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「たそがれゆく日米同盟―ニッポンFSXを撃て」手嶋 龍一

2010/01/09公開 更新
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たそがれゆく日米同盟―ニッポンFSXを撃て (新潮文庫)


【私の評価】★★★☆☆(71点)

要約と感想レビュー

 F2支援戦闘機といえば、名古屋空港で配線ミスで墜落したのが記憶にありますが、世界で始めて、炭素繊維強化複合材やフェーズドアレイレーダーを使用するなど意欲的な戦闘機です。このF2支援戦闘機開発について日米交渉が行われたのは、ちょうど日米貿易摩擦が問題となっていた頃です。


 アメリカ製戦闘機の直接購入を求めるアメリカと日の丸戦闘機の自主開発にこだわり続ける日本との間でFSXの日米共同開発案は、ちょうど足して二で割ったような妥協策だったのです。本書では、いかにしてFSXの日米交渉が進んで行ったのか。アメリカのFSX賛成派と反対派の戦い。こうした流れを見て行くことで、こうやって国際交渉が進んでいくんだ、と教えられる一冊です。これらはテレビを見ていても分からないことでしょう。


・もし日本が、独自に研究、実験、開発をおし進めていけば、十年後には、日本の航空機産業は、われわれの想像を超える水準に達する危険がある。だた、共同開発という路線を選択すれば、日本の飛躍を牽制することができるはずだ」ブラッドレー(p302)


 私が感じたのは、日本に技術供与し日米関係を強化しようとするグループと、日本はアメリカの仮想的であり、技術供与する必要はないとするグループの勢力争いがあるということです。ヘンリー・スタックポール司令官が「在日アメリカ軍は、日本の軍事大国化を抑えつける『ビンのふた』だ」と発言したこともあります。


 これらのどちらの勢力が力を持つかで、二国間の関係は決まってしまうと思うと、それはあまりに微妙で、それこそちょっとしたことで変わっていくもののように感じられました。この本を読めば、日米交渉をテレビで見ても、この裏ではこんなことが行われているはず、と子供に言って聞かせられると思います。まず、ワシントンに駐在になったら、犬を飼いましょう。


 手嶋さん、よい本をありがとうございます。本の評価は、★3つとしました。


この本で私が共感した名言

・「ワシントンで独自の人脈を築きたければ、まず犬を飼えばいい」・・・下院議員トーマス・ダウニーの夫人クリスが、この街に移り住む友人に贈る助言である。(p26)


・「大統領との距離がすべてを決める」とういアメリカ政治の鉄則(p176)


・「政治は血を流さない戦争であり、戦争は血を流す政治である」という毛沢東の持久戦の思想(p17)


▼引用は、この本からです。
たそがれゆく日米同盟―ニッポンFSXを撃て (新潮文庫)
手嶋 龍一
新潮社
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おすすめ度の平均: 4.5
4 日米同盟の危機
5 取材者が陥る罠に落ちなかったノンフィクション作品の金字塔

【私の評価】★★★☆☆(71点)


目次

プロローグ 戦略を担う者たち
第1章 ケビン・カーンズのたったひとりの反乱
第2章 日の丸FSXの墜落
第3章 反FSX包囲網
第4章 政権内部のFSX戦争
第5章 舵をきるブッシュ政権
第6章 フォギー・ボトムの憂鬱
第7章 対決は議会へ
第8章 勇気ある人々
第9章 すべては東芝事件から始まった
第10章 黄昏の日米同盟
エピローグ 迷走する日米同盟



著者経歴

 手嶋 龍一(てしま りゅういち)・・・1949(昭和24)年、北海道生れ。外交ジャーナリスト・作家。冷戦の終焉にNHKワシントン特派員として立会い、FSX・次期支援戦闘機の開発をめぐる日米の暗闘を描いた『たそがれゆく日米同盟』を発表。続いて湾岸戦争に遭遇して迷走するニッポンの素顔を活写した『外交敗戦』を著し、注目を集める。2001(平成13)年の同時多発テロ事件ではワシントン支局長として11日間にわたる昼夜連続の中継放送を担った


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