「天国と地獄に向かう世界」石平, 高橋 洋一
2022/04/18公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(79点)
要約と感想レビュー
中国関係では圧倒的情報を持つ石さんと、元財務官僚で内閣官房参与(当時)の高橋さんが中国と習近平について分析する一冊です。高橋さんは内閣官房参与ですから情報についてはレベルの高いものがインプットされていたはずです。中国は台湾進攻の準備をしていますが、オーストラリア、インドを敵に回すなど、中国の失敗に助けられているとしています。。
この本が出版された2020年当時は、習近平は香港の一国二制度を反故にし、香港国家安全維持法を施行してイギリスの面子を潰して、香港という金融センターを殺しています。また、オーストラリアでは浸透工作をやりすぎて、中国へ港湾を貸与する契約を破棄できる法律を作られるなど、中国包囲網が構築されつつある段階でした。
インドでも中国・インド国境で両軍が衝突しインド兵士が20人死亡という報道もあり、結局、インドは上海協力機構のメンバーでありながら、Quadに参加することになったのです。石さんは、これらはすべて習近平の方針による失敗であり、中国は孤立化しており、私たちは習近平に感謝しなくてはならないと嫌味を言っています。
・2020年6月、中印国境の係争地域で中印両軍が衝突、インド兵士20名が死亡した・・・中国は比較的関係の良かったインドまでも敵に回して、結果的に、インドをQuad同盟に参加させるという事態を招いた(石)(p29)
中国国内に目を向けると、GDPや失業率などの経済データが捏造されており、旧ソ連のようにいずれ倒れると予想しています。ただ、中国は共産党による強権国家であり短期間に潰れることはないとも予想しています。したがって、中国は国内経済が厳しくなる中で、核心的利益を順番に"料理"していくだろうというのが、高橋さんの見立てです。
さらに高橋さんは、中国は稼いだ資金を海外に送金させないので、お金を投資しても回収できないと警告しています。中国で儲けようというのは間違いで、安い組み立てセンターとして製品を作ってもらうのが賢い中国の利用方法なのでしょう。ロシアがウクライナへ侵攻してしまいましたので、今後、中国はどうなるのか、高橋さんのYoutubeをチェックしていきましょう。
・2000年当初・・・中国のコア・インタレスト(核心的利益)として、具体的にチベット、ウイグル、南シナ海、香港、台湾、尖閣と記されていたことから、当時の私は、そういう順番に"料理"していくのかなと推測していた(高橋)(p217)
高橋さんは、この本を書いた後、「日本の新型コロナ新規感染者は、諸外国にくらべ「さざ波」」などと海外情報をツイッターで投稿したことで、表現が悪い!とマスコミに批判されて内閣官房参与を辞任しています。事実に角度をつけて偏向報道するマスコミに「表現」を批判されるのはジョークのようですが、これが日本の現実なのです。
私の感覚では、高橋さんがマスコミから批判されたのは、この本に書いてあるように高橋さんが日本学術会議を左巻きの人ばかり、とか尖閣諸島に墓参りをすればよいなどと、マスコミに影響力を持っている勢力にとって都合の悪いことを主張していたからでしょう。ロシアでは都合の悪い人は暗殺されますが、日本ではマスコミから殺されるのです。
国際状況が大きく変わってしまいましたので、参考になる点は少ないのですが、中国が危険であるということはわかりました。石さん、高橋さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・香港国家安全維持法を施行したことで、国際金融センターとして長年世界の第3位の地位にあった香港が急速に"没落"(高橋)(p47)
・イギリスも、EUを離脱したのだから・・・Quad同盟、セキュリティ・ダイヤモンドにイギリスが加入してくるかもしれない(高橋)(p95)
・日本学術会議の任命拒否・・・学術会議の連中が、国防の研究はご法度だと言っているのが露呈してしまった。学術会議にはもともと左巻きの人ばかり(高橋)(p112)
・中泰証券研究所が発表した衝撃の失業率20.5%・・・中国当局の逆鱗を買って、即刻クビになってしまった(石)(p141)
・「お墓参り」を、尖閣に上陸する"理由付け"にするというものである。かつて尖閣には鰹節の工場もあったくらいで、お墓がある(高橋)(p189)
石平, 高橋 洋一、ビジネス社
【私の評価】★★★☆☆(79点)
目次
第1章 中国が功労者、世界を主導する日本外交
第2章 習近平独裁が与えた日本の幸運
第3章 コロナ禍の世界、天国と地獄
第4章 したたかな菅政権の行方
第5章 内憂しかない中国経済
第6章 日本は台湾を犠牲にするな
第7章 残酷な中国ビジネスの正体
終章 親中派「バイデン大統領」にどうする日本
著者経歴
高橋洋一(たかはし よういち)・・・1955年東京都生まれ。数量政策学者。嘉悦大学ビジネス創造学部教授、株式会社政策工房代表取締役会長。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。1980年に大蔵省(現・財務省)入省。大蔵省理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、内閣参事官(首相官邸)などを歴任。小泉内閣・第1次安倍内閣ではブレーンとして活躍。2008年に退官。2020年10月、菅義偉内閣の内閣官房参与に就任。
石平(せき へい)・・・評論家。1962年、中国四川省成都市生まれ。1980年、北京大学哲学部に入学後、中国民主化運動に傾倒。1984年、同大学を卒業後、四川大学講師を経て、1988年に来日。1995年、神戸大学大学院文化学研究科博士課程を修了し、民間研究機関に勤務。2002年より執筆活動に入り、2007年に日本国籍を取得。
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