【書評】なぜ共産主義者がリベラルなのか「左翼商売」森口 朗
2025/03/19公開 更新

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【私の評価】★★★★☆(87点)
要約と感想レビュー
目的達成に殺人もいとわない社会主義
左翼商売とは、社会主義者として工作活動を行い、収入を得ている人たちです。そもそも社会主義者の工作活動は、ソ連のレーニンが、資本主義国に包囲されるのを避けるために、世界に支部を造り、共産化のために政治体制を混乱させる工作活動を命じ、各支部に資金を提供した共産主義インターナショナルがはじまりです。
例えば日本共産党は、「絶対主義的天皇制打倒のためのブルジョア民主主義革命」を目指していました。日本の天皇制を潰したあとに、共産主義革命を起こそう!と多くの大学教員が、ソ連の命令という点は隠して学生を洗脳していたという。
理論面では、カール・マルクスが「暴力革命」という論法で「殺人」を正当化したことで労働者階級の心をつかみ、世界中の貧しい国にも広がりました。「革マル派」や「中核派」などの過激派が仲間同士で殺し合いするのも、目的を達成するために「暴力革命」という殺人をもいとわないのが社会主義なのです。
実際、社会主義独裁政権では、政権のイエスマン以外は犯罪者として粛清されました。ソ連のスターリンや中国の毛沢東やカンボジアのポル・ポトの指示で数千万人単位の人民が亡くなっているのです。
カール・マルクスが、「暴力革命」という名を使い「利他心」だけでなく、「殺人」欲望まで満足させる理論を発明した(p81)
格差を許さないという偽装
ところが、1990年代以降、社会主義者(左翼)にとって状況がどんどん不利になっていきます。コミンテルンの総本山ソ連は、1991年に解体してしまいました。2002年には左翼が目指す国である北朝鮮が「拉致」を認めました。最後に残った中国は、チベットやウイグルで少数民族を迫害し、日本の領土を狙っています。
そこで左翼は、「社会主義」という表現をやめて「リベラル」という名称偽装をはじめたという。
「資本家は労働者を搾取するな」と言うとバレるので「格差社会を許すな」と主張する。
「資本主義の繁栄を止めろ」と言うとバレるので「このままでは地球が温暖化する」と主張して、産業発展の邪魔をすれば、バレないというわけです。
著者が教育現場で見たのは、「日本教職員チュチェ思想研究会」という北朝鮮の金日成や金正日に学ぼうとする教員や、それを指導する大学教授でした。
さらに左翼の教育関係者は、ヤクザの実態を教えるビデオは「ヤクザの子どもがいじめられる」、北朝鮮による日本人拉致を教えると「在日コリアンの子どもがいじめられる」と言って、事実を子どもたちに教えることに反対していたという。
「共産主義者」「社会主義者」と名乗るとバカにされると思えば「リベラリスト」と詐称する(p4)
日本を貧しくすることに成功
なるほど、左翼がリベラルに偽装して工作活動を続けているという著者の仮説に基づけば、なぜ自民党が下野すると、消費税増税が決定されるのか。
なぜ、阪神・淡路大震災が起きたとき、総理大臣は自衛隊に震災被害者の救援を指示しなかったのか。
なぜ、東日本大震災の原発事故のとき、総理大臣が現場に行って原子炉のベント作業を中断させたのか。
なぜ野党はCO2を排出しない原子力に反対しながら、CO2による地球温暖化防止のために高額な再エネ買取制度を導入したのか。
なぜインフレになる前に、金利引き上げや増税するなど、デフレを継続させようとするのか。
こうした謎が、日本を弱体化させようという一つの目的に向かっているとすれば、すべて理解できるのです。
日本社会を貧しくすることに成功した。高齢者の左翼たちは、心の中でそう叫んでいる・・タワーマンションに住みながら「平等に貧しくなろう」と語った東京大学名誉教授(p21)
自治労と日教組の活動
著者は東京都職員で公立学校にも出向経験があるので、自治労や日教組の実態にも詳しいようです。自治労の組織率は7割以下で、日教組の組織率は2割近くまで低下しているという。
ところが組織率は低くなっているものの、文科省官僚の天下り先である大学は、いまだに左翼だらけだという。したがって、文科省官僚は日教組と仲良く仕事をする必要があり、日教組が少数派になっても、文科省は「学校現場を信頼する」という建前を維持したままだというのです。
日本をダメにするという成果を上げた自治労と日教組は、いまだ活動中だという。森口さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・かつて学校教育は「自民党が金を出し、共産党が教科書を造って、社会党が教える」と言われました(p3)
・左翼運動で一時期注目されたSEALsの人々を大勢輩出したのがW学園です・・自衛隊は無くなるべきだ!と言わない子は皆が「右翼だ!」と総括する図がありました(p35)
・ファシズムは社会主義の一つです・・ドイツのナチズムもソ連や中国の共産主義も、全ては社会主義の一形態であって、それらと対峙するのが自由主義です(p146)
▼引用は、この本からです
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森口 朗 、扶桑社
【私の評価】★★★★☆(87点)
目次
第1章 日本を沈没させた左翼商売
第2章 左翼は何故受けるのか
第3章 時代遅れの日本の学校
第4章 左翼商人が住む大学
第5章 本物のリベラルに期待しよう
著者経歴
森口朗(もりぐち あきら)・・・教育評論家。中央教育文化研究所代表。元東京都職員。1995~2005年まで、都内公立学校に出向経験がある。
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