【書評】「移民 難民 ドイツからの警鐘 たった10年で様変わりしたヨーロッパ」川口マーン恵美
2025/09/04公開 更新

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【私の評価】★★★☆☆(72点)
要約と感想レビュー
ドイツの生活保護の半分は外国人
日本は2012年にドイツを真似して、菅直人総理退陣の条件であった再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)を導入しました。著者は、FITを導入したドイツでは、電気料金が上昇してとんでもないことになっている!と警告し、日本は真似しないよう主張していました。
今回は、2015年から難民を無制限で受け入れたドイツがとんでもないことになっている!と警告しています。
2015年メルケル首相は国会に諮ることなしに、中東難民を、数の制限を付けずに引き取ると決めたのです。今ではドイツの5人に1人は、移民の背景のある人たちだという。
その結果、生活保護受給者は550万人で、約半分の270万人が外国人で、その他、難民や難民申請者が310万人いて、この人たちの衣食住も、生活保護とは別に税金が支払われているというのです。
一度入ってきた難民は、認められようが認められなかろうが、永久に留まるケースが非常に多い(p29)
移民の半分は働いていない
日本でも低賃金の労働者として、移民が必須であると主張する人がいますが、ドイツではどうなっているのでしょうか。
まず、初期の2015年、2016年に入った中東難民のうち職に就いているのは半数ほどです。原因は、ドイツ語の能力不足や知力・能力不足であり、生活保護に頼ることになっています。
安い労働力として活用するはずが、生活保護費、住宅費、教育費、医療費、年金を負担することになったのです。残り半数が働いていますが、ドイツの労働市場で賃金が上がらないという副作用もあるのです。
そもそも、移民により増えるGDP分から、移民にかかる賃金、子弟の教育、医療費、福祉などといったコストを差し引くと、ほとんどゼロという調査結果があります。つまり、得をするのは安い労働力が得られた経営者だけで、他の一般国民がコストを負担させられるだけなのです。
(ドイツでは)難民の生活費やお小遣いは、お金ではなく物品やカードにして、外国送金ができないようにすることを検討しはじめた(p169)
移民による治安の悪化
移民が増えると、ドイツやフランスの現状のように犯罪が増え、暴動が起きます。
中東やアフリカの男は皆、ナイフを持っており、ドイツでは2022年に、ナイフを使った犯罪が約2万件ありました。警官は、ナイフで首を切られないよう通称ナイフ・ショールと呼ばれる防御帯を首に巻いています。
2020年6月、シュトゥットガルトで少年を麻薬所持の疑いで職務質問していた警官が群衆に取り囲まれ、暴動になりました。拘束された24人のうち、3人はドイツに帰化した移民。その他の12人の国籍は、イラン、イラク、クロアチア、ソマリア、アフガニスタン、ボスニアだったという。
旧西ベルリンのノイケルンは、住人の半分以上がアラブ系で、無法地帯として有名な地域ですが、大晦日に若者たちがパトカーや救急車に石や瓶を投げて、多くの警察官が負傷したという。
ドイツでは外国系暴力団が多く結成され、麻薬、売春、密輸、強盗、スリ、空き巣などを収入源にしています。ドイツのノートライン・ヴェストファーレン州だけでも、こうした暴力団が140もあるという。
ノートライン・ヴェストファーレン州で2023年に摘発された犯罪者は34.9%が外国人で、同州の全人口に占める外国人の割合は16.1%と、外国人は犯罪率が2倍なのです。(たいしたことない?)
リベラルな移民政策を敷いてきたのがスウェーデンだった・・・移民やその二世によって犯罪組織が作られた・・殺傷事件が頻発するようになり、発砲事件は2021年だけで342件(p108)
欧米諸国は難民を拒否している
日本はもっと難民を受け入れるべきだという意見もあるようですが、世界は難民を受け入れない方向に向かっています。オーストラリアは、10年以上も前から、船でたとり着いた難民は、パプア・ニューギニアに運び、そこに移住させています。英国では法律が改正され、今後、不法入国者は難民申請ができず、逮捕状なしに最大28日間拘束され、追放されます。
ドイツで移民・難民問題がここまで大きくなったのは、難民問題を語ると日本と同じように極右、差別・偏見、ヘイトスピーチのレッテルを貼られるからだという。
著者の主張は、ヨーロッパと同じ過ちを繰り返さないこと。EUの拒否した難民の受け皿にされないことです。
日本には、難民受け入れをもっと進めようと主張する人がいますが、難民を入れれば日本がどうなるのかおそらくわかっているのでしょう。だから、反対の意見には、ヘイトスピーチやフェイクニュース、危険思想として、論理ではなく感情的に批判するのです。
連載記事をまとめたもので、統一感がなかったので★3とします。川口さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・母国送還は母国が非協力的だと機能しない。そして、母国のほうは犯罪者など戻ってきてほしくないから、たいてい非協力的だ(p84)
・移民問題が極めて深刻になっているのがスウェーデンだ。2022年4月には移民の激しい暴動が起き・・2022年は9月までに銃撃で亡くなった人が48人で、治安の悪さはすでにEU随一だ(p66)
・フランス郊外には、元々、彼ら移民のために作られた巨大な団地もあり、その一帯が荒廃し、無法地帯のようになっているケースも多い(p102)
・多くの難民がEUにやってくるのは、それを斡旋する大規模な犯罪組織が存在するからだ(p177)
▼引用は、この本からです
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川口マーン恵美 (著)、グッドブックス
【私の評価】★★★☆☆(72点)
目次
第一章 犯罪・暴動―様変わりするドイツ社会
第二章 ノーを突きつけるEU諸国
第三章 EUを混乱に陥れたのは誰か
第四章 難民たちはこうしてやって来た
第五章 日本は「ドイツの今」に学べ
著者経歴
川口マーン恵美(かわぐち まーん えみ)・・・作家。日本大学芸術学部卒業後、渡独。シュトゥットガルト国立音楽大学大学院ピアノ科修了。ヨーロッパの政治・文化・経済を、生活者として鋭い感性で分析。2016 年『ドイツの脱原発がよくわかる本』(草思社)が第36回エネルギーフォーラム賞・普及啓発賞を受賞、2018年『復興の日本人論 誰も書かなかった福島』(弊社刊)が第38 回の同賞特別賞を受賞。
移民関連書籍
「移民 難民 ドイツからの警鐘 たった10年で様変わりしたヨーロッパ」川口マーン恵美
「未来年表 人口減少危機論のウソ」高橋 洋一
「ルポ 外国人ぎらい EU・ポピュリズムの現場から見えた日本の未来」宮下 洋一
「「低度」外国人材 移民焼き畑国家、日本」安田 峰俊
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