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「武漢コンフィデンシャル」手嶋 龍一

2022/09/16公開 更新
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「武漢コンフィデンシャル」手嶋 龍一


【私の評価】★★☆☆☆(69点)


要約と感想レビュー

 新型コロナウイルス(武漢ウイルス)のほぼ実話小説かな?と手にした一冊です。読み始めてみると、ちょっと新型コロナの背中が見える程度のスト-リーでした。在香港イギリス総領事館の外交官でMI6の秘密情報部員でもある主人公が、香港の競馬場に登場します。主人公はそこで大量の馬券を買う壮麗な美女と出会ったのです。この女は何者なのでしょうか?


 その頃の香港は、中国の政治介入により中国が人事権を持つ「指名委員会」が設置されることとなり、「一国二制度」は有名無実となりそうな情勢となっていました。こうした習近平政権の民主派排除の動きに対して、香港の若者はデモ隊で道路を占拠していたのです。騒然とする香港とそこに現れた壮麗な女性に興味をもった主人公は、彼女が香港のレストランオーナーであり、マダム・クレアと呼ばれていることを知ることになります。


・香港・・警官たちは極小のハンディカメラで・・若者の顔を撮影した。「非愛国者リスト」に載せるのだろう。彼らはいつか当局の報復を受け、進学や就職で不利益を被るはずだ(p229)


 主人公は、マダム・クレアに接近し、マダムの資金の流れを追うことで、マダム・クレアが競馬やカジノで資金洗浄をしていることを知ります。そしてその資金はスイス銀行を経由して、コロナウイルス関係の研究だけに資金を供給していたのです。マダム・クレアはコロナウイルスによって、何をしようとしているのか。


 ネタバレにならないようストーリーはこれくらいにしておきますが、面白いのは、オバマ政権がウイルス研究を凍結したこと。そのため、アメリカは中国に資金を提供して、コロナウイルスの研究を続けていたということでしょう。オバマ政権まではアメリカは中国とコロナウイルスの機能獲得の研究を習近平政権下の武漢病毒研究所に委託研究していたのです。新型コロナウイルス(武漢ウイルス)が武漢で発生した背景を示唆しているのでしょう。


・オバマ政権は・・ウイルスの機能獲得研究を凍結しましたが、中国側に委ねることで、研究自体はいまも続けている(p321)


 同時多発テロの後、連邦議会や米メディアに炭疽菌を送り付けた事件がありました。2014年にはアメリカNIH(国立衛生研究所)内で、冷蔵庫の中から生きている「天然痘ウイルス」が見つかったこともあります。ウイルスの問題は、いつでも起きる可能性があるということです。


 ただ、ロシアがウクライナに侵攻し、中国の台湾侵攻が危惧される中、香港とコロナウイルスをネタにしたこのストーリーのインパクトが思ったより強くないことに自分でもびっくりしました。現実のほうが小説よりもスリリングで驚きを与えてくれるのです。手嶋さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・イギリス国防省も、スコットランドのグリュナード島で爆弾に炭疽菌をつめて散布するエアロゾル実験を密かに行っていた(p23)


・現在、攻撃用生物兵器を開発している国は、リビア、北朝鮮、イラク、台湾、シリア、ロシア、イスラエル、イラン、中国など(p246)


・ミャンマー北端に位置するチャイントン・・・から中国国境に近いモンラー・・ミャンマー民族民主同盟軍という中国系の反乱組織が完全に牛耳っている(p282)


・「キクガシラコウモリこそSARSウイルスの自然宿主である」・・・石博士は著名な科学誌「ネイチャー」に論文を発表した。・・武漢病毒研究所に戻って、コウモリ由来のコロナ系ウイルスの研究一筋に打ち込んできた(p298)


▼引用は、この本からです
「武漢コンフィデンシャル」手嶋 龍一
手嶋 龍一、小学館


【私の評価】★★☆☆☆(69点)


目次

第一部 禁断の扉
第二部 マダム・クレアの館
第三部 蝙蝠は闇夜に飛び立つ
第四部 約束の地



著者経歴

 手嶋 龍一(てしま りゅういち)・・・1949(昭和24)年、北海道生れ。外交ジャーナリスト・作家。冷戦の終焉にNHKワシントン特派員として立会い、FSX・次期支援戦闘機の開発をめぐる日米の暗闘を描いた『たそがれゆく日米同盟』を発表。続いて湾岸戦争に遭遇して迷走するニッポンの素顔を活写した『外交敗戦』を著し、注目を集める。2001(平成13)年の同時多発テロ事件ではワシントン支局長として11日間にわたる昼夜連続の中継放送を担った


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