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「悪の指導者(リーダー)論」山内 昌之 佐藤 優

2018/12/27公開 更新
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悪の指導者(リーダー)論 (小学館新書)


【私の評価】★★★★☆(84点)


要約と感想レビュー

日本国内に北朝鮮の工作員が潜伏

トランプ大統領が誕生した2017年に行われた、元外務省官僚の佐藤さんと中東・イスラム歴史学者の山内さんとの対談です。ちょうど北朝鮮の金正恩とトランプが「アメリカの老いぼれ!」「ロケットマン!」と罵倒し合っているときです。オバマからトランプへの引き継ぎでは、「一番の安全保障上の脅威は、北朝鮮である」と伝えられていました。


反日の韓国と核兵器を持った北朝鮮が一体化することがあれば、日本にとっても脅威になるのでしょう。核技術を保有している北朝鮮は「朝鮮民族は世界で最も優れた民族である」というイデオロギーを持っており、この考え方自体はそのまま韓国人に当てはまるので、危険なのです。また、山内氏の見立てでは、日本国内には北朝鮮のテロリストあるいは工作員とそのシンパが潜伏しており、仮に北朝鮮と戦争ということになれば破壊工作活動を行うことで大きな脅威であるというのです。


・在韓アメリカ人は登録しているだけで約10万人です。在韓の日本人よりもはるかに多いのです。そうした場合、もしアメリカが北朝鮮を攻撃するならば、まず在韓のアメリカ人へ出国勧告をしますが、今のところアメリカはこれを行っていません(佐藤)(p125)


民主制が絶対ではない

二人の見立ては、民主制が政治体制として絶対ではないということです。トランプにしても、プーチンにしても、エルドアンにしても、君主制に近いのではないか。二世議員が増え、富が一部の階級に偏在する状態は寡頭制に近いのではないか。世界は混乱の中でリーダーシップを期待できる政治体制を選んでいるのではないかということです。なぜなら、議会制民主主義はコンセンサスを得るために時間とエネルギーがかかるので、危機対応に弱点を持っているからです。


例えば、トランプは、キリスト教プロテスタントのカルヴァン派(長老派)です。長老派の特徴は、予定説と呼ばれる思想であり、神はあらかじめ選ばれる人と滅びる人を定めていると考えます。長老派の人は、一般的に精神面がタフで困難な状況でくじけないという。トランプは、顧問弁護士のロイ・コーンから「やられたら、容赦なくやり返す」という交渉術を学んだという。


・帝政ローマ末期の著述家・プルタコスの考え・・・ペルシア人は責任を問われない君主の独裁を選び取り、スパルタ人は度し難い貴族の寡頭政を好み、アテナイ人は混じり気なしの自治の民主政を受け入れたというのです。それぞれ失敗すると独裁政ではその無責任さが暴力を、寡頭政ではその図々しさが横柄さを、民主政ではその平等が無秩序をそれぞれ生み出すと、彼は述べていました(『モラリア』9)(山内)(p256)


習近平は中国の終身君主

その後、中国では国家主席の任期制限を撤廃する憲法改正を承認しました。習近平は中国の終身君主となったのです。一方の日本といえば、平等と絶対平和主義を掲げる一部の政党や市民活動を許容し、安全保障の法整備さえ拒否する平和ボケであると山内氏は断罪しています。


時代が独裁者を求めているのか、時代の流れなのか、見きわめていきたいと思います。山内さん、佐藤さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・イランの大国化への憧憬について歴史的に考えると、イランはシーア派大国であると同時に古代ペルシャ帝国からの歴史を持っています(佐藤)(p68)


・レーニンは、「社会主義とは何か、ソビエト権力プラス電化だ」と言ったのです。つまり「みんなのところに電気が通る」と。しかし、北朝鮮には電気の通っていないところが津々浦々あるわけです(山内)(p118)


・ウクライナ問題で西側と歩調を合わせていない国は二つあります。それはイスラエルとトルコです・・・気候上の理由で生鮮野菜はロシアで作ると非常にコストがかかります。そのため、野菜と果物はイスラエルとトルコから輸入しているのです(佐藤)(p216)


・クシュナーは正統派のユダヤ教徒であり、イヴァンカも結婚後、キリスト教プロテスタント長老派からユダヤ教へ改宗しています・・・ユダヤ教の伝統では、母親がユダヤ人でないと子どもはユダヤ人と見なされないのです(p40)


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【私の評価】★★★★☆(84点)


目次

序章 ミサイルパニックの何が問題か
第1章 歴史の「必然」が生んだ大統領 ドナルド・トランプ(アメリカ)
第2章 祖父と父の呪縛をはねのけた指導者 金正恩(北朝鮮)
第3章 歴史家にして希代の語り手 ウラジーミル・プーチン(ロシア)
第4章 軍を排除する男 レジェップ・タイイップ・エルドアン(トルコ)、終身最高指導者 アリー・ハメネイ(イラン)
終章 核を持つ北朝鮮と日本



著者経歴

佐藤 優(さとう まさる)・・・1960年生まれ。日本の作家。学位は神学修士(同志社大学・1985年)。同志社大学神学部客員教授、静岡文化芸術大学招聘客員教授。在ロシア日本国大使館三等書記官、外務省国際情報局分析第一課主任分析官、外務省大臣官房総務課課長補佐を歴任。2002年に鈴木宗男事件に絡む背任容疑で逮捕される。2005年に執行猶予付き有罪判決(懲役2年6か月、執行猶予4年)を受け東京高等裁判所、最高裁判所は上告を棄却し、判決が確定した。


山内 昌之(やまうち まさゆき)・・・1947年生まれ、歴史学者。専攻は中東・イスラーム地域研究と国際関係史。東京大学名誉教授。武蔵野大学国際総合研究所特任教授。モロッコ王国ムハンマド五世大学特別客員教授。2014年6月から「国家安全保障局顧問会議」の座長に就任。


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