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「悲願へ 松下幸之助と現代」執行草舟

2019/07/08公開 更新
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悲願へ 松下幸之助と現代


【私の評価】★★★★☆(87点)


要約と感想レビュー

 執行草舟(しぎょう・そうしゅう)さんは謎の実業家。菌食・ミネラルの酵素食品を販売しているという。世界の万巻の書を読んだという執行さんは、「松下幸之助の人生は不幸であっただろう」と言っています。つまり、崇高な理想を掲げ、リーダーとして自らを律し、組織を牽引していったので、自分の人生はそこに存在しないのです。


 つまり、自分の幸せなどというものは超越しており、崇高な理想のために自分の人生、生活というものをすべて賭けている。そのための社員の教育、指導というものは、鬼になることが必要であれば鬼となり、仏でなければならなければ仏となる。著者のいう野蛮性と高貴性とが同居しているというのです。


 執行さんは、歳をとって、楽をしたい、長生きしたい、美味いものを食いたい、好きなことだけしたいと言っている人は、我利我利亡者であると断罪しています。自分の利益ではなく、他のために生きるのが人生だというのです。


・平和も幸福もすべて人に与えるもので、繁栄と平和と幸福を他人に与えようと思う人は、自分は不幸を顧みないということになるのです。その結果、不幸の中に活路と未来を見出していく。ここに松下幸之助の真実がある(p65)


 そして、戦後生まれたPHP活動(繁栄を通しての平和と幸福:(Peace and Happiness through Prosperity)は、80年間という時間を経て、変わらざるをえないとしています。つまり、当時は戦後の焼け野原で敗戦というショックから日本精神が「悪」ということになっていた。必然的に平和と幸福の達成は、物資の充足からはじめなければならなかったのです。


 そして、物があふれる今の時代は物ではなく心の時代になったという。つまり、人とのふれあいを大切にする、寄り添うことが繁栄するというのです。


 そして一歩を踏み出すためには、不幸を受け容れる覚悟がないとダメだという。不幸になりたくなかったら、頑張ろうとは思えないのです。苦労した先人を知り、自分もそのような真の人間として生きようとるには、自分を捨てる勇気が必要なのでしょう。


・少しでも愛国的なことを言ったりしたら、先生からすぐに殴られた・・・「お前のような野郎が戦争を起こすんだ。この軍国主義者が」と、親孝行の話をしただけでも殴られたのです。日本の「精神」はすべて悪いということだった・・だから、松下幸之助がPHP理念を唱えたときにはもう物質だけしかなかったのです(p76)


 馬鹿の薩摩藩と頭が良い佐賀藩を引き合いに出して、頭が良すぎたから幕末の佐賀は日本を変える力にはなれなかった。薩摩人は総合的な人格力と肚を重んじたから、日本を変えることができたという解釈がおもしろい。つまり、あまりにクリーンだと外国との戦いや、外交交渉で負けてしまう。人の弱みを攻めたり、脅迫したりするから勝てるのであって、悪人でなければ負けて自由を失い、国を失うということです。


 言葉の使い方が極端で、読み解くには松下幸之助の本を読み込んでいないと難しいところがあるかもしれません。ただ、執行さんの言う新しい理想が求められることもわかるし、そのために自分を捨ててでも理想を目指す人が必要であることもわかります。よく考えれば、頭の良い人はいくらでもいますが、馬鹿になって理想を目指す人は少ないのも事実なのでしょう。


 執行さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・不幸になってもいいと思うと、反骨精神も出てくるし、色々なものに挑戦する気概も出てくる・・他人を愛することも出来るようになってくる(p66)


・松下幸之助の精神というものは、悲哀が群を抜いて強いという特徴があります・・・それが、若き日には不良性を生み出したのでしょう・・不良性と言うと、少し言葉が悪いかもしれませんが、「反骨心」や「反抗」そして「反骨精神」というか、そういうものです(p41)


・本を読めとは言いませんが、本を全く置いていないというのは、馬鹿の証明だったのです。以前は。それを平気で「はい、私たちは馬鹿でございます」なんていう家庭を作っているのが、今の日本人だということなのです(p91)


・善人というのは、もともと自分のことを善い人間だと思っている「馬鹿者」のことを言っていた言葉なのです。だから、今の日本人はほどんどがその類型に当てはまってしまいました(p34)


▼引用は下記の書籍からです。
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執行草舟
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【私の評価】★★★★☆(87点)


目次

第1部 「PHP理念」と現代(講演講演後の質疑応答)
第2部 「新しい人間観の提唱」と現代(講演講演後の質疑応答)
「執行草舟×佐藤悌二郎公開対談」



著者経歴

 執行 草舟(しぎょう そうしゅう)・・・1950年、東京生まれ。立教大学法学部卒業。著述家、健康食品販売。独自の生命論に基づく生き方を提唱・実践。また美術事業も展開し、執行草舟コレクション主宰、戸嶋靖昌記念館館長を務める。


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