【書評】「数字で話せ!「世界標準」のニュースの読み方」高橋洋一
2026/01/26公開 更新
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【私の評価】★★★★★(90点)
要約と感想レビュー
日本国債利回り上昇の本質
日本国債の利回りが上昇したことで、日本財政への不安を訴える記事が多く見られます。今は40年債利回りが4%、10年債が2%くらいです。
「長期金利上昇による財政への影響も考慮する必要あり」久保田博幸
「「日本の国債危機」を世界の投資家が警戒、40年債利回りが初の4%超え」Forbes Japan
「高市首相を短命トラス氏と比較 ドイツ紙、債券市場「狂乱」」ベルリン共同通信
国債利回り上昇の本質はどこにあるのか、財務省で国債を担当する資金企画室長だった高橋さんに教えてもらいましょう。
これらの記事の主張は、高市政権の積極財政、消費減税により借金が増えて日本財政が悪化することを投資家が警戒し、日本の国債利回りが上昇したと説明しています。イギリスのトラス首相のように、高市政権もあぶないと煽っています。
高橋さんの主張は、日本経済はデフレを脱却しつつあり、国債の利率が期待インフレ率以上に上がるのは当然としています。また、1000兆円を超える日本財政への不安を主張する人については、国債は借金で悪いものだからダメであり、資産と負債のうち負債だけを強調したもので欠陥のある主張だとしています。
日本財政に破綻のリスクが低い証拠として、破綻リスクを売買する「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS、Credit Default Swap)を説明しています。日本国債(5年)のCDSはたいして上がっていないので、誰も日本国債がデフォルトするなどとは思っていないのです。
(日本の)銀行は高い利回りの国債を買う一方、国債より金利の低い預金を受け入れて、その利ざやで儲けています。こんなやり方がまかり通っているのは日本くらいのものです(p61)
庶民の不安を煽る方法
日本の財政は、本当に悪いのでしょうか。テレビや新聞は、1000兆円の借金は国民一人あたり800万円で、この借金を子孫に背負わせてはいけない。借金を返すためには増税が必要だというロジックで、消費増税をバックアップしてきました。
2021年には、当時現役の財務事務次官である矢野康治氏が「財務時間、モノ申す「このままでは国家財政は破綻する」」という記事を発表しました。
高橋さんの理解では、矢野氏の主張は、一般会計収支の赤字と、債務(借金)の大きさだけを理由に財政破綻の危険性が高いとしているのは、根拠としては欠陥品としています。つまり、これが企業であれば、一部門の赤字と借金だけを記載して、財務部長が「私の会社は倒産する!」と発表しているようなものだからです。
財務省が公開している日本の資産と負債は、国の負債(借金)1276兆円に対し、資産を差し引くとマイナス687兆円です。さらに、日銀の持っている国債526兆円を差し引くと、実質の日本の借金は161兆円しかないのです。
日銀のバランスシートを見ると、資産として持っている「国債」は526兆円・・政府の負債である国債(公債)1113兆円・・の半分ほどは日銀が持っている・・実際には利払いも償還も行われない借金です。残る約587兆円の国債は確かに事実上民間からの借金ですが、一方で政府は500兆円を超える金融資産を保有しています・・つまり、政府の借金というのはたいした問題ではない(p35)
日本のマスコミの常識は世界の非常識
高橋さんが危惧するのは、日本のテレビや新聞の言論、つまり一部の学者を含む評論家やジャーナリスト、コメンテーターの意見が、著者の知っている常識から外れていることです。つまり、新聞やテレビなどのマスメディアの情報や分析は、世論を意図的に偏向させようとする意図があると考えられるのです。
例えば、日本では消費税を社会保障目的税としていますが、これは日本だけです。財務省の意図は、社会保障を人質にして消費増税をしやすくしていくことだという。
また、1ドル150円台の円安を、日本の国力低下と結びつけるマスコミが多いのですが、日米の為替は、円とドルの供給量で決まるので、自分の無知を公表しているだけと説明しています。
日銀の仕事は、「失業率とインフレ率を一番いい状態にする」のが常識であり、インフレターゲットに向けて金融政策を実施していくのです。日銀の独立性を主張する人もいますが、日銀がインフレ率を決めるのではなく、日銀は手段を選べるという意味の独立なのです。
消費税のインボイス制度を批判する人もいますが、高橋さんは消費増税には反対ですが、インボイス制度は、消費税を正確に把握するためのもので、世界標準の制度で導入するのは当然としています。
新NISAは、簡単にいえば証券会社をはじめとする金融機関の新規顧客開拓のための撒き餌です・・どうしても投資をやりたいという人に対しては、私は国債を勧めることにしています(p60)
世論の誘導が行われている
こうした世界の常識から外れたマスコミの論調は、財政だけでなく、安全保障、移民問題、原子力問題などすべてにわたります。
例えば、安保法制の議論では、「集団的自衛権で戦争に巻き込まれる」という主張がありましたが、「有効な同盟関係を結ぶこと」で戦争のリスクは40%減るという分析があるのです。当たり前のことですが、勝てると思うから侵略するわけで軍事力が対等であれば、戦争のリスクは減るのです。
核兵器を持っているロシアが、核兵器を持っていないウクライナを攻撃しました。高橋さんは、「日本が攻撃された際の米国による報復の手順は決まっておらず、核の傘は揺るがないと米国は明確にしているが、より現実的にする必要がある」と警鐘と鳴らしています。
戦前の日本では、スパイが日本とアメリカが戦争するように誘導したと言われています。現在も同じことが起きているのだと高橋さんは教えてくれているのでしょう。
いつもながら、わかりやすい説明でした。★5とします。高橋さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・アジア地域には、公的に共産主義あいるは社会主義を採用している国が4ヶ国あります。中国、北朝鮮、ベトナム、ラオスです・・・大戦後にアジア地域で起こった戦争には、朝鮮戦争、中印国境紛争、ベトナム戦争、中ソ国境戦争、中越戦争などがありますが、その多くにこの4カ国が関係しています(p94)
・左派政党を指示する人たちは・・・「株価が上がると資本家が儲かり労働者が損をする」と信じ込んでいたりする・・・こうした人たちがマスコミを牛耳っているのが現実で、ニュースや時事解説はこうした人たちによって発信されています(p196)
・テレビ番組「サンデーモーニング」(TBS系列)における、ニュースキャスター・松原耕二の発言・・「普通の原発が海に流しているものと今回の処理水はまったく違う水である。今回の処理水は燃料でブリに直接当たっているので、トリチウムだけではなくセシウムやストロンチウムなどいろいろな放射性物質が入っている」・・・処理水を科学的根拠のないままに危険視(p8)
・外国人労働力の問題は、外国人労働者の流入によって予想される社会問題の大きさとの比較で考えられるべきものでしょう・・・安価な労働力、それにより経済成長のマクロ便益はありますが、日本人の労働を奪うのでマクロ便益は軽微になります。一方、安価な外国人を受け入れるので社会保障はかなりマイナスとなり、日本全体ではマイナスです(p152)
▼引用は、この本からです

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高橋洋一(著)、エムディエヌコーポレーション
【私の評価】★★★★★(90点)
目次
第1部 日本経済を"数字"で再確認する
第2部 平和のために防衛力を強化する
第3部 理系思考で日本社会を改革する
著者経歴
高橋洋一(たかはし よういち)・・・1955年東京都生まれ。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科を卒業。博士(政策研究)。数量政策学者。嘉悦大学大学院ビジネス創造研究学科教授、株式会社政策工房代表取締役会長。1980年大蔵省(現・財務省)に入省、大蔵省理財局資金第一課資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、内閣参事官(首相官邸)などを歴任。小泉内閣・第1次安倍内閣ではブレーンとして活躍し、「ふるさと納税」「ねんきん定期便」などの政策を提案したほか、「霞が関埋蔵金」を公表。2008年に退官し、多くのベストセラーを執筆。菅義偉内閣では内閣官房参与を務めたが、2021年に辞任。現在は、YouTube「高橋洋一チャンネル」を配信しており、チャンネル登録者数は100万人を超えている
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