人生を変えるほど感動する本を紹介するサイトです
本ナビ > 書評一覧 >

「無邪気な日本人よ、白昼夢から目覚めよ」川口マーン惠美

2021/07/08公開 更新
本のソムリエ
本のソムリエ メルマガ登録[PR]

「無邪気な日本人よ、白昼夢から目覚めよ」川口マーン惠美


【私の評価】★★★★☆(87点)


要約と感想レビュー

 ドイツから「このままでは日本の未来は暗い」と警鐘を鳴らす一冊です。日本は東日本大震災後に、EUに追随して再エネ固定価格買取制度を導入しました。ドイツ在住の著者が教えてくれるのは、ドイツでは再エネの大量導入の結果、電気料金が2倍近くになっているという。著者はそれまで日本が目指していた安価で安定した電力供給を捨てて、高価で不安定な再エネの買取制度をEUに追随して採用したことにショックを受けているのです。


 トヨタ自動車の豊田章男社長も、2030年代に自動車の電動化がいかに困難であるかということを示し、カーボンニュートラルの非現実性に警鐘を鳴らしています。ちなみに、ドイツでは産業用は再エネ賦課金の除外規定があるので、それほど製造業への負担は少ないのです。ちなみに、2008年にノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマンは、医療、教育、電力は自由化してはいけないと主張していることもこの本では教えてくれるのです。


・「再エネでグリーン社会の実現を」という空気を、じわじわ作り上げようとしています・・・日本経済の健全な成長を考えるなら、政府はまず安価な電力の安定供給を第一に掲げるべき・・・政治家がメディアと一丸になって、EUに追随していく姿には、戦慄を覚えます(p125)



 日本の安全保障に目を向けると、ドイツでは難民にイスラムのテロリストが紛れ込んで、テロを実行しました。日本では難民が溢れる状況ではありませんが、北海道や新潟県の佐渡島、沖縄や奄美黄島、長崎県の五島列島などで、主に中国人によって土地が購入されているという。


 尖閣諸島はすでに中国の海警によって、毎日警備されている状況にあります。尖閣諸島近海に、中国海警の船が張り付いており、日本の漁船が尖閣に近づくと追いかけるので、その間に日本の海上保安庁の船が入って、日本漁船への攻撃を阻止しているのです。ちなみに、海上保安庁は国土交通省の外局で、国交省の大臣は公明党の定位置となっているのです。日本には、「ウイグル人やチベット人は抵抗するから犠牲が膨らむ。なるべる相手の意思を尊重して行動すれば、平和は保たれる」と主張する人も存在しているのです。私たちの将来は大丈夫なのでしょうか。


 ウクライナのクリミアでは、ロシアの武装勢力によって議会が占拠され、住民投票という形でロシアに併合されました。それを左側で見守っているドイツは、実はロシアからの天然ガス輸入は、全輸入量の3割以内に抑えるとしていましたが、現在、すでにほぼ4割だというのです。エネルギーセキュリティ、領土、難民認定については諸外国の例を見ながら厳格に運用していくべきなのでしょう。


・おそらくまず、最初に起こるのは、日本が朝鮮半島と中国からの難民で溢れかえることです(p6)


 エネルギー問題については私の専門ですので、かなり正確に記述していることに驚きました。日本にいては見えないことが外国に住んでいると見えるということなのでしょうか。いずれにしろ変化の大きい時代であり、今の舵取りが日本の運命を大きく変えるタイミングにあるようにかじました。


 エネルギー、国境管理、国際政治などレベルの高い問題だけに、政治家と官僚の皆さんに期待する部分が大きいのですが、私たち個人も現実はどこにあるのか知る努力を続ける必要があるのでしょう。川口さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・基本的に、水素を電源にするということは、電気を水素に変え、水素をまた電気に変えるという二度手間で、その間に多くのエネルギーが失われます(p116)


・外国人の医療保険のグレー利用・・・荒川区では2018年、住民の人口比では中国人は約3%なのに、海外医療費の支払い件数に占める中国の割合は37.5%・・・扶養者の医療費を保険で支えること自体に異議を唱えるつもりはありませんが、問題は、外国でどんな医療がなされているのか・・(p72)


・中国が反対することをやれ!・・・中国は、六ケ所村の再処理工場に対して、ずっと危惧の念を表明しています(p215)


▼引用は、この本からです
「無邪気な日本人よ、白昼夢から目覚めよ」川口マーン惠美


【私の評価】★★★★☆(87点)


目次

第一章 国防意識と危機感が欠如した日本人
第二章 「日本の国土、売ります」でいいのか?
第三章 奪われる寸前の尖閣
第四章 「移民」と「難民」の相違に無頓着
第五章 誰も予想できなかった電力の逼迫・ブラックアウト
第六章 黙殺された豊田章男社長の正論
第七章 カーボンニュートラルと地球温暖化危険論の問題点
第八章 エネルギー政策はドイツを見習うな
第九章 電力自由化の罠にはまるな
第十章 日本の独立には原発が必要
第11章 原子燃料サイクルは国家戦略
第12章 「武装中立」「原発維持」のスウェーデンを見習え
第13章 したたかなカーボンニュートラル戦略を



著者経歴

 川口マーン惠美(かわぐち まーん えみ)・・・1956年大阪生まれ。作家、ドイツ・ライプツィヒ在住。日本大学芸術学部卒業後、渡独。1985年、ドイツ・シュツットガルト国立音楽大学大学院ピアノ科卒業。シュツットガルト在住。


にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村へ


この記事が参考になったと思った方は、
クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓ 


人気ブログランキングへ


メルマガ[1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』]
3万人が読んでいる定番書評メルマガです。
>>バックナンバー
登録無料
 

<< 前の記事 | 次の記事 >>

この記事が気に入ったらいいね!

この記事が気に入ったらシェアをお願いします

この著者の本


コメントする


同じカテゴリーの書籍: