【書評】「セゾン 堤清二が見た未来」鈴木哲也
2020/04/18公開 更新

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【私の評価】★★★☆☆(72点)
要約と感想レビュー
セゾングループとは
私の学生時代は西武池袋線の江古田に住んでいたので、西武百貨店にはお世話になりました。西武百貨店を中心とするセゾングループには、なんと無印良品、ファミリーマート、パルコ、西友、ロフト、吉野家、J-WAVE、チケットセゾン、サホロリゾート、タラサ志摩などがあったのです。
例えば、今、勢いのある「無印良品」は、スーパー大手である西友のPB(プライベートブランド)としてスタートしているのです。この本ではセゾングループの勃興と解体の歴史を振り返ります。
無印良品は、スーパー大手である西友のPB(プライベートブランド)としてスタート(p9)
セゾングループの勃興
バブルの好況に乗ってセゾングループは拡大を続けました。そうした中で海外ブランド導入、無印良品というプライベートブランド立ち上げ、カード事業とチケット事業、百貨店ではなく街を作るというコンセプトは斬新だったといえるのでしょう。
例えば、西武百貨店が主導してフランス系のエルメスやイヴ・サンローランを導入しました。伊藤忠商事と共同でイタリアのジョルジオ・アルマーニ日本法人を設立、米ポロ・ラルフローレンの日本法人も、西武百貨店の子会社として発足しているのです。
また、「チケットセゾン」は西部クレジットをカード会社として成長させつつ、自前でチケット事業を立ち上げたものです。堤清二は『これからの時代』はカードとリザベーションと言っていたという。
チケットセゾン・・・堤(清二)さんは『これからの時代』というキーワードの中で、カードとリザベーションという言葉を使っていました(p99)
セゾングループの解体
セゾングループは、1987年に客室数は80程度と小ぶりな超高級ホテル西洋銀座を開業しました。長期滞在型リゾートとしてサホロリゾートも開発しています。時代を先取りしていましたが、今、考えると早すぎたのかもしれません。
また、日本興行銀行は、堤清二にヒルトンホテルチェーンの米国以外の国際事業を買収することを持ちかけ、日本長期信用銀行はインターコンチネンタルホテルの買収を提案していました。最終的に、セゾングループはインターコンチネンタルホテルの買収するのです。
セゾングループを解体に導くのは、ノンバンクの東京シティファイナンス(TCF)と西洋環境開発です。この2社の負債の返済のために、良品計画やファミリーマート、吉野家など、優良なグループ企業の切り売りし、セゾングループは解体していったのです。
運が悪かったのか、調子に乗ってしまったのか。セゾングループの良い面も悪い面も受け止めざるをえないのが、経営者なのでしょう。経営者は企業が永続するために最低限の「怖さ」を持っていないといけないのだと感じました。鈴木さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・西部池袋本店の増築・・・1982年には、現代のデパ地下の先駆けとなる、「食品館」がオープンした。約41億円を投じて、新たな食のライフスタイルに対応する試みだ(p84)
・「つかしん」の中に西武塚新店が入る構図・・・「店をつくるのではなく、街をつくれ」堤はそう宣言した(p101)
【私の評価】★★★☆☆(72点)
目次
一章 無印良品
一節 ロンドンで感じた違和感
二節 西友と堤からの「独立」
三節 今は無印を、僕たちが解釈している
二章 西武百貨店
一節 革新は、いつも逆境から
二節 セゾンが文化を"民主化"した
三節 挫折の連続の中に先見性
三章 パルコ
一節 幻の「銀座パルコ」
二節 パルコの流転と堤の戦い
三節 アニメ文化に宿るDNA
四章 専門店
一節 ロフトを生んだ堤のひと言
二節 リブロの静かな誇り
三節 堤の理念、継承者たちの奮闘
五章 ホテル・レジャー
一節 異母弟・猶二が見た清二の夢
二節 「共犯」だった銀行が豹変
三節 西武の原点とグループ解体
六章 チェーンオペレーション
一節 吉野家買収の慧眼(けいがん)と矛盾
二節 西友、「質販店」の憂鬱(ゆううつ)
三節 ファミリーマート、誤算の躍進
七章 人間・堤清二
一節 「お坊ちゃん」が学んだ大衆視点
二節 避けられなかった「裸の王様」
三節 堤が遺したメッセージ
「あとがき」
著者経歴
鈴木哲也(すずき てつや)・・・日本経済新聞編集委員。1969年生まれ。93年早稲田大学法学部卒業、同年日本経済新聞社入社。小売りやメーカー、サービスなど消費関連ビジネスを中心に取材してきた。2003年から07年は、米州総局(ニューヨーク)で、ウォルマートなどの企業取材を担当。日経ビジネス副編集長や日経MJ編集長、企業報道部長などを経て、2023年から現職
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