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「ナニワ・モンスター」海堂 尊

2020/04/19公開 更新
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【私の評価】★★☆☆☆(69点)


要約と感想レビュー

 伝播力の強い新型インフルエンザ・キャメルが、関西地域で蔓延してしまったという設定の小説です。今、だれでも知っているPCR検査や致死率やワクチンなどの用語が出てきます。この小説では新型インフルエンザは弱毒性にもかかわらず、マスコミの報道により蔓延した地域経済が破綻してしまいます。


 感染症が恐ろしいのは、それほど人が死ななくても、自粛により経済がストップしてしまうことです。この本でも(新型インフルエンザ)キャメルで死者が17人出たことで大騒ぎとなり、経済破綻しています。実は一般市民もマスコミも、毎年結核で2000人が死んでいることを理解できないのです。


・季節性インフルエンザの死者は毎年相当おる。2003~2004年のシーズンには2400人、2004~2005年には1万5千人が死亡している・・・それと比べたら新型のキャメルは、蔓延してる国でさえ死者が100人台で、弱毒性疾患なのは明らかや。なのになんでこんな大騒ぎするんか、不思議や(p74)


 つまり、新型コロナウイルスと同じように、死者数がそれほど多くなくても感染力が強い感染症に対して移動制限やロックダウンなどの過剰な経済活動を制限することで、人を殺さないかわりに経済を殺してしまうということが予想されるのです。


 そしてワクチンができれば、その副作用をマスコミがクローズアップするのも織り込み済みです。マスコミは数人のワクチン副作用被害者を大切にして、ワクチンを打たないことで死亡する数百人のことは関係ないのです。マスコミを扇動してワクチン接種をやめさせよう世論操作するグループが存在するのです。


 後半は検察と官僚の関係や、新型インフル対策の地域封鎖をテコにして中央集権を否定する道州制まで飛び出して、話は混乱していきます。感染症のアウトブレイクで都市のロックダウンをストーリーに入れたのは慧眼だと思いました。


 当時はコロナウイルスよりもSARSやMARSのような新型インフルエンザが脅威であったということなのでしょう。先見の明がものすごいと思いました。海堂さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・厚生労働省から新型インフルエンザ・キャメルに対するPCR検査は、渡航歴のある患者に限るという事務連絡があったそうや。役人連中は、キャメルは日本に入ってきてないという建前で検査法を適用しとる。日本国内にないから、調べるのは渡航歴のある人間に限定するわけや(p80)


・先ほど本省の方針が決定されたのでお伝えします。この診療所を閉鎖しキャメル患者隔離施設として転用せよという、事務連絡第313号です・・・当該地域でいきなりキャメル発生などと明らかにすれば大混乱になります。とりあえず情報は秘匿する方向で、との指示です(p96)


・これが致死率80%を超えるエボラ出血熱や、先年流行の兆しが見られた致死率10%の鳥インフルエンザの変種、SARS(重症急性呼吸器症候群)に対する反応なら納得できる。だが今回の新型インフルエンザ・キャメルは弱毒性らしい。ならば対応は普通の季節性インフルエンザに準じればいい(p105)


・ゴールデンウィーク、修学旅行のキャンセルが相次ぎ、ホテルの客室稼働率は限界線を切り、浪速市の観光関連産業は危機的状況となった・・人が来ないということはそれだけ地域経済に深刻なダメージが与えられている、ということだ(p113)


・ひたすら腹囲測定でデブ狩りを行ない、メディアも一緒になって囃し立てた。ですがメタボ検診というデブ狩りで日本国民の健康状態は向上しましたか?(p325)


▼引用は、この本からです。

海堂尊 、新潮社


【私の評価】★★☆☆☆(69点)


目次

第一部 キャメル
第二部 カマイタチ
第三部 ドラゴン
終章 両雄並び立たず



著者経歴

 海堂 尊(かいどう たける)・・・1961(昭和36)年、千葉県生れ。医学博士。外科医、病理医を経て、現在は重粒子医科学センター・Ai情報研究推進室室長。2005(平成17)年、『チーム・バチスタの栄光』で「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、翌年、作家デビュー。2008年、『死因不明社会』で、科学ジャーナリスト賞受賞


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