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「クルドの夢 ペルーの家 ー 日本に暮らす難民・移民と入管制度」乾 英理子

2024/06/29公開 更新
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「クルドの夢 ペルーの家 ー 日本に暮らす難民・移民と入管制度」乾 英理子


【私の評価】★★☆☆☆(65点)


要約と感想レビュー

埼玉県川口市のクルド問題とは

埼玉県川口市のクルド人問題をニュースで見たので、本書を読んでみました。川口市では、一部のクルド人が改造車で暴走したり、違法駐車しているという。また、コンビニ前でのたむろして、女性をナンパして車に連れ込もうとしたという事例もあるのです。


こうしたクルド人の若者の多くは、難民申請することによって強制送還を逃れて収容所に収監されているクルド人の一部が仮放免ということで町に出いている若者らしいのです。


そうした仮放免のクルド人がたむろし、仮放免なので仕事はできないのに、仕事をして不法就労者として入管に捕まり、収容所に戻るということを繰り返しているという。クルド人の不法滞在者が日本人と結婚して特別在留資格を得ている事例もあるので、ナンパに成功している人もいるのでしょう。


仮方面の人がやむを得ず働き、不法就労者として入管に取り締まられて再び収容されていく(p96)

難民・移民を受け入れるのか

著者のスタンスは、難民・移民を受け入れようというものです。日本の難民認定率が1%未満であることを指摘し、西欧諸国並みの数十%まで増やそうということでしょう。そして著者は、働くために日本にやってくるということが、そんなに悪いことなのか。彼らは、家族のため、子どものために日本にやってくるということ自体が、そんなに悪いことなのかと問いかけているのです。


この本に問題があるとすれば、難民・移民を受け入れのマイナス効果を隠そうという意図が感じられることでしょう。例えば、取材で「クルド人に対するさまざまな苦情を耳にした」と書きながら、「些細なことで通報されたり、警察の事情聴取を受けたちるすケースもあった」と、あたかも些細なことであるかのように書いているのです。


出入国在留管理庁・・「母国に戻すと危なさそうだな」という人道的は保護の目線よりも、「日本に入国した場合にどんな危険性があるか」という目線になりがちだ(p44)

法律を守らないほうが得なのか

また、日本生まれの不法滞在者に在留特別許可を与えようと活動している人たちがいますが、そもそも不法滞在で日本に居続ければ、在留特別許可をもらえるのであれば、ごね得となってしまいます。素直に帰国する人がほとんどなのに、帰国したくなければしなくていいんだ、自分たちは法律を守らなくてもいいんだということなのです。


この本では仮放免さらた人にインタビューして、「仮放免という立場の不自由さについて不安と怒りを募らせていた」と書いていますが、収容所生活は苦しいだろうから仮放免したら、仮放免に文句を言うのがクルド人なのです。在留特別許可を与えたら、次はどういった文句を言ってくるのか不安になります。


大橋毅弁護士ら弁護団は、こうした日本生まれで仮放免の若い世代と集団訴訟を起こしている。日本で育った背景から、在留特別許可を求めるものだ(p138)

テロ組織PKKを応援しているのか

さらに問題なのは、著者がクルド人の独立を目指すクルディスタン労働者党(PKK)好意的であることでしょう。著者は毎年春にクルド人の新年を祝う祭「ネウロズ」が川口市で行われていることを紹介し、クルド人の自由と解放を願って歌っていると紹介しているのです。


著者は報道機関で働くプロなのですから、トルコ政府が埼玉県川口市の在日クルド人団体「日本クルド文化協会」と代表者を「テロ組織支援者」に認定していることを知っているはずだし、知っていなくてはならないと思います。


著者は、川口市のクルド人団体がテロ組織とわかったうえで、この本を書き、クルド難民の番組「バリパイ一家の願い」を制作しているのです。


クルド人の新年を祝う祭「ネウロズ」・・暴君の圧政に立ち向かった若者の物語がいわれとされる。毎年春の日前後に、世界中のクルド人が各地で自由と解放を願い、歌って踊る(p19)

ジャーナリストとして客観性に欠ける

全体としてジャーナリストとして客観性に欠ける内容でした。例えば、在留外国人、288万5904人を紹介しつつ、著者は「今や外国人の存在なしに私たちの暮らしは成り立たない」と書いていますが、人件費は上がる課題はありますが、成り立つと思います。


著者は「収容所にいる人々は犯罪者ではないのに、一年も二年も身を拘束されている」と書いていますが、強制送還が決まったのに、素直に帰らないため収容所に置いてあげているだけなのです。「12年経っても正規の在留資格を得られずに、〇〇さんは厳しい現状に、疲れ切っているようだった」と書いていますが、法律上、在留資格を得られないのに12年も帰らず、文句を言い続けているだけなのです。


確かに12年、違法状態を維持し続けた強い意志は認めるべきですが、現在の法律の運用と、今後の移民・難民の在り方の議論はわけて考える必要があると思いました。つまり、現行法は守るべきであり、ごね得は許されないということです。そのうえで、移民を受け入れて西欧のように治安の悪化を許容するのか、という議論が必要だと思いました。


著者は「実情を知ろうともせず、その政策を無言のうちに支持しているのは、同じ「市民」である私たちなのである」という言葉でこの本の結びとしていますが、著者は実情を伝えようともせず、一部だけを切り取って、その政策を誘導しようとしていると感じました。乾さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・2010年の制度の運用の見直しのなかで「正規の滞在中に難民申請をした申請者の方については、六か月経過後に一律に日本で就労できる」・・「偽装難民」問題(p46)


・難民申請をしているあいだに「特定活動」という在留資格を認められたり、裁判を経て在留特別許可を得られたりして、合法的に働くことができる人もいる(p52)


・2018年・・日田市日本入国管理センターのシャワー室で、インド人のディーパック・クマルさんが首を吊って命を絶った・・収容者たちはハンガーストライキを行った。その数は100人を超え(p69)


・「難民条約」では、難民申請者は強制送還してはならないと取り決められている(p83)


▼引用は、この本からです
「クルドの夢 ペルーの家 ー 日本に暮らす難民・移民と入管制度」乾 英理子


【私の評価】★★☆☆☆(65点)


目次

第1部 「難民」と収容
第2部 「移民」と私たち



著者経歴

乾 英理子(いぬい えりこ)・・・1988年、奈良県生まれ。京都大学総合人間学部卒業後、2011年にディレクター職でNHK入局。静岡放送局、文化・福祉番組部を経て、現在制作局第3制作ユニット(福祉)所属。ジェンダーや外国人などをテーマに「ハートネットTV」「ETV特集」を制作。「バリバイ一家の願い―"クルド難民"家族の12年」(2019年)は、ギャラクシー賞奨励賞、貧困ジャーナリズム賞を受賞


クルド人関連書籍

「ぼくたちクルド人: 日本で生まれても、住み続けられないのはなぜ? 」野村昌二
「クルドの夢 ペルーの家 ー 日本に暮らす難民・移民と入管制度」乾 英理子


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