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「ラストエンペラー習近平」エドワード・ルトワック

2021/09/20公開 更新
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「ラストエンペラー習近平」エドワード・ルトワック


【私の評価】★★★★★(93点)


要約と感想レビュー

対中包囲網であるクアッド

最近ヨーロッパの軍艦や空母がアジアに来ている理由がわからなくて、その答えが書いてあると知って手にした一冊です。著者のルトワック氏の答えは、対中包囲網であるクアッド(日米豪印戦略対話)にヨーロッパも参加しようとしているということです。特に中国の香港・ウイグル・モンゴルでの人権侵害および国際法を無視する海警法、香港国家安全維持法に対し、ヨーロッパ諸国は批判を強めているのです。


さらに中国と対立するベトナム、インドに武器を売っているのはロシアであり、隠れクアッドとしてロシアの存在が浮かび上がるというのです。ロシアに対してどう対応するのか、ロシアがどう動くかで世界は決まる可能性があるのです。


この本はロシア侵攻前に書かれた本ですが、戦略(安全保障)は経済に優先するので、たとえ相手が最大の貿易相手国でも、戦略上の対立が深刻になれば、戦争は始まってしまうと断言しているところが、ロシアのウクライナ侵攻を予測しているように感じました。


・朝に「国際法を守れ。人権を守れ」」と説教しつつ、午後には空爆してくるのがアングロサクソンなのだ(p187)


中国は大国になったと勘違い

中国は香港国家安全維持法を制定し、一国二制度の約束を破るだけでなく、世界中のすべての人間が中国の法律に従わなくてはならないという法律を制定してしまいました。さらに海警法では、自ら勝手に領土と定めた島嶼の領海を通行する外国の船舶を取り締まるとしたのです。では、なぜ中国がこれほど国際法を無視するような強硬策を取り続けているのでしょうか。


ルトワック氏の見立てでは、リーマンショックを見て、中国は既にアメリカと並ぶ大国になったと勘違いをしてしまった、というのです。中国は大国なのだから、他の小国は大国の言うことを聞かなくてはならないし、言うことを聞かなければ制裁すればよいと思い込んでいる。だから、尖閣諸島は中国のものだし、インドとの国境紛争地も中国のものだし、南シナ海も中国のものと宣言し、実行支配しようと行動しているのです。


ところが、日本もインドもオーストラリアも大国である中国の言うことを聞かないばかりか、中国のメンツをつぶすようなことをするのか中国は理解できていないのです。


・(中国は)「何か揉め事が生じても、しょせん小国相手には、金(投資や貿易、関税などの経済的手段)で黙らせたり、言うことを聞かせたりあうることができる」と勘違いしてしまった(p28)


ドローンを戦争のために開発

この本でルトワックさんが提案していることをまとめておきましょう。まず、中国との戦争を予防するため、軍備を増強すること。自衛の武器としてのドローンを開発し、敵のドローン対策も開発します。これから新しい有人機を開発しようとすることは、技術の進歩を無視していると批判しています。


そして中国の脅迫は拒否し、習近平のメンツを潰すのです。中国をマネして海上保安庁に巨大船を配備することも効果的です。中国を支援するグループは、この提言を潰すために、軍備増強は平和の敵であり、ドローン兵器は人道上問題があり、中国と対立すると経済的に大きな損失となるとキャンペーンを行うのでしょう。


最後に、もっとも危険なのは軍事バランスの崩れている台湾であるというのは、間違いないようです。なぜなら台湾は、2012年に徴兵制から志願制への移行を決定したからです。中国の台湾進攻を防ぐためにヨーロッパ諸国は軍艦をアジアに派遣し、日本も南西諸島の防衛力増強を進めているのです。ルトワックさん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・いま習近平は、チベット人、モンゴル人、ウイグル人というアイデンティティを完全に剥奪し、漢民族に同化させようとしている。これは毛沢東さえやらなかったことだ(p95)


・スウェーデン軍はフィンランドとの国境に近い北部に精鋭部隊を配置している・・・ソ連がフィンランドになだれこんできたときのための部隊だった・・・日本も同じようなことができる(p86)


・平和が戦争の原因になる・・・台湾に行けば、実に平和そうなところだと誰もが実感する。若者は徴兵されていないし、軍のパレードや行軍を見ることもないし、学生や主婦が射撃の訓練をしているところを見かけることもない(p191)


・中国側が「小国」と認定しているような国が、中国側が持ちかけた提案や、すでに成功したと喧伝でたものを拒絶したり拒否したりすることによって「メンツを潰す」というサプライズが有効だということだ。日本やベトナムはこれができる(p109)


▼引用は、この本からです
「ラストエンペラー習近平」エドワード・ルトワック
エドワード・ルトワック,文藝春秋


【私の評価】★★★★★(93点)


目次

序章 「戦略のロジック」で中国を見る
第1章 最悪の選択「チャイナ4・0」
第2章 米中対決 勝者はどっちだ?
第3章 習近平を「つまずかせる」には
第4章 軍事テクノロジーの逆説
第5章 軍事テクノロジーの逆説 エアパワー編
第6章 戦略のパラドキシカル・ロジック



著者経歴

エドワード・ルトワック(Edward N.Luttwak)・・・歴史学者。ワシントンD.C.の大手シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)シニアアドバイザー。1942年、ルーマニア生まれ。イタリア、英国で育つ。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで学び、1975年にジョンズ・ホプキンス大学で博士号取得。同年国防省長官府に任用される。国家安全保障会議のメンバーも歴任。専門は軍事史、軍事戦略研究、安全保障論


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