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「公安調査庁-情報コミュニティーの新たな地殻変動」手嶋 龍一, 佐藤 優

2023/11/10公開 更新
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公安調査庁-情報コミュニティーの新たな地殻変動


【私の評価】★★★★★(90点)


要約と感想レビュー

公安調査庁の力量

新型コロナウイルスが猛威をふるっている2020年、生物・化学兵器に対する情報を蓄積している公安調査庁の重要性を指摘する一冊です。


公安調査庁の力量が明らかになったのは、2001年に北朝鮮の金正男が偽造旅券で日本に入国をはかり、取調べを受けた金正男事件です。金正男が成田空港に到着する数時間前に、公安調査庁に金正男の入国についての情報が入ったのです。どこから情報が入ったのかは明らかにされていませんが、MI6やモサドなどの海外の諜報機関から、日本の公安調査庁がカウンターパートとして情報交換に値する対象として見られているということなのです。


金正男事件は3日後に国外退去することで、手打ちとなりましたが、法務省、外務省は「速やかに国外退去」を求め、警察庁は「逮捕」を主張していたという。二人の意見としては、金正男を泳がせて、誰と接触するのか、何をするのか確認し、出国時に拘束して拉致事件のカードに使えばいいのではないかとしています。


公安調査庁は、金正男の入国目的は北朝鮮のミサイル輸出代金を受け取るためと結論づけていますが、二人の意見としては、多額のカネの受け渡しは北朝鮮の専門の組織があり、無理筋としています。二人の見立ては、あくまでも推測ですが、金正男がCIAと接触しており、それをイギリスのMI6が潰したというものです。ここまでくると、真実は闇の中なのでしょう。


・CIAと接触するのならば、同盟関係の日本は「安全地帯」だ・・イギリスはそこまで掴んでいて、その接触を潰すために日本に情報提供したというのも、あり得ないシナリオではありません(手嶋)(p45)


外務省は情報活動を縮小

日本の諜報組織は、内閣情報調査室、公安調査庁、外務省の国際情報統括官組織、警察の警備・公安部門、そして防衛省の情報部門で構成されています。内閣情報調査室は200名程度ですので、各諜報機関から集まってくる情報のとりまとめと分析を担っています。公安調査庁は予算150億円、人員1660人の体制で現場に切り込んで情報を収集し、内閣情報調査室に情報提供しているのです。


佐藤氏の古巣である外務省にも国際情報統括官室という諜報を扱う部署がありますが、2002年の鈴木宗男・佐藤勝事件の影響で、外務省では諜報に関わる仕事にできるだけ関わらない方針になったという。実際、2004年には、外務省国際情報局が廃止され、国際情報統括官が設置されているのです。外務省で諜報に関わる人間がいると特定の政治家と関係して政治的な問題になる可能性があるということで、外務省は諜報活動に関わらないという方針になったというのです。この点からも、公安調査庁の海外での諜報活動が重要になっていることがわかります。 


・国際情報局を格下げしてしまう。そんな愚かな国家はどこを探してもありません(手嶋)(p78)


公安調査庁の強化方法

二人の提案は、公安調査官に偽名の身分証やパスポートを発行できるよう法的な体制を整えること。また、公安調査庁の外局として、アメリカの国立医療情報センターのような感染症の専門家、ウイルスの専門家などを集めた組織を作ることです。


日本にはスパイ防止法がないなど、諜報関係の強化が求められているのだと思いました。もう少し勉強してみます。佐藤さん、手嶋さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・公安調査庁は、かつてオウム真理教が起こしたサリン事件を手がけた経験を持ち、生物・化学兵器に対する豊富な情報を蓄積している(p7)


・「内外情勢の回顧と展望」と「国際テロリズム要覧」・・公安調査庁のホームページからダウンロードできます(p96)


・情報機関というのは、基本的に自前で取ってきた情報しか、横には流しません・・他国から入手した極秘情報を第三国に提供する場合は、情報をくれた国の了解が要る(p33)


▼引用は、この本からです

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手嶋 龍一, 佐藤 優、中央公論新社


【私の評価】★★★★★(90点)


目次

第1章 金正男暗殺事件の伏線を演出した「最弱の情報機関」
第2章 コロナ禍で「知られざる官庁」が担ったもの
第3章 あらためて、インテリジェンスとは何か?
第4章 「イスラム国」日本人戦闘員の誕生を阻止
第5章 そのDNAには、特高も陸軍中野学校もGHQも刻まれる
第6章 日本に必要な「諜報機関」とは



著者経歴

手嶋龍一(てしま りゅういち)・・・外交ジャーナリスト・作家。9・11テロにNHKワシントン支局長として遭遇。ハーバード大学国際問題研究所フェローを経て2005年にNHKより独立し、インテリジェンス小説『ウルトラ・ダラー』を発表しベストセラーに。『汝の名はスパイ、裏切り者、あるいは詐欺師』のほか、佐藤優氏との共著『インテリジェンスの最強テキスト』など著書多数。


佐藤優(さとう まさる)・・・1960年東京都生まれ。作家・元外務省主任分析官。英国の陸軍語学学校でロシア語を学び、在ロシア日本大使館に勤務。2005年から作家に。2005年発表の『国家の罠』で毎日出版文化賞特別賞、翌2006年には『自壊する帝国』で新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。


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