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「新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方」池上 彰、佐藤 優

2017/10/19公開 更新
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新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方 (文春新書)


【私の評価】★★★★☆(80点)


要約と感想レビュー

宗教は難しい

北方領土解決を目指したために鈴木宗男とともに粛清された佐藤優と、わかりやすいジャーナリスト池上 彰の対談です。現実を伝えるジャーナリストと国際情勢を分析する外交官の対談ですので、圧倒的に分析のほうが面白い。佐藤優さんは神学の学者になろうと思ったことがあるくらいですので、宗教関係は専門的すぎてよくわからない点もありました。


例えば、イランの元大統領アフマディネジャドは、ハルマゲドンつまり世界最終戦争のときにイマームが出て来てエルサレムのイスラエル教徒だけを助ける、と確信している。そういう確信を外から止めることはできない。だからアフマディネジャドならエルサレムに核ミサイルを撃ちかねないという。このロジックはわかりません。


・カトリックのヴァチカンと中国政府の間には、いまだに外交関係がありません。何よりも司教の人事権をめぐって対立しています・・教会人事への介入は、神様の領域と世俗国家の領域を混同することですから、ヴァチカンとしても絶対に譲りません(佐藤)(p62)


帝国主義の時代

佐藤さんの認識は、現在、新しい帝国主義の時代になっているのではないか、ということです。つまり、領土的野心を武力で達成しようとする国が増えているのです。この本はロシアのクリミア侵攻直後なので、19世紀にロシア帝国がオスマン帝国が支配するクリミア半島に軍事介入したこととの類似性を池上さんが指摘しています。


佐藤さんみ、民主主義国は、極力戦争を回避して外交によって解決しようとするが、戦争をやって戦利品を獲ろうという発想をもつロシアのような国は、短期的には、戦争をやる覚悟をもっている国のほうが、実力以上の配分を得るとしています。


過去の帝国主義時代と違うのは、だれもが核兵器を入手できる可能性が高くなっているということです。まさに、アルマゲドン(世界最終戦争)が近づいているのではないかという怖い国際環境なのです。


ただ、佐藤優さんは頭が良すぎて、自分の行きたい方向に誘導しているのではないかという怖さがあるのも確かです。その点、池上さんは、ジャーナリストとしての良心があるように感じました。池上さん、佐藤さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・太平天国の乱が宗教と結びついて統制不能になったように、中国で大乱が起きるときは必ず宗教と結びつく。共産党政権は宗教によって転覆させられる危険性があるのではないかという、歴史につながる恐怖をもっているような感じがします(佐藤)(p63)


・韓国の朴 槿恵大統領からすれば、中国がいかに怖いかは自分たちが一番よく知っている、というのではないですか。ロシアやアメリカや日本は、中国の本当の恐ろしさを知らない・・歴史をふり返ると、日本と朝鮮が単独で戦争したことはないのです(佐藤)(p180)


・ウクライナ問題がなぜ解決しないのかというと、誤解を恐れずに言えば、まだ殺し足りないからです・・「これ以上犠牲が出るのは嫌だ」とお互いが思うところまで行かないと、和解は成立しないのです(佐藤)(p248)


・実は私、テレビのニュースはほとんど見ません・・家でテレビをつけるときは、CNNを流しっぱなしにしています(池上)(p233)


新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方 (文春新書)
池上 彰 佐藤 優
文藝春秋
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【私の評価】★★★★☆(80点)


目次

はじめに(池上彰)
序 章 日本は世界とズレている
第1章 地球は危険に満ちている
第2章 まず民族と宗教を勉強しよう
第3章 歴史で読み解く欧州の闇
第4章 「イスラム国」で中東大混乱
第5章 日本人が気づかない朝鮮問題
第6章 中国から尖閣を守る方法
第7章 弱いオバマと分裂するアメリカ
第8章 池上・佐藤流情報術5カ条
終 章 なぜ戦争論が必要か
おわりに(佐藤優)



著者経歴

池上彰(いけがみ あきら)・・・1950年長野県生まれ。ジャーナリスト。慶應義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。記者やキャスターを歴任し、2005年に退職。2012年より東京工業大学教授


佐藤優(さとう まさる)・・・1960年東京都生まれ。作家・元外務省主任分析官。同志社大学大学院神学研究科修了


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