「池上彰の講義の時間 高校生からわかるイスラム世界」池上 彰
2022/06/20公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(78点)
要約と感想レビュー
イスラム教とは
私は海外事業グループに在職していたとき、カザフスタン、インドネシアといったイスラム教の国に長期滞在したことがあります。そして、イスラム教、ユダヤ教、キリスト教の聖地であるエルサレムにも、いずれ行かなくてはならないと思っていたので手にした一冊です。世界の宗教を見てみると、ユダヤ人だったイエスの死後、イエスを神の子と信じる人たちがキリスト教を作り上げました。その後、イスラム教は6世紀にムハンマドという人が預言者として「神の言葉」を残しました。この「神の言葉」を記録したのが「コーラン」であり、この「コーラン」を読む宗教がイスラム教なのです。
一神教はどれも日本人からは理解しにくいのですが、神の言うとおりにしていれば幸せになれるということが基礎になっています。だから、イスラム教ではジハードで死んだ者は 天国に行く。一日五回、礼拝をしなくてはならない。偶像崇拝は許されない。偶像は破壊する。豚肉を食べない。一年に一月は断食をするということが守られているのです。もちろん国によって厳格さは違いますが、女性はベールをかぶらなければならない、四人の妻を持てるなど、現代社会と折り合えないようなところもあり、だからこそ私達日本人は、世界の宗教の常識について学ぶ必要があるのでしょう。
・「ジハード」とは「イスラムのための努力」のこと(p78)
オイルマネーがイスラムマネー
印象的だったのは、最初の書き出しで、キリスト教で結婚式を行い、正月は神社に初詣に行き、仏式で葬式をあげるという宗教感のない日本は特殊だということを池上さんが強調していることです。日本人から見れば、一神教のキリスト教、ユダヤ教、イスラム教は盲目的に宗教を信じていることが異常に見えますが、逆から見れば、宗教がなくても治安が安定している日本が不思議に見えるのです。特にイスラム教では、盗みをしただけで腕を切り落とすという国があります。毎週金曜日に公開処刑が行われている国もあるのです。
池上さんが最後に主張しているのは、このように日本人にとって理解しにくいイスラム教ですが、産油国にはイスラム教の国が多い、オイルマネーがイスラムマネーとなって世界を動かしているという事実に注目すべし、ということであり、そのためにイスラム教とそれを信じる人たちを知ったほうがよいということです。
・ワッハーブ派は、スンニ派の一派ですが、教えは極めて厳格です・・・盗みをすれば右腕を切り落とす(p128)
ファタハとハマス
同じイスラムでもパレスチナのファタハというのは、イスラエルとパレスチナという二つの国家ができても仕方がないと考えている穏健派であり、一方ハマスは戦うべきだという過激派で幅が広いこともわかりました。
基礎の基礎という感覚の一冊で、タイトルどおり高校生から読んで違和感のない一冊でした。こうした本を読んでいるとユダヤ教徒は国を失ってもユダヤ教でまとまってユダヤ人としてのアイデンティティを守っているわけで、仮に日本が国土を失ったとしたら、日本教でまとまって、イスラエルのように国土の復活のために戦うのだろうか、などと妄想していました。
最近、国際紛争が増えてきたように感じていますので、ただニュースを聞くだけではなく、こうした本でいろいろな知識を頭に入れておくことで、自分なりの理解が深まるのではないか、と思いました。池上さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・地球上の人口76億人のうち、イスラム教徒の数は10億人以上。おそらく16億人くらい(p10)
・恵まれない人に喜捨を・・・喜捨の目安は、自分の収入の大体2%から2.5%くらいです(p89)
・イスラム世界では、結婚するときに必ず契約書を交わします・・・離婚をするときには、財産をどのように分けるか(p110)
【私の評価】★★★☆☆(78点)
目次
第1講 イスラムが世界を動かす
第2講 一神教の三つの宗教
第3講 『コーラン』とは何か
第4講 ムハンマドと『ハディース』
第5講 イスラム教徒が守るべきこと
第6講 スンニ派とシーア派
第7講 イスラム原理主義と過激派
第8講 中東問題とは
第9講 エルサレムは誰のものか?
第10講 湾岸戦争と9・11
第11講 イスラム金融が世界経済を動かす
著者経歴
池上彰(いけがみ あきら)・・・1950年長野県生まれ。ジャーナリスト、名城大学教授。1973年、NHKに入局。記者として事件や災害、消費者問題などを担当する。また1994年から11年間、「NHK週刊こどもニュース」の初代お父さん役として活躍。2005年にNHKを退職
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