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「左傾化するSDGs先進国ドイツで今、何が起こっているか」川口マーン 惠美

2023/05/19公開 更新
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「左傾化するSDGs先進国ドイツで今、何が起こっているか」川口マーン 惠美


【私の評価】★★★★☆(84点)


要約と感想レビュー

日本とドイツは似ている

ドイツ在住の川口さんは、「日本とドイツは似ている!」と言います。どこが似ていて、どこが違うのでしょうか。


まず、先の敗戦の影響もあると思いますが、日本と同じようにドイツでも軍備を持たないことが平和の条件と信じ、抑止力の軍備増強に反対の人が多いのだという。実際、メルケル第2次政権の2011年に徴兵制度が停止され、その後、軍事費は縮小されていたため、ロシアのウクライナ侵攻で防衛費を倍増することになったのです。


また、日本はエネルギーの90%を海外に依存しています。ドイツはガス55%、石炭45%、石油34%をロシアに依存していたため、ロシアのウクライナ侵攻により、ドイツのエネルギー安全保障は危機に陥ってしまいました。もし、日本もシーレーンで戦争が起きれば、エネルギーが日本に入ってこないという可能性もあるわけで、日本とドイツは平和ボケという点で似ているのです。


・緑の党の理念・・・石炭・褐炭火力発電所の廃止を2038年から2030年に前倒し(p29)


電気料金の高騰

日本とドイツでは、再生可能エネルギー買取制度によって、太陽光、風力が大量導入されてきました。この再エネは電力販売価格より高い値段で買い取られるため、その差額は賦課金という形で電気代を押し上げています。また、ドイツでは緑の党が「脱原発」を熱心に進めてきました。日本でも原発は2011年の東京電力福島第一原発の事故後、ほとんどの原発が停止し、福島と同型炉は今も停止しています。現在の電気代の高騰は、資源価格の高騰と再エネの賦課金、原子力の停止という3つの原因があるのです。


なお、ドイツでは、産業用の電気代は、産業保護や国際競争力の維持を理由に、賦課金を安く抑えています。一方の日本の産業用の電気には、家庭用と同じように賦課金を負担させられています。日本の産業の国際競争力は、大丈夫なのでしょうか。


さらに日本は欧米と同じようにガソリンエンジンの自動車を販売禁止にしようとしています。著者はこのような政治による電気自動車シフトは、自由主義経済ではなく、まさに計画経済、社会主義国家のような手法であり、経済を破壊するとして反対しています。私も同感です。


・再エネは・・発電量の増減の揺れを自分たちで調整することさえできません。もちろん、発電指令にも応じられません。つまり、原発と石炭火力を確実に代替できるのは、今のところ天然ガスしかないのです(p43)


移民・難民問題

防衛やエネルギー以外でも、ドイツでは難民を受け入れたために犯罪が増えているという。難民の一部が、売春、麻薬の取引、マネー洗浄、不法入国サポートなど国際的な犯罪網を作り上げたのです。日本でも2019年の入国管理法改正により、一定の条件を満たした外国人は、3年間住んでいれば永住が認められるようになっています。いずれ、ドイツと同じような問題が起きるはずです。


2022年にはドイツのカトリック教会の神父たちが、子どもたちに長年にわかり性的虐待を行っていたことが告発されました。日本でもジャニーズ事務所のジャニー喜多川氏が、所属していた少年に性的虐待をしていたことが告発されています。本当にドイツと日本は似ていますね!川口さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・SDGs・・理屈としては正しく美しいので、絶対に誰も逆らえない。だから、投資を得て、利益を出すためには、皆が自分たちの活動をグリーンに見せようと、いきおい、どこもかしこもかなりこじつけの多い話となります(p10)


・自由にものが言えない・・気候温暖化の信憑性について疑問を呈しただけで、フェイクを垂れ流した廉(かど)で・・ツイッターのアカウントを停止されてしまう(p11)


・今のドイツには「早急に行動しなければ、地球は人間の住めない惑星になる」と本気で信じている人が、大人にも子供にも少なくありません(p40)


▼引用は、この本からです
「左傾化するSDGs先進国ドイツで今、何が起こっているか」川口マーン 惠美
川口マーン 惠美 、ビジネス社


【私の評価】★★★★☆(84点)


目次

第1章 3党連立政権でさらに左傾化するドイツ
第2章 メルケル政権からドイツの左傾化が始まった
第3章 脱原発と再エネで破綻するドイツのエネルギー政策
第4章 電気自動車へのシフトに見るドイツの社会主義国ぶり
第5章 コロナ禍で浮き彫りになった言論の不自由
第6章 左派勢力による行き過ぎた平等志向
第7章 LGBTが揺るがすドイツの価値観
第8章 過剰な人道主義がドイツの難民政策を誤らせた
第9章 軍隊嫌いなドイツ人は本当に転換するか
第10章 ポピュリズム政治で失われる経済合理性



著者経歴

川口マーン惠美:(かわぐち まーん えみ)・・・作家(ドイツ在住)。日本大学芸術学部卒業後、渡独。1985年、シュトゥットガルト国立音楽大学大学院ピアノ科修了。著書に、『移民 難民 ドイツ・ヨーロッパの現実 2011-2019』(グッドブックス)、『そしてドイツは理想を見失った』(角川新書)、『ヨーロッパから民主主義が消える』(PHP新書)ほか多数。2016年、『ドイツの脱原発がよくわかる本』(草思社)で第36回エネルギーフォーラム賞・普及啓発賞、2018年、『復興の日本人論』(グッドブックス)で第38回同賞・特別賞を受賞。


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