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「大手新聞・テレビが報道できない「官僚」の真実」高橋 洋一

2022/06/06公開 更新
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「大手新聞・テレビが報道できない「官僚」の真実」高橋 洋一


【私の評価】★★★★☆(84点)


要約と感想レビュー

マスコミをコントロールするのは簡単

元財務官僚であった著者が教えてくれるのは、財務省の記者クラブの新聞記者はポチ(犬の名前)であったということです。餌を持っていくと、ただ食べるだけのポチです。記者クラブの記者たちは、自分で勉強したり取材することもせず、ただ、財務省が準備したペーパーを基に記事を書いているだけ。予算を記事にするときも、予算書に目を通す人は一人もいないし、鋭い質問をする記者は一人もいなかったという。


著者が現役時代には、財務省内でマスコミ情報統制キャンペーンを行って、誰が一番うまく思うような報道をさせたか競争していたというのです。官僚から見てマスコミをコントロールするのは簡単なのです。こんな事実を書いてしまうから、著者が内閣官房参与であったとき、コロナの感染者数を「さざ波」と表現したことで、マスコミから大批判されたのでしょう。いかに大手新聞・テレビが著者を恨み憎んでいたかわかります。


何の疑問もなく、財務省が用意したペーパーだけを基にして、記事を作ってしまう(p4)

森友学園や加計学園問題の真相

また、森友学園や加計学園問題の真相は、マスコミ報道では見えてきません。なぜなら、真相を全く報道していないからです。森友学園問題では森友学園の名誉会長を安倍晋三首相の夫人が務めていたことから、役人が土地売却で忖度したのではとの疑惑が持たれました。


著者の解説では、問題の本質は近畿理財局がゴミが埋設されていた土地をゴミの存在を教えずに売ろうとしていた、というものです。もちろん、地元政治家が関係したりしていますが、お金のやりとはなく、もちろん安倍首相が関わるレベルの問題ではないというのです。


また、加計学園問題についてはもっと単純で、朝日新聞で報道された議事録は文科省内のメモであろうと著者は推測しています。その中に「総理のご意向だと聞いている」と書かれてあっただけなのです。そもそも、タイミングとしては加計学園の獣医学部新設が認可されることが決まって、文科省としては国家戦略特区に敗北してしまった段階のメモなのです。単なるメモを根拠に首相を批判するのは、文科省の組織的な官邸への抵抗であったのでしょう。


文科省は許認可権によって獣医学部を新設させないことで天下りをしてきたのが、新設を強要されたばかりか、天下りも禁止され、天下り斡旋で事務次官も更迭される事態となっています。文科省はこの恨みをマスコミと一緒に晴らしたかったのかもしれません。


ゴミの存在が明らかになった後でも、近畿財務局は値引きや、処分費用を出すという提案もなく、森友学園側で場内処分をしてほしいとしか言っていない。この近畿財務局の対応について、森友学園側はかなり怒った(p33)

財務省はなぜ消費税増税を進めたのか

そして最後の章に書いてある「財務省はなぜ、消費税増税を推し進めたのか」の解説がわかりやすい。財務官僚も消費税を増税すれば、経済が悪くなることは理解しているのです。ただ、日本の将来のためにあえて国民に不人気な増税という選択をすると考えているのはなぜなのか。


著者が財務省内で感じていたのは、そもそも民間の経済が悪くなったとしても、官僚の生活は何も変わらないという空気です。そして、バブル時代には民間の給与は上がったが官僚はそれほど増えず、相対的に惨めだったという体験をしているのですから、国の借金を増やすくらいなら、経済が悪くなってもかまわないと財務官僚は考えているというのです。


アメリカの自由と平等が白人による白人のためであったのと同じように、「消費税増税は日本の将来のためになる」の日本とは、官僚による官僚のための日本なのだと感じました。いつもながら分かりやすい解説に感嘆しました。高橋さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・文科省が、特区で内閣府・特区有識者委員会と交渉してきたのは、課長レベルである。交渉に負けたとき、負けた者は組織の幹部に報告するとき、いい加減なことをいう。筆者から見れば、それが「総理の意向」である(p59)


・許認可権と天下りは役人の武器・・・許認可をなかなか出さず、許認可を欲しいなら見返りに天下りを受け入れるように仕向けるわけだ(p64)


・民進党の先頭に立って、加計学園問題を追及している玉木雄一郎議員は・・父親と実弟は獣医だそうである・・・しかも、日本獣医師政治連盟からの献金を受けていた(p67)


・そもそも、官僚は、審議会委員から参考になる意見が聞けるとも思っていないし、聞く気もない。面倒なことになる、反対意見さえ言わなければ誰でもOKだ(p89)


・官僚のほうから、「審議会の内容をまとめておきましょうか?」と、進言するケースも存在する。実は、著者も、先生方の論文を代筆したことがある(p94)


・府省折衝は少々やっかいだ。官僚組織は縄張り意識が強い・・・根回しもなく、いきなり折衝しようものなら、強烈な抵抗にあう・・・官僚同士なので、お互いの手の内は熟知している(p112)


▼引用は、この本からです
「大手新聞・テレビが報道できない「官僚」の真実」高橋 洋一
高橋 洋一 、SBクリエイティブ


【私の評価】★★★★☆(84点)


目次

第1章 森友学園問題・加計学園問題の真相を暴く!
第2章 こうして、官僚は政治家と国民の目を欺く
第3章 世間に広まる官僚像はデタラメばかり
第4章 「脱・官僚主導」はどうすれば実現するのか?



著者経歴

高橋洋一(たかはし よういち)・・・(株)政策工房会長、嘉悦大学教授。1955年東京都生まれ。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。1980年大蔵省(現・財務省)入省。大蔵省理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官


加計学園問題関係書籍

「偽りの報道 冤罪「モリ・カケ」事件と朝日新聞」長谷川熙
「宣戦布告: 朝日新聞との闘い」」小川 榮太郎、足立 康史
「大手新聞・テレビが報道できない「官僚」の真実」高橋 洋一


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