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【書評】「一冊でわかるスイス史」踊 共二

2026/01/19公開 更新
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「一冊でわかるスイス史」踊 共二


【私の評価】★★★☆☆(77点)


要約と感想レビュー


スイスは国民皆兵の軍事国家

実はスイスに半年ほど住んでいましたが、スイスの歴史をまともに勉強していなかったと気づき、手にした一冊です。現在のスイスは永世中立国として平和国家のイメージがありますが、実態は国民皆兵の軍事国家です。


私がスイスに滞在中に知ったのは、ほとんどの建物に核シェルターがあり、男性は1年に1回は仕事を休んで銃撃訓練を行い、その銃は自宅で保管しているということです。(銃弾は別)


スイスの歴史を読んでみると、自治とお金を戦いによって手にしてきた歴史に見えます。


まず、スイスが傭兵ビジネスをはじめるきっかけは、1474年のブルゴーニュ戦争です。ブルゴーニュ戦争ではスイス盟約者団が、ブルゴーニュのシャルル突進公を破り、ヨーロッパ諸国からスイスへ傭兵の傭兵の依頼が集まったのです。
 

1509年に、スイス諸邦は金払いの悪いフランスとの傭兵契約を更新せず、翌年ローマ教皇庁と傭兵契約を結んだという。


非常に厳しい兵役制度があり、冷戦のとき「スイスは軍隊をもたない。スイス自体が軍隊なのだ」といわれました(p16)

スイスの国家としての独立

スイスが事実上独立したのは、1648年に終結した三十年戦争の講話条約(ウェストファリア条約)で、神聖ローマ帝国からの分離が承認されたところからはじまります。しばらくは各州(カントン)が主権を持ち、中央政府が存在しない独立共和国として存続していました。


スイスが中央集権の国家となるのは、1798年にフランス革命軍がスイスに侵攻し、「ヘルヴェティア共和国」が発足し、憲法が導入され、議会と政府がつくられます。1848年のスイス連邦憲法では、外交と軍事が連邦に一元化され、各州間の関税の廃止、通貨や度量衡の単位が統一されるなど、現在のスイスの原型となるのです。


1411年、スイス北東部・ザンクト・ガレン修道院の支配下にあったアペンツェルが、自治を求めてスイス諸邦と10年期限の保護同盟を結びます。翌年、修道院支配下の都市ザンクト・ガレンもスイス諸邦と保護同盟を結びました(p64)

スイスの宗教戦争

スイスでもカトリックと宗教改革派(プロテスタント)との争いがありました。


まず1712年、ザンクト・ガレン修道院長の圧政に対する改革派の反乱がおきます。改革派はカトリック軍に勝利し、その後、チューリッヒ条約が締結されます。条約では、ザンクト・ガレン修道院領を共同支配地とし、カトリックと改革派の問題は両派から同じ数の代表が参加する仲介裁判で処理されることになるのです。


1848年のスイス連邦憲法の成立後の選挙では、リベラル派と急進派が圧勝し、保守派が排除されてしまいました。ルツェルンなどカトリック州が、与党の中央集権化や工業化、教育の近代化に反対しますが、与党は保守派の聖職者の追放、修道院の廃止、キリスト教主義の学校の禁止といった強硬策をとりました。「文化闘争」と呼ばれています。


スイスにおける都市に多いプロテスタントと農村に多いカトリックとの対立が長く残ったという。


チューリヒでは、ザンクト・ガレン修道院領の農村トッゲンブルク出身のフルドリヒ・ツヴィングリが、宗教改革の中心人物となります(p84)

スイスの移民問題

スイスでも移民が増えることで、移民の扱いが問題となっています。1837年に2.6%だった外国人の比率が、1910年には14.7%になっているのです。


独立前のスイスでは、ユダヤ人の居住や商取引が制限されていましたが、フランス革命の影響を受けた1874年のスイス連邦憲法で、ユダヤ人にも宗教の自由を認めたため、ユダヤ人がスイスに移り住むようになりました。法律上は平等になったものの、ユダヤ人は異質な存在であり、経済的脅威とも考えられていたのです。


ロシア革命の影響で難民が増え、ユダヤ人や共産主義者の入国を減らすため1920年にスイスは入国審査を厳しくしています。


また世界恐慌の影響で、1930年に0.4%だった失業率が、1936年には4.8%となり、スイスでも「国民戦線」「国民同盟」といった反共産主義・排外主義・反ユダヤ主義のファシズム団体が登場しました。


近年では2010年に、殺人・強盗・麻薬密売などの重罪を犯した外国人を国外に追放する法律が国民投票で可決されています。移民が10%を超えると、移民問題はどこでも起こるのですね。踊 さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・1909年には「女性参政権同盟」が発足します・・スイスにおいて連邦レベルで女性参政権が認められたのは、ようやく1971年のことです(p154)


・ジュネーブ・・市民が4つの階層にわかれていました。古くからの有力な商工業者や上流市民はシトワイヤン、時計づくりなどの新しい商工業者はブルジョワ、市外からあらたに移住してきた労働者はアビタン、その子孫がナティーフと呼ばれました(p114)


・1863年、デュナンと数人の協力者たちにより、現在の赤十字国際委員会にあたる組織が創立されます・・1864年8月には、デュナンらの働きかけで、戦地での傷病者・捕虜の人道的なあつかいについて定めたジュネーブ条約(赤十字条約)が締結されます(p144)


▼引用は、この本からです
「一冊でわかるスイス史」踊 共二
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踊 共二 (著)、河出書房新社


【私の評価】★★★☆☆(77点)


目次


1 スイスの誕生
2 同盟国家の強化と拡大
3 宗教改革と内部分裂
4 近代国家の成立
5 新しい国づくりと世界大戦
6 スイスの現在と未来


著者経歴


踊 共二(おどり ともじ)・・・1960年、福岡県生まれ。武蔵大学リベラルアーツ&サイエンス教育センター教授。専攻は中近世ヨーロッパ史。


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