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「大国政治の悲劇 米中は必ず衝突する!」ジョン・J.ミアシャイマー

本のソムリエ 2022/03/25メルマガ登録
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「大国政治の悲劇 米中は必ず衝突する!」ジョン・J.ミアシャイマー


【私の評価】★★★★★(90点)


要約と感想レビュー

 NATOの東方拡大はロシアの不満を高め、ウクライナ危機につながると指摘していた地政学研究家ミアシャイマー氏という人を知りたくて手にした一冊です。ミアシャイマーの考え方は「現実主義」(リアリズムRealism)と呼ばれ、大国は自国の生き残りのためにより多くのパワーを求め、そして派遣国家を目指すというものです。


 実はリアリズムはアメリカの安全保障の考え方の主流ではありません。アメリカの主流はリベラリズムと呼ばれ、経済的に相互依存度を高めていけば、戦争はなくなるという考え方です。したがって、他国に資本と自由と民主を輸出し、場合によっては革命を起こし民主化政変を推し進めてきたのがアメリカなのです。


・大国の究極の目標は、他の大国よりも支配的な立場を得ることにあり、支配力を得ることは自国の生き残りを保証するための、最も有効な手段だからだ(p13)


 この本では過去の戦争を分析することで、冷徹な事実を説明しています。たとえば、ある国家が民族浄化や虐殺をしていても、他国が金と血を費やしてそれをやめさせることはあまり例がない。


 敵国は戦略爆撃で国民を殺戮し、降伏するよう圧力をかけるが、いくら国民が殺戮されても停戦のために妥協することはない。逆に、国民が苦しむがゆえに、戦争を食い止めるのが困難になる。


 弱小国は強国の要求をあらかじめ受け入れておくという「バンドワゴニング(追従政策)」は、平和をもたらすのではなく、逆に敵国の侵略意欲を高めさせてしまう危険な戦略である。


 これらは過去の戦争の経験から、導き出される法則なのです。


・支配階級のエリートたちは国民が殺戮にあっていても停戦のために動こうとすることはない(p135)


 あまりに長い本なので、皆さんには結論から読んでいただくのがよいのではないかと思います。この本は2007年に発刊されていますが、ミアシャイマー氏は中国には二つのシナリオがあるとしています。


 一つは中国の急速な経済成長が止まり、アジアのパワーバランスが変わらず、アメリカも軍隊を引き上げるというもの。もう一つは中国の急速な経済成長が続き、中国が潜在的覇権国となるものです。アメリカ軍はアジアに残り、中国を抑え込むために米中対立が起きるというものです。


 ミアシャイマー氏に言わせれば、中国の経済成長をさせないことがアメリカの国益になるはずだったのですが、アメリカは中国を発展させるように行動し、中国という覇権国を作り出してしまったのです。この致命的間違いは、もう後戻りできないくらいのところまできており、NATO東方拡大ももう後戻りはできないのです。


 ミアシャイマーさん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・征服がほとんど利益にならず、侵略者はすべて戦前よりも悪い状態になったという確たる歴史的証拠が見当たらない(p275)


・1815年から1980年の間に起こった63回の戦争のうち、侵略した側が勝ったのは39回であり、60%の成功率になる(p67)


・地域覇権を達成した国家は、他の地域の大国が同じような偉業を成し遂げようとするのを邪魔する(p69)


・インド・パキスタン両国は1980年後半から核兵器保有国となっていたが・・・1999年には千人以上の戦死者を出す大規模な国境紛争が発生している(p180)


・ライバルたちが勝手に戦争を始めた後で、彼らが力尽きるまで徹底的に戦うよう仕向ければよく、その間自国は戦いの外に逃れていればいい(p207)


・国際政治の世界では「神は自ら助けるものを助ける」のだ(p57)


・大国は常に不確かな情報の中で重大な決定をしなければならない状況に陥ってしまう(p65)


▼引用は、この本からです
「大国政治の悲劇 米中は必ず衝突する!」ジョン・J.ミアシャイマー
ジョン・J.ミアシャイマー、五月書房


【私の評価】★★★★★(90点)


目次

第1章 イントロダクション
第2章 アナーキーとパワーをめぐる争い
第3章 富とパワー
第4章 ランドパワーの優位
第5章 生き残りのための戦略
第6章 大国の実際の行動
第7章 イギリスとアメリカ:オフショア・バランサー
第8章 "バランシング"対"バック・パッシング"
第9章 大国間戦争の原因
第10章 二十一世紀の大国政治



著者紹介

 ジョン・J.ミアシャイマー・・・シカゴ大学のウェンデル・ハリソン特別記念教授。専門は国際関係論で特に安全保障分野。「オフェンシヴ・リアリズム」という国際関係論の理論を提唱し、その内容の高さが認められて「ジョセフ・レプゴルド学術賞」を受賞。学術専門誌以外にもニューヨーク・タイムズ紙などで論文や記事を多数発表している。2006年には元同僚でハーバード大学教授のステーヴン・ウォルトと共にアメリカの外交政策にイスラエル・ロビーが大きな影響を与えすぎていることを指摘。2003年から米国芸術科学アカデミーの会員。1980年にコーネル大学Ph.D(政治科学)


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