「日本の安全保障はここが間違っている!」田岡俊次
2022/02/27公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★☆☆☆(61点)
要約と感想レビュー
ロシア侵攻の可能性は低いと書いていた人
ロシアがウクライナに侵攻しましたが、ロシア侵攻の前に「緊迫のウクライナ情勢、「ロシア侵攻」の本気度」という記事でロシアが侵攻する可能性は低いという記事を書いていた田岡俊次氏は何者なのか、知りたくなって手にした一冊です。予想どおり、元朝日新聞の記者でした。
2014年と古い本ですが、この本でも書いてある内容は、安倍政権の方針をことごとく批判するもので、「中国包囲網は妄想にすぎない」「尖閣諸島は棚上げに同意すべき」「中国海軍は米国にとって脅威ではない」「安保法制は日本の右傾化・・米国は中国と友好関係重視」「拉致被害者も北朝鮮に戻すべきだった」等という内容となっています。
・「中国包囲網」は全くの妄想で、むしろ日本が孤立する(p3)
中国やロシアを刺激してはならない
田岡氏のロジックは、外交の要諦は敵を減らすことである。したがって、中国やロシアを刺激しないよう、対立しないようにしなくてはならない。中国包囲網などとんでもないし、集団自衛権や安保法制、憲法改正などとんでもない。逆に日本が孤立することになる、というものです。
また、当時はロシアがクリミアを併合した時期であり、ロシアについても刺激しないようにするのが大事であるとしています。ウクライナのNATO加盟などとんでもない、ロシアを北朝鮮のように孤立させないようにしなくてはならないと主張しているのです。
・中国は、日本の最大の貿易相手国・・・日本が中国との敵対関係に入り込むことを避けるのは、外交・安全保障政策上、当面の第1の課題であるはずだ(p97)
中国・韓国との対立に欧米が危惧
田岡氏は、安倍首相の中国の脅威を強調し、米国の忠告を無視しての靖国神社参拝や憲法改正案を作成し、NHK人事に手を突っ込み、愛国心・領土問題教育などナショナリズムを高め、中国・韓国との対立を深める方向に漂流することに欧米諸国が危惧を抱くのは無理もないと批判しています。よほど中国・韓国に都合が悪いのでしょう。
田岡氏は、北朝鮮拉致被害者の帰国についても、安倍氏が「北朝鮮に親を戻せば相手は帰さないかもしれない」と主張して戻すことに反対したことを批判しています。北朝鮮で学校に行っている子供たちが不安がるため、まず大人5人が帰国して日本の様子を見て北朝鮮に戻り、子供と話して連れて帰国する合意ができていたとして、福田康夫官房長官(当時)が「約束した以上、それを守るべきだ」と主張したことを根拠としているのです。
今、中国の南シナ海進出、ロシアと中国の連携、ロシアのウクライナ侵攻を見ている私たちにとって、田岡氏がどのような意図を持って情報を発信しているかは明らかで、情報工作の一環となって活動しているものと考えられます。田岡俊次氏は現在でも動画で情報発信していますが、正しい情報に基づくデモクラシーと反対の情報発信を行っているチャンネル名が「デモクラシータイムス」というのは、ジョークなのでしょう。田岡さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・安保法制懇の独りよがりには公明党だけでなく、自民党内部にも反発、危惧を抱く人々が少なくない様子で、防衛相内でも批判的な見方が出る(p52)
・中台の親密さを見れば、台湾が中国包囲網に加わることは全く考えられない情勢だ(p120)
・「島嶼防衛」を標榜した手前、戦わざるをえなくなって負ければ大変だ(p153)
・ウクライナのNATO加盟が認められ、米軍基地がウクライナに作られれば、孤立したロシアは再び脅威感を深めて必死で軍備拡張に努め巨大な北朝鮮のような形になりかねない(p198)
【私の評価】★★☆☆☆(61点)
目次
第1章 集団的自衛権を再検討する
第2章 日本の危ない安全保障
第3章 安倍戦略の迷走「中国包囲網」は妄想にすぎない
第4章 国際紛争に学ぶ安全保障
著者経歴
田岡俊次(たおか しゅんじ)・・・1941年、京都市生まれ。1964年早稲田大学政経学部卒、朝日新聞社入社。1968年から防衛庁担当。米ジョージタウン大戦略国際問題研究所主任研究員、同大学講師、編集委員(防衛担当)、ストックホルム国際平和問題研究所客員研究員、AERA副編集長、編集委員。
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