです。


なお、老齢年金は繰下げ受給で年金が増えるので、夫が先立つ可能性が高いのであれば、妻の老齢年金の繰下げ受給を優先的に考えておきたいところです。


・自分は感謝され、そして、お金ももらいたいのではないか。つまり、働きたいんじゃないかと思いあたり、我ながらぎょっとする(p89)


気ままで自由な生活

その一方で、主人公の祖母がホームセンターで知り合った40歳の定職を持たない男性が出てきます。彼は季節労働者として働いて、お金ができると海外に旅行に行くような自由人です。お金はないけれど、気ままで自由な生活を満喫しており、女友達はいるけれど、結婚するつもりはないのです。40歳で定職もなくぶらぶらしていてどうするのか。落ちは本書を読んでみてください。


著者は主人公の祖母に「人は三千円の使い方で人生が決まるよ」と言わせていますが、それは事実でしょう。お金の使い方に、その人の人生観が出るからです。原田さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・月八万貯められたら、それ以外のお金はなんでも好きなように使っていいのよ!ボーナスも二万以外は使い放題!(p56)


・あの人のせいで、私は我慢している、というような状態はやめるべきです。それはお互いを不幸に追い込むことになりますよ(p265)


・これからもずっと私はこの人のご飯を作り続けるのだろうか(p224)


・黒豆の皮にしわを寄せずに煮ることは、なぜだか、母と祖母の至上命題で、二人は毎年それに命を懸けている(p29)


▼引用は、この本からです
「三千円の使いかた」原田 ひ香
原田 ひ香、中央公論新社


【私の評価】★★★★★(90点)


目次

第1話 三千円の使いかた
第2話 七十歳のハローワーク
第3話 目指せ、貯金一千万
第4話 費用対効果
第5話 熟年離婚の経済学
第6話 節約家の人々



著者経歴

原田ひ香(はらだ ひか)・・・一九七〇年神奈川県生まれ。二〇〇六年「リトルプリンセス二号」で第34回NHK創作ラジオドラマ大賞受賞。「はじまらないティータイム」で第31回すばる文学賞受賞。 他の著書に「三人屋」シリーズ(実業之日本社)、「ランチ酒」シリーズ(祥伝社)など多数。


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