「大日本史」山内 昌之 佐藤 優

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大日本史 (文春新書)

【私の評価】★★★★☆(87点)


■黒船来航から太平洋戦争敗戦までの
 日本の歴史について、
 山内東大名誉教授と佐藤元外務省主任分析官が
 語り合った一冊です。


 明治維新から大日本帝国の形を作り上げ、
 日清、日露戦争に勝ちながらも
 日中戦争、日米太平洋戦争の負け戦に
 入り込んでしまう。


 お二人の議論を聞きながら
 日露戦争勝利から日本の軍隊組織が
 おかしくなっていったように感じました。


・すでに航空兵力の時代に入っていたのに、
 「大和」「武蔵」といった巨大戦艦の建造に注力する・・
 「大和」の建造が逆説的に証明しているのは、
 当時の日本には世界を制覇するといった発想が
 存在していなかったことですね。「大和」は大きすぎて、
 当時のパナマ運河を通れませんでした(p116)


■面白いところは、山内先生は
 歴史の事実から当時の思想を
 拾い出して評価しているところでしょう。


 たとえば、「大和」は当時のパナマ運河を
 通れなかったので、日本には大西洋まで
 覇権を広げるという思想はなかった。


 天皇の命令によって動くべき関東軍を
 勝手に動かした司令官・本庄繁を
 天皇の侍従武官長にした陸軍は、
 天皇を舐めていた。


 歴史的事実から、当時の責任者の
 思考レベルを推察しているのです。


・二・二六事件の時の侍従武官長だった
 本庄繁の振る舞いです・・
 この本庄は満州事変の時の
 関東軍司令官で、奉勅命令によって
 動くべき軍隊を私に動かし、
 朝鮮軍の越境を依頼する結果になったのです・・
 天皇の意思を踏みにじった軍人が、
 侍従武官長を務めていたことになる。
 これが昭和陸軍の特性をいちばんよく
 物語っている(p198)


■イスラム、中東政治の専門家である
 山内先生がこれだけの
 知識を持っているのはすごい。


 そして、山内先生と対等に
 インテリジェンス業界の話を添える
 佐藤元分析官もすごい。


 そして歴史はこれだけ面白く、
 学ぶべきことだと感じました。
 まだまだ読んでいきます。


 山内先生、佐藤さん
 良い本をありがとうございました。


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■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・大西洋横断ケーブルができたのが1866年。
 1870年にはインド洋海底ケーブルも設置され、
 1871年には長崎が香港・上海経由で
 国際電話網に接続している・・
 日本は日英同盟によって、このネットワークの
 恩恵を享受することができたのです(p104)


・第一次大戦の発端には、東ヨーロッパにおける
 スラブ主義の問題が背景にありますね・・・
 オーストリア=ハンガリー帝国は台頭する
 スラブ民族運動に頭を悩ませていました。
 隣のスラブ人国家セルビアでは、
 セルビア人の多いボスニア・ヘルツェゴビナなどの
 帝国南西部を吸収せよ、という大セルビア主義が
 盛んになっていたからです(p137)


・二・二六事件の翌年、昭和十二(1937)年の七月には
 盧溝橋事件が勃発、日中戦争が始まります・・・
 多田(駿)が戦線拡大に断固反対し、蒋介石との
 和平交渉継続を訴えたのです。それに対し、
 和平工作の打ち切りを主張したのが外務大臣だった
 広田弘毅でした。城山三郎の『落日燃ゆ』による
 広田の描き方は、何かにつけて美しすぎて
 疑問点が多い(p182)


・大島(浩)の推進した日独同盟路線こそ、
 日本の国運を大きく誤らせた、
 日本外交最大の失敗のひとつでしょう。
 そもそもアジアの海洋国家たる日本が、
 はるか遠くに離れた欧州の大陸国である
 ドイツと提携して、何の利益があるのか(p190)


・「帝国国策遂行要領」・・天皇はこれではおかしい、
 外交が主で戦争は従とすべきだと指摘していますが、
 この正論が通じない・・・この議論の間、
 陸軍の杉山元参謀総長も、海軍の永野修身軍令総長も
 おそらく言質を取られまいと沈黙を続けているんです・・・
 杉山は下からは「ボケ元」「グズ元」と
 呼ばれていました(p203)


・昭和天皇は、開戦前に、佐藤さん御指摘の
 戦争終結の問題に心を砕いているんですね・・
 職業軍人や政治家、外交官こそが知恵を
 振り絞るべき問題を、天皇が悩み、考え、
 訴えている状況はまさに悲劇的です(p205)


・ヤルタ会談で、ソ連の対日参戦の密約が交わされていた・・・
 しかもこの密約については、在スウェーデン公使館の
 駐在武官だった小野寺信少将が情報を入手、
 参謀本部に送っていたのに無視されてしまった・・・
 岡部伸氏の『消えたヤルタ密約』によると、
 小野寺の情報が参謀本部第二部(情報)に
 届いたのですが、第一部(作戦課)にいた
 瀬島龍三が握りつぶしたといいます(p212)


・終戦を決めた八月十四日・・梅津美治郎参謀総長、
 阿南惟幾陸軍大臣、豊田副武軍令部総長による
 抗戦の主張を聴いた後、昭和天皇は戦争終結の
 決意に変わりはないこと・・を語ったのです・・・
 この部分を読んだとき、私の胸には、これを天皇に
 言わせた軍部に対する怒りが改めてむらむらと
 こみあげてきました。自分たちの不始末で戦争を
 始めておきながら、その収束は天皇に任せる。
 戦争に負けた事実を自分たちが認めたくないから、
 天皇に終戦を語らせたわけです(p213)


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■目次

第1回 黒船来航とリンカーン
第2回 西郷と大久保はなぜ決裂したのか
第3回 アジアを変えた日清戦争、世界史を変えた日露戦争
第4回 日米対立を生んだシベリア出兵
第5回 満州事変と天皇機関説
第6回 二・二六事件から日中戦争へ
第7回 太平洋戦争 開戦と終戦のドラマ
第8回 憲法、天皇、国体



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