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「住んでみたヨーロッパ 9勝1敗で日本の勝ち」川口マーン惠美

2016/12/12公開 更新
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住んでみたヨーロッパ 9勝1敗で日本の勝ち (講談社+α新書)


【私の評価】★★★☆☆(79点)


要約と感想レビュー

ヨーロッパの治安悪化

ドイツに30年住んできた川口さんにヨーロッパの様子を教えてもらいましょう。ヨーロッパというと先進国というイメージですが、住んでみると違いもあるのです。


例えばドイツでは、ワイマール憲法に教会が税を徴収する権利が含まれており、今でも教会が税を徴収しているという。また、日本のように盗まれた財布が戻ってくることはまずないし、泥棒も多い。最近は、移民が増えてきて治安が悪化しているようです。


ポーランドに行くと友人にいったら、即座に「車、盗まれるわよ」という答えが返ってきた(p18)

ヨーロッパでは階級闘争

面白いところは、ヨーロッパの人の考える平等と日本人の考えるの平等が違うというところです。日本人は全人類が平等と考えていますが、ヨーロッパでは階級闘争や奴隷制度の名残があり、日本人にはなじみにくいチップの習慣も階級制度の影響があるらしいのです。


なぜなら、欧米の場合、近隣諸国とは陸続きで戦争続きで、古代より近世まで負けた国の人間は奴隷とされたのです。日本ではせいぜい士農工商であり、今では官農工商でしょうか。


イギリス政府が奴隷制度を廃止したのは1833年のことで、このとき、2000万ポンドもの賠償金が支払われた。誰に支払われたかというと、奴隷制度廃止のせいで不利益を被った奴隷のオーナーたちに、である(p138)

ヨーロッパと日本の歴史を学ぶ

著者は「日本では馬肉を生で食べる習慣があります」といったら、ドイツ人の視聴者は腰を抜かしたという。日本人は、魚だけでなく、馬まで生で食べるとんでもない民族というわけです。


30年住んでみてわかることがあるのでしょう。歴史を学んでわかることもあるのでしょう。背景の違う人たちと一緒に仕事をする、暮らすというのは大変ですね。川口さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・原爆を落とした相手のことも恨まない。過去に執着せず、すぐに前向きになることが日本人の強みでもある。落としたアメリカ人にしてみれば、なぜ怒らないのか、薄気味悪いかもしれない(p112)


・13世紀ごろより、東ヨーロッパからバルト海沿岸にかけての異教の土地で、キリスト教の布教という名のもと、ドイツ騎士団による侵略が行われたが、これはまさに殺戮に次ぐ殺戮であった(p106)


・特に、イギリスが行ったアヘン戦争は、非道という点では、右に出るものがないのではないか。しかし、アヘン戦争に関しては、中国はイギリスにもっと食いつけばよかったのに、なぜか、さっさと水に流してしまった(p146) 


住んでみたヨーロッパ 9勝1敗で日本の勝ち (講談社+α新書)
川口 マーン 惠美
講談社
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【私の評価】★★★☆☆(79点)


目次

序 章 劣化するパリ・フランクフルト・ウィーン、斬新な東京
第1章 泥棒天国ヨーロッパ
第2章 エアロビのできないドイツ人
第3章 不便をこよなく愛すノルウェー人
第4章 「移民天国」「難民地獄」のヨーロッパ
第5章 スペインの闘牛と日本のイルカ漁
第6章 ケルンの地下鉄建設と池袋の道路工事
第7章 日本の百倍ひどいヨーロッパの食品偽造
第8章 日本的になったドイツの宗教事情
第9章 歴史の忘却の仕方――ヨーロッパとアジア
第10章 奴隷制度がヨーロッパに残した「遺産」
第11章 瀕死のオペラ、隆盛な歌舞伎
第12章 同性愛者が英雄になるヨーロッパ
第13章 古代ローマ帝国とEUの深い関係



著者経歴

川口マーン惠美:(かわぐち まーん えみ)・・・作家(ドイツ在住)。日本大学芸術学部卒業後、渡独。1985年、シュトゥットガルト国立音楽大学大学院ピアノ科修了。


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