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「フィンランドの高校生が学んでいる人生を変える教養」岩竹美加子

2024/12/12公開 更新
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「フィンランドの高校生が学んでいる人生を変える教養」岩竹美加子


【私の評価】★★★★★(90点)


要約と感想レビュー


世界一幸福な国の教育とは

ロシアの侵攻を経験したことのあるフィンランドは、徴兵制で国防を強化しつつ、「世界一幸福な国」として知られています。


フィンランドでは教育の平等を重視し、大学まで無料で学ぶことができます。学校では服装やアクセサリー、化粧が自由です。部活はないので、自己負担で地元のスポーツクラブ等に行く人が多いという。


また、学力テストや偏差値といった仕組みがなく、生徒自身が目標を設定し、それををどれだけ達成したかを自分で評価するところが多いという。ただし、高校の卒業試験と大学の入学試験は集中して勉強する必要がありますが、その期間は数カ月程度で日本より短いのです。


このように試験だけで評価しない傾向にあるフィンランドでは、「就職」という概念がないという。つまり卒業後は、いくつかの仕事を経験してから、自分に合った正社員のポジションを見つけていくスタイルが一般的なのです。実は試験がないということは、完全なる実力主義なのかもしれません。


日本の学校は本質的な学びに関わることが少ない一方、子どもに対する介入がとても多い。フィンランドの学校は逆(p30)

人生観の知識とは

この本ではフィンランドの思想を深堀りするために、「人生観の知識」という日本の道徳に相当する教材の内容を紹介しています。この「人生観の知識」は、宗教を教える科目の一つの選択肢として、宗教を持たない人向けに作られたものなのですが、この内容が深いのです。
 

例えば、良い人生の項目では、「死の床で大事なことをしなかったこと、何かに挑戦しなかったことを後悔することがある」と紹介し、自分の人生を生きる大切さを伝えています。また、他人の期待に合わせようとして他人の物差しで生きることをネガティブなアイデンティティと表現して、否定的に説明しています。


つまり、周りの価値観や同調圧力に屈し、自分の価値観に基づいて行動できないということは、自分の人生ではないということなのです。ただし、自分のことだけ考えて、他人を考慮できないようであってはならないとも書かれてあります。


これを学校で教えているのですから、素晴らしいの一言です。


「死の床で大事なことをしなかったこと、何かに挑戦しなかったことを後悔することがある。恥をかくことや失敗を恐れて、自分の人生を生きなかった。しかし、誰にも小さな失敗はあり、逆風にも遭う。それが人生だ」(p140)

対話のルールとは

また、良い対話・議論についての方法論もよく書けていると感じました。つまり、良い対話に必要なのは、「相手の主張を聞くこと、相手を尊重した対話、しっかりした論拠である」とし、考え方の異なる人の考え方を理解することによって、共通点を見つけ、議論を進めることを説明してます。


対話のルールとしては「相手を尊重すること、誰も孤立させないこと、違う意見であっても全員が参加すること、違う意見を言う勇気を持つこと、ユーモアを装った嫌がらせをしないこと」などが示されています。空気で動かされることがない社会を目指しているのです。


議論のスキル・・エピソードによる論法・・「移民グループが、友達の携帯を盗んだ。移民を受け入れてはダメだ」・・エピソードによって、移民全体を拒否する論法である(p206)

フィンランドに単身赴任はない

私には「人生観の知識」の授業内容も興味深かったのですが、フィンランドの常識も刺激的でした。例えば、フィンランドに単身赴任はないという。つまり、単身赴任は家庭生活を破壊し、働く人と家族の良い生活を否定する労働形態でありえないのです。


またフィンランドの選挙の投票率は、大統領選挙でも国会議員選挙でも70%以上であるという。これも素晴らしいことだと思います。

 
フィンランドの「人生観の知識」の授業では、「私はなぜ生きるのか」「どんな社会を発展させるのが良いだろう」などが教えられているのですから、日本でも参考にしたいものです。岩竹さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・「私たちは、人生の途上で様々な選択をしている・・例えば、パートナーを選ぶ、勉強、職業、趣味の選択など・・日々の行為が、あなたをあなたにする(p117)


・「釈迦は・・満たされることのない欲望を捨てることを説いた」・・良い人生のためには、過剰な欲望を捨てるのが良いという考え方である(p146)


・「幸福は、主観的な感覚としても定義できる。美味しい食事、良い本、健康、仕事、良い友人など」(p151)


・「他人を幸福にすること。それは自分も幸福にする。寄付は寄付する人を幸福にする」(p151)


▼引用は、この本からです
「フィンランドの高校生が学んでいる人生を変える教養」岩竹美加子
岩竹美加子、青春出版社


【私の評価】★★★★★(90点)


目次


第1章 フィンランドの子どもたちは「いかに学ぶか」を学ぶ
第2章 視点と行動を変える「人生観の知識」という科目
第3章 「きまり」を教える日本、「本質」を教えるフィンランド



著者紹介


岩竹美加子(いわたけ みかこ)・・・1955 (昭和30)年、東京都生まれ。フィンランド在住。ペンシルベニア大学大学院民俗学部博士課程修了。早稲田大学客員准教授、ヘルシンキ大学教授等を経て、同大学非常勤教授 (Dosentti)。


フィンランド関連書籍


「フィンランドの高校生が学んでいる人生を変える教養」岩竹美加子
「フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか」堀内 都喜子
「フィンランドメソッド入門」北川 達夫
「フィンランドの知恵―中立国家の歩みと現実」マックス ヤコブソン


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