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「日本4.0 国家戦略の新しいリアル」エドワード・ルトワック

2022/01/27公開 更新
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「日本4.0 国家戦略の新しいリアル」エドワード・ルトワック


【私の評価】★★★☆☆(79点)


要約と感想レビュー

 日本4.0とは何でしょうか。著者の定義は、江戸時代が日本1.0、明治時代が2.0、戦後が3.0です。日本はこれまで、時代の変化に合わせて自国のあり方を大きく変えてきました。そして今、米中対立、ロシア欧州対立、北朝鮮の核兵器、少子社会という中で大きな変化が求められており、その未来の姿を日本4.0としているのです。


 著者の推奨する日本4.0とは、課題に対して現実的、実務的、実戦的に対応する国家です。例えば、尖閣諸島には武装した環境保護調査員を常駐させます。少子化に対しては子どもの養育費を国が負担します。北朝鮮に対しては、ミサイル基地や核兵器施設を空爆を想定した準備をする必要があるとしています。


・戦争で必要なのは、勝つためにはなんでもやるということだ・・・目的は「勝つこと」であり、「ルールを守ること」ではない(p52)


 この本は、トランプ大統領が米中貿易戦争をはじめた2018年に書かれています。現代は冷戦時のように米ソのコントロールにより国家紛争を抑圧する仕組みがなくなり、局地的な紛争が頻発しています。例えば、クリミアや南シナ海のように侵略しても処罰されず、勝者は獲得したものを保持し、敗者は奪われたままで屈辱に耐えているのです。国際社会は非常に不安定になっているということです。


 その一方で、世界一の軍事力を持つ米国は、できるだけ兵士の死傷者を減らすような作戦を好みます。ドローンによる攻撃や巡行ミサイルで処理できるなら、そちらを選択するのです。そして現在は、武力よりも経済力を利用した、貿易戦争や経済封鎖で相手国を攻撃するようになるとしていますし、現実もそのように進んでいるのです。


・軍事力の重要性がこのまま低下してしまった場合、・・・「世界ビジネス」が残されることになる(p143)


 対中国、対ロシアに対しては、武力による紛争よりも経済戦争の比率が大きくなっていくだろうと予想する一冊でした。2018年に書かれた本ですので、バイデン大統領の対ロシアへの対応もその流れに沿っているということがわかります。経済がその紛争の最大の原因であるだけでなく、経済制裁が、その紛争解決の手段として使われていくのです。


 日本も敵地攻撃能力の検討や、離島防衛力の確保に力を入れています。次のステップは尖閣諸島への武装した常駐者の配置ということになるのでしょうか。ルトワックさん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・ロシアの漁船が軽油を渡す代わりに北朝鮮の漁船が海産物を渡す・・・ロシアは北朝鮮からの密輸を許していたのだ(p32)


・地経学の最大の目標は(国家の富の拡大に加えて)国民の就業率を最大化することなのだ(p152)


・マイクロンの技術を、中国が盗もうとした・・・マイクロン側がこのことを問題にすると・・・マイクロン製品を中国から締め出した(p164)


・マイクロソフトは北京に巨大な研究所をおいており、実質的に中国のAI技術者のための「養成所」として機能している(p175)


・中国の人民解放軍の研究機関が所有するファーウェイ社・・・ファーウェイ社は国産CPU(ARM社製)を使っているのだが、その技術を提供しているのは、ソフトバンク傘下のイギリス企業なのである(p176)


▼引用は、この本からです
「日本4.0 国家戦略の新しいリアル」エドワード・ルトワック
エドワード・ルトワック、文藝春秋


【私の評価】★★★☆☆(79点)


目次

第1章 日本4.0とは何か?
第2章 北朝鮮の非核化は可能か?
第3章 自衛隊進化論
第4章 日本は核武装すべきではない
第5章 自衛隊のための特殊部隊論
第6章 冷戦後に戦争の文化が変わった
第7章 「リスク回避」が戦争を長期化させる
第8章 地政学から地経学へ
第9章 米中が戦う地経学的紛争



著者経歴

 エドワード・ルトワック(Edward N. Luttwak)・・・米戦略国際問題研究所(CSIS)上級顧問。戦略家、歴史家、経済学者、国防アドバイザー。1942年、ルーマニアのトランシルヴァニア地方のアラド生まれ。イタリアやイギリス(英軍)で教育を受け、ロンドン大学(LSE)で経済学で学位を取った後、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学で1975年に博士号を取得。同年国防省長官府に任用される。専門は軍事史、軍事戦略研究、安全保障論。国防省の官僚や軍のアドバイザー、ホワイトハウスの国家安全保障会議のメンバーも歴任


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