「世界一豊かなスイスとそっくりな国ニッポン」川口マーン惠美
2018/12/28公開 更新本のソムリエ [PR]
Tweet
【私の評価】★★★★☆(85点)
要約と感想レビュー
スイスは日本と同じように地下資源がない
ドイツ在住30年の川口さんが、お隣スイスに日本人が学ぶべきことを教えてくれる一冊です。スイスは日本と同じように地下資源がありません。あるのは有能な国民だけ。スイスは付加価値の高い製品を作り、多国籍企業を所有し、国防を強化して中立を守り、世界からお金を集めているのです。
スイスに学ぶべきことを並べてみましょう。20歳から34歳の男子はすべてスイス軍の予備役で、予備役のいる家庭には銃があるのです。現在は、銃弾は有事のときのみ支給されますが、少し前までは、銃弾も各自が保管していたのです。また、核シェルター普及率100%です。
彼らは、中立を宣言したからといって攻撃されない保証などないということを、ちゃんと知っている。自国の国土と国民を守るためには、強い軍隊を持たなくてはならず、その結果、ようやく得られるものが平和だと考える(p146)
スイスの農業保護は直接補助金
スイスの農業保護は、1990年代から農産物が高くなる関税から、直接補助金に切り替えています。日本のように関税を高くした場合、農作物の価格は高止まりするので、農業保護は消費者が負担することになるのです。それに比べて直接補助金は、税金から捻出され、輸入品は高くなりません。物価が安いほうが国民は喜ぶということです。日本はまだ多くの農作物に関税をかけているのですが、関税で集めたお金はどうしているのでしょうか。
また、スイスでは移民に対しても厳密な枠を設け、自国民の雇用を優先しています。どこの国から何人の移民を受け入れるかという枠が詳細に定められ、一年間に発給する労働および在留許可のビザには上限が設けられているのです。加えて、人を雇うときには自国民を優遇しなければならない「スイス・ファースト」の制度もあるというのです。
わが日本は、いまごろになって本格的に外国人労働者を導入しようというわけだが、将来の問題勃発は織り込み済みなのだろうか?・・「労働力」を受け入れたつもりでいても、その「労働力」は職がなくなってもたいてい帰らない。それどころか、いずれ結婚し、子供を産み、半永久的に住み着くことになる(p180)
日本は失敗した移民や再エネを学ぶ
それにしても日本は、こうした学ぶべきことを学ばず、ドイツが失敗した移民や再エネ固定価格買取制度は学んでしまうなど、心配になります。日本では、あたかも再エネが原発を肩代わりできるように思わせる報道が行われていますが、太陽光や風力は日が照らず、風が吹かなければ、発電量は突然ゼロになるのです。再エネ固定価格買取制度と炭素税によって、ドイツの電気代はEUで二番目、2倍になってしまったのです。
このようにドイツ人が後悔している全量固定価格20年の優先買取制度まで、そっくり真似てしまったのですから、日本は大丈夫なのでしょうか。スイスでは鉄道、ホテルを整備して観光事業を強化しています。私も半年スイスで研修しましたので、スイスに学ぶべきことについては納得です。川口さん、良い本をありがとうございました。
無料メルマガ「1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』」(独自配信) 3万人が読んでいる定番書評メルマガ(独自配信)です。「空メール購読」ボタンから空メールを送信してください。「空メール」がうまくいかない人は、「こちら」から登録してください。 |
この本で私が共感した名言
・日本の貿易依存度は低い。2013年の数字を見ると、GDPに占める輸出依存度は、たったの14.5%・・これは先進国ではアメリカの9.5%に次ぐ低さだが、スイスは32.7%だ。ちなみにお隣の韓国は42.9%(p10)
・つい最近までは、スイスの家は必ず地下に核シェルターを備えなければならないという法律もあった・・世界での核シェルターの普及率は、イスラエルが100%、ノルウェーが98%、アメリカが82%、ロシアが78%、イギリスが67%、シンガポールが54%、そして日本は0.02%(p148)
・「スイス人と本当に友達になれたとしたら、それは運のいい人だね」。チューリッヒに住むドイツ人Fは、ちょっと皮肉を交えてそういった。「スイス人は礼儀正しいが、よそ者と親しくなることは滅多にないんだ」(p22)
・スイスの評判の悪さは、その物価の高さにもある。スイスでレストランに入ったドイツ人は頭を抱え、「高い!」と100回ぐらい言う・・・こんな高い物価で生活していけるというのは、それほど収入が高いのかと、少し妬みも混じる(p30)
講談社
売り上げランキング: 41,194
【私の評価】★★★★☆(85点)
目次
序 章 スイスのタクシー運転手が優しいわけ
第1章 ドイツ人とスイス人の大違い
第2章 ハイジの国は国民皆兵
第3章 貧しかったスイスが豊かになった理由
第4章 スイスの社会は日本にそっくり
第5章 実はスイスより強い日本経済
終 章 「国民の幸福度」世界1位の国なら学ぶこと
著者経歴
川口マーン惠美(かわぐち まーん えみ)・・・作家(ドイツ・シュトゥットガルト在住)。1956年大阪生まれ。日本大学芸術学部卒業後、渡独。1985年、ドイツ・シュツットガルト国立音楽大学大学院ピアノ科卒業。
この記事が参考になったと思った方は、
クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓
コメントする