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「知の武装」手嶋 龍一、佐藤 優

2014/01/27公開 更新
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知の武装: 救国のインテリジェンス (新潮新書 551)


【私の評価】★★★★★(92点)


要約と感想レビュー

 上司が読んでいたので購入した一冊です。国際外交インテリジェンスの専門家による現在の国際情勢の分析となっています。テレビで報道される内容との差に愕然。まず、中国との尖閣諸島問題です。


 尖閣諸島については、中国の海洋進出の戦略の一つですが、台湾侵攻のための一手でもある。こうした確信的利益については、中国共産党のブレはありません。いずれ、日本とアメリカと中国が、尖閣・台湾でぶつかることとなるのでしょう。


尖閣問題とは、台湾有事の一つの変形と考えるべきです。すでに他国が実効支配しているにもかかわらず、中国が強固に領有権を主張する構図がそっくりだからです。東アジア政局における導火線は、尖閣諸島から台湾にいたる線なんです(佐藤)(p246)


 そして、アメリカとはTPP問題。TPPについては、自由貿易の推進という視点もありますが、TPP内のブロック形成という面もあるのです。そういう意味では、TPP参加は日米経済の一体化を目指すとすれば不可避であり、政権として進めなくてはならない課題なのでしょう。


・我々は、このTPPを自由貿易の新たな発展型と捉えがちです。しかし、TPPは二十一世紀の新たな「帝国」の一つの類型でもあると考えてみる必要がある(手嶋)(p176)


 最後は、1月17日に中国の拘束から解放された東洋学園大学の中国人教授、朱建栄さん。朱さんは、テレビなどで中国を擁護する発言をしていましたが、それでも拘束される。国内の中国人は震撼していることでしょう。中国国内で何かが起こっている。対日諜報戦で中国軍と国家安全部が動いており、非常に危険な状況と分析しています。


・朱建栄事件は、いまの日中間で現実になにが起きているかを知る上で、見逃せません。・・中国に従業員を送る際には十分心したほうがいい。公安当局に眼をつけられる潜在的な危険を抱え込むことだと肝に銘じるべきでしょう(手嶋)(p243)


 報道だけではわからないことだらけでした。こうしたことは、報道できないのでしょう。手嶋さん、佐藤さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・民間のかなり大事な交渉で、自社の社員に英語で折衝をやらせている経営者がいますが、危険極まりないですよね。外交の世界では決してそんなことはしません。外交官は・・非公式な社交の場では英語で会話をしますが、正式な折衝では通訳を使うのが鉄則です(手嶋)(p59)


・2013年5月15日には、龍谷大学の松島泰勝教授を中心に「琉球民族独立総合研究学会」が創設されました・・・本土の政権がこれまでの惰性で沖縄の米軍基地問題を扱っていれば、本土から沖縄を引き離す遠心力が強まることは、客観的に見て確実ですよ(佐藤)(p121)


・韓国との関係改善を優先すべきです。韓国とは、自由や基本的人権など民主主義の価値観を共に分かち合うことができ、また政治指導者も国民の選挙によって選ばれるからです・・・安部政権も韓国に対しては、あえて大胆な譲歩をして見せる覚悟があってもいい(佐藤)(p126)


・第二次世界大戦が始まると、祖国イギリスを裏切ってドイツのスパイになる怖れがあるというので、英仏海峡に浮かぶマン島に潜在的なスパイとされる人々を強制移住させたんですね・・なんと九万人ですよ(佐藤)(p186)


・カトリック教会畏るべし。日本では、インテリジェンス機関としてのカトリック教会には、驚くほど注意が払われていません。しかし、インテリジェンスの世界では、バチカンの存在にはじつに重いものがあります(手嶋)(p215)


・日本版NSCをひとことで言えば、究極の有事に遭遇して、日本が戦争に突き進むのか否かを決める機関といっていいでしょう(佐藤)(p219)


知の武装: 救国のインテリジェンス (新潮新書 551)
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手嶋 龍一 佐藤 優
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【私の評価】★★★★★(92点)


目次

1 激流
 第一章 アジア安保としての東京オリンピック
 第二章 飯島訪朝の怪
 第三章 サイバー時代のグレート・ゲーム
 第四章 東アジアに嵐呼ぶ尖閣問題
 第五章 海洋覇権のなかのTPP
2 深層
 第六書 インテリジェンスの生態史観
 第七章 超大国のインテリジェンス文化
 第八章 「日の丸インテリジェンス」はまた昇る



著者経歴

 佐藤 優(さとう まさる)・・・1960年生まれ。日本の作家。学位は神学修士(同志社大学・1985年)。同志社大学神学部客員教授、静岡文化芸術大学招聘客員教授。在ロシア日本国大使館三等書記官、外務省国際情報局分析第一課主任分析官、外務省大臣官房総務課課長補佐を歴任。2002年に鈴木宗男事件に絡む背任容疑で逮捕される。2005年に執行猶予付き有罪判決(懲役2年6か月、執行猶予4年)を受け東京高等裁判所、最高裁判所は上告を棄却し、判決が確定した。


 手嶋 龍一(てしま りゅういち)・・・外交ジャーナリスト・作家。元NHKワシントン支局長。北海道出身。慶應義塾大学経済学部卒業。2006年~2012年 早稲田大学政治経済学部大学院客員教授。2006年4月~2015年3月 慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネージメント学科専任教授。


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