【私の評価】★★★★★(92点)
■上司が読んでいたので購入した一冊。
国際外交インテリジェンスの専門家による
現在の国際情勢の分析です。
テレビで報道される内容との差に愕然。
まず、中国との尖閣諸島問題です。
尖閣諸島については、
中国の海洋進出の戦略の一つですが、
台湾侵攻のための一手でもある。
こうした確信的利益については、
中国共産党のブレはありませんね。
・尖閣問題とは、台湾有事の一つの変形と考えるべきです。
すでに他国が実効支配しているにもかかわらず、中国が
強固に領有権を主張する構図がそっくりだからです。
東アジア政局における導火線は、尖閣諸島から台湾に
いたる線なんです(佐藤)(p246)
■そして、アメリカとはTPP問題。
TPPについては、
自由貿易の推進という視点もありますが、
TPP内のブロック形成という面もあるのです。
そういう意味では、TPP参加は
日米経済の一体化を目指すとすれば不可避であり、
政権として進めなくてはならない課題なのでしょう。
・我々は、このTPPを自由貿易の新たな発展型と捉えがちです。
しかし、TPPは二十一世紀の新たな「帝国」の
一つの類型でもあると考えてみる必要がある(手嶋)(p176)
■最後は、1月17日に中国の拘束から解放された
東洋学園大学の中国人教授、朱建栄さん。
朱さんは、テレビなどで中国を擁護する発言を
していましたが、それでも拘束される。
国内の中国人は震撼していることでしょう。
中国国内で何かが起こっている。
対日諜報戦で中国軍と国家安全部が動いており、
非常に危険な状況と分析しています。
・朱建栄事件は、いまの日中間で現実になにが起きているかを
知る上で、見逃せません。・・中国に従業員を送る際には
十分心したほうがいい。公安当局に眼をつけられる潜在的な
危険を抱え込むことだと肝に銘じるべきでしょう(手嶋)(p243)
■報道だけでは
わからないことだらけでした。
報道できないのでしょう。
手嶋さん、佐藤さん
良い本をありがとうございました。
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■この本で私が共感したところは次のとおりです。
・民間のかなり大事な交渉で、自社の社員に
英語で折衝をやらせている経営者がいますが、
危険極まりないですよね。外交の世界では決して
そんなことはしません。外交官は・・・
非公式な社交の場では英語で会話をしますが、
正式な折衝では通訳を使うのが鉄則です(手嶋)(p59)
・2013年5月15日には、龍谷大学の松島泰勝教授を中心に
「琉球民族独立総合研究学会」が創設されました・・・
本土の政権がこれまでの惰性で沖縄の米軍基地問題を
扱っていれば、本土から沖縄を引き離す遠心力が
強まることは、客観的に見て確実ですよ(佐藤)(p121)
・韓国との関係改善を優先すべきです。韓国とは、自由や
基本的人権など民主主義の価値観を共に分かち合うことができ、
また政治指導者も国民の選挙によって選ばれるからです・・・
安部政権も韓国に対しては、あえて大胆な譲歩をして見せる
覚悟があってもいい(佐藤)(p126)
・第二次世界大戦が始まると、祖国イギリスを裏切って
ドイツのスパイになる怖れがあるというので、英仏海峡に
浮かぶマン島に潜在的なスパイとされる人々を強制移住
させたんですね・・なんと九万人ですよ(佐藤)(p186)
・カトリック教会畏るべし。日本では、
インテリジェンス機関としてのカトリック教会には、
驚くほど注意が払われていません。
しかし、インテリジェンスの世界では、
バチカンの存在にはじつに重いものがあります(手嶋)(p215)
・日本版NSCをひとことで言えば、究極の有事に遭遇して、
日本が戦争に突き進むのか否かを決める機関といって
いいでしょう(佐藤)(p219)
新潮社
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【私の評価】★★★★★(92点)
■目次
1 激流
第一章 アジア安保としての東京オリンピック
第二章 飯島訪朝の怪
第三章 サイバー時代のグレート・ゲーム
第四章 東アジアに嵐呼ぶ尖閣問題
第五章 海洋覇権のなかのTPP
2 深層
第六書 インテリジェンスの生態史観
第七章 超大国のインテリジェンス文化
第八章 「日の丸インテリジェンス」はまた昇る
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