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「安岡正篤と終戦の詔勅」関西師友協会

2023/05/18公開 更新
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「安岡正篤と終戦の詔勅」関西師友協会


【私の評価】★★★☆☆(78点)


要約と感想レビュー

敗戦の詔勅を書いた人はだれなのか

太平洋戦争敗戦のいわゆる玉音放送の詔勅「朕は時運の趨く所 堪へ難きを堪へ忍び難きを忍び 以て万世の為に太平を開かむと欲す」は、どのようにして作られたのか、整理した一冊です。詔勅作成の経緯として事実に近いのは、詔勅の原案を執筆したのは漢学者の川田瑞穂氏で、それを迫水(さこみず)書記官長が浄書して詔書作成原案とし、それを安岡正篤氏が添削したという。その後、各省が内容をチェック・修正して、閣議決定され、御署名原本に天皇のご署名をいただいたのです。


安岡正篤氏は中国相手に敗戦したものの、中国の古典に則って中国人が驚嘆するような言葉を詔勅に入れたいと智慧をしぼったという。そして降伏という表現を使わず、あえて宋学「近思録」から引用する形で「萬世の為に太平を開かんと欲す」という言葉を入れたのです。


・安岡先生は、私が「永遠の平和を確保せんことを期す」と書いていた部分について・・この万世のために太平を開くという言葉をそのままお使いなさい」といわれた(迫水)(p91)


安岡正篤氏が激怒していること

安岡正篤氏が激怒しているのは、安岡氏が原案に入れた「義命の存する所」を誰が修正したのか明確ではありませんが、「時運の趨く所」と修正されてしまったことです。敗戦のばたばたした中で時間もなく、安岡氏の反対にもかかわらず、修正されたまま最終版となってしまったという。


「義命の存する所」の意味は、戦に負けたから降参するのではなく、天皇の信義に基づいてやめるのだ。だから道義の至上命令という意味の「義命」という言葉を使ったというのです。しかし、「義命」は聞いたこともない言葉で、国民が理解できるはずがないという理由で、「時運の趨く所」に修正されたのです。ところが、「時運の趨く所」では、調子が悪くなったから降参するということで、天皇陛下の良心、哲学など何もないではないか、ということで安岡氏は激怒しているのです。


・道義の至上命令と言って「義命」という言葉がある。義命の存するところ、これで戦をやめると(p55)


国家の指導者の重要性

敗戦後、安岡先生は「大正以来、今日の如き事がないようにと心配して、軍閥の横暴、政治干与を警告して来たのに、遂にこの悲痛事に遭遇し、真に残念な気がする」と申されたという。その後、日本は朝鮮戦争という偶然もありましたが、ドイツのように奇跡の経済復興を果たすことができました。しかし、あの敗戦を防げたのではないか、と考える人は多いのではないでしょうか。


ロシアのウクライナ侵攻などを見ていると、やはり国家の指導者というものが重要であると感じました。国家の指導者が間違うと、国民一人ひとりがいくら頑張ってもどうしようもないのです。関西師友教会さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・玉音放送・・ポツダム宣言の概略・・天皇及び帝国政府の統治権が連合軍各国司令官に<従属する>との表現は<の下におかれる>とぼかした形で紹介された(p70)


・20年9月2日の調印の「停戦協定」(米国側は此れを故意に「降伏文書」と呼んだ)(p71)


・「近思録」は宋学の最良の入門書として我が国でも早くからよく読まれたもので、昭和15年には秋月胤継(あきずきかずつぐ)の訳注本が岩波文庫に収められ・・(p119)


▼引用は、この本からです
「安岡正篤と終戦の詔勅」関西師友協会
関西師友協会、PHP研究所


【私の評価】★★★☆☆(78点)


目次

1 安岡正篤先生の横顔と、終戦のころの活動の様子
2 日本農士学校に送った書簡
3 終戦の詔書(御署名原本)
4 安岡正篤、終戦の詔勅についての講話―昭和三十七年一月十七日郵政省会議室にて
5 「終戦の詔書」成立の舞台裏―安岡正篤の寄与を焦点に
6 父・安岡正篤の無念
7 終戦と安岡先生
8 資料編



著者経歴

関西師友教会・・昭和32年3月に発足し、平成29年に60周年を迎える。安岡正篤先生の教学に学び、日本を明るくするために一燈照隅、萬燈照国を目標とする。東洋の精神、文化、伝統を尊重し、師と友との交わりのなかで、人格、教養を高め、時局を正しく生き抜こうとする同志、同行の集まり


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