「フィンランドの知恵―中立国家の歩みと現実」マックス ヤコブソン
2019/07/07公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★☆☆☆(65点)
要約と感想レビュー
フィンランドとソ連の戦い
30年前に書かれたフィンランドの歴史についての本です。フィンランドはソ連(ロシア)に隣接し、歴史的にドイツがフィンランドを経由してソ連を攻めることがありました。逆に言えば、ソ連がフィンランド経由でドイツを攻撃することもありえるわけでフィンランドは緩衝地域と見られていたのです。
著者に言わせると、フィンランドは1939~40年に赤軍に抵抗し、1941~44年に対ソ戦を継続し、第二次大戦終了時には西欧諸国の助言とモスクワを信用せず、1948年にソ連と条約を締結したことで批判されたという。現在(1989)でも、ソ連支配への無気力な服従を意味する"フィンランド化"なる言葉を使って西欧諸国から中傷されているというのです。
一方にとり二枚舌と裏切りの、他方にとり安全と安定の象徴である「ヤルタ」の意義については、いまもなお論争が続けられている・・その合意内容とは、「友好的政府」により運営される周辺諸国を確保する権限がソ連に与えられるというものだ(p57)
フィンランド化とは
「フィンランド化」とは、だんだんとソ連化していくという意味でもあり、逆に良い関係を維持しながら独立を維持するという見方もあるのでしょう。
実際、フィンランドには70万人の訓練を受けた予備役兵がおり、そのうち約4万4千人が毎年新たな訓練コースに参加しているという。これら予備役兵の20万人以上が、正規兵とともに「緊急展開部隊」として48時間以内に動員可能で、ソ連と戦う準備はできているのです。
"フィンランド化"は、全体主義をとる軍事大国の陰で生きている民主主義国がその政治支配への服従を余儀なくされ、やがて国内の自由を失うプロセスとして規定されている。これは、もちろん、フィンランドで起こったことと正反対である。フィンランドは、40年前だれも想像できなかったほど大きな行動の自由を今日(1989)、享受している(p156)
小国の第一の務めは生き残る
著者の「小国の第一の務めは、生き残ることである」という言葉が印象的でした。フィンランドは人口400万人の小さな農業・林業国であり、ソ連に協力的な姿勢を示しながら中立という立場で独立を維持しようとして、なんとか今まで生き延びたのです。
ヤコブソンさん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・歴史を勝者が記すように、世界政治の筋書きは大国が書く(p1)
・チェコ共産党は有権者の40%の支持を得ているのに、フィンランドのそれは23%にすぎない。チェコでは共産主義者が官庁と軍で重要なポストを占めていたが、フィンランドでは政府の中枢でほとんど影響力を持っていなかった(p90)
・国際関係の歴史はじつのところ、各国が他国の内政に干渉する、限りない手段のカタログである。そこには暴力、威嚇、経済的圧力、贈収賄、あるいは無数の微妙な説得の手段がある(p136)
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【私の評価】★★☆☆☆(65点)
目次
生き残りから成功へ―プロローグ
1 嵐の時代―ロシア・コネクション(隣国ロシアの圧迫
2 外圧と内圧―民主国家への試練(共産主義者の挑戦
3 小国の中立戦略―国益をどう守るか
著者経歴
マックス・ヤコブソン(Max Jakobson)・・・国際問題研究家。元国連大使。1923年生まれ。新聞記者を経て、1953年フィンランド外務省入。1965年国連大使。1971年には国連事務総長に推されたが、ソ連の拒否権にあった。1975年外務省を退き、新設のフィンランド経済団体会議の会長に就任。
フィンランド関連書籍
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