【書評】インデックス・ファンドを持ち続けろ「敗者のゲーム」チャールズ・エリス
2025/09/03公開 更新

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【私の評価】★★★★★(90点)
要約と感想レビュー
「敗者のゲーム」とは
著者は投資顧問会社や投資銀行のアドバイザーです。私たち個人投資家には、どんなアドバイスをしてくれるのでしょうか。
まず、タイトルの「敗者のゲーム」とは、お互いが下手くそなゲームで、ミスの少ないほうが勝つゲームのことです。反対に「勝者のゲーム」とは、お互いが上手で、エースを多く取ったほうが勝つゲームのことです。
そして、資産運用で機関投資家は、年間成績では約6割のマネジャーが市場平均を下回り、10年では7割,20年では8割のマネジャーが市場に負けています。
つまり著者が言いたいのは、資産運用は敗者のゲームであり、売買を繰り返すアクティブ運用の手数料を差し引けば,市場平均を上回るのは難しい誰もが負けるゲームなのです。
投資信託も同じように、収益に対する手数料の比率を計算すると、100%を超えるという。つまり、すべての収益、またはそれ以上が投資信託運用会社の収益となり、資産を投資してすべてのリスクを背負う投資家には何も残らないのです。
常に市場平均を0.5%上回る成果をあげられれば大成功といえるが,それを長期にわたって実現し続けられる運用機関など,ほとんどなかったのである(p73)
インデックス・ファンドを買え
では、私たち個人投資家はどうすればよいのでしょうか。
著者はウォーレン・バフェットも主張しているように、個人投資家は手数料の小さく、市場に連動するインデックス・ファンドを長期間運用すべきだとしています。長期間とは20年、30年できれば80年インデックス・ファンドを買って持ち続けるのです。
なぜ、長期投資が必要かといえば、株式相場は上下するからです。1年間の収益率をみるとリターンは53%プラスから37%マイナスまで振れる可能性があります。これが、10年持ち続けると、年間平均収益率は5%から10%の範囲に入るのです。
問題は、リーマンショックのように市場が暴落したときも、市場が高騰したときも、ファンドを持ち続けられるのかどうかということなのです。
多くの人は株式市場の活況が続くと「もっと買うべし」,暴落期には「すべて投げ売りすべきだ」というムードに流されてしまうというのです。
多くの投資家にとって最も困難なのは,最適な投資政策を見出すことではなく,相場の高騰期にも暴落期においても適切な投資政策をぶれずに維持すること(p26)
アクティブ投資信託は買うな
投資信託のページを見ると、過去1年、3年のリターンや「五つ星」あるいは「四つ星」といった評価が書いてあることがあります。
実は、の格付けは将来的なリターン予想にほとんど役立ちません。しかし、新規の投資資金のほぼ100%はその「五つ星」あるいは「四つ星」の投資信託に投資されるのです。そして、「五つ星」のファンドのほどんどは、その後インデックスの半分もリターンを生まないのです。
また、数百のファンドを持つ運用機関であれば,一つや二つは好成績に見えるものもあるのです。ところが、未来のリターンは、ほぼ過去のリターンとは関係なのです。
そもそも運用機関でも有能なファンド・マネジャーを採用するのが難しいという。なぜなら最近の好成績は、彼の腕によるものではなく、たまたま特定のセクターが収益率をあげていたり、単に運がよかっただけといった場合が普通だというのです。
全投資信託の大半は市場平均か、それを下回った。50年間で、常に市場平均を2%以上上回るリターンを確保した投資信託は、全体のわずか2%にすぎない(しかも、これは税引き前の話である)(p130)
個人投資の基本
投資の基本は、余裕資金を投資することです。5,6年後の大学の費用を株式に投資するのはまずいです。
そして、投資の基本は分散です。リスクを最少化するためには,国際分散投資が必要となります。分散という意味で、自分の会社の株には投資しないようにしましょう。
債権は株式とほとんど同様に変動し、さらに債権は、真のリスクであるインフレをカバーできません。
商品取引(コモディティ取引)は、経済的付加価値を生まないので投資ではなくギャンブルです。
したがって、株式への長期投資こそが最高のリターンをもたらすのです。ところが、相場変動に振り回されずに株式を長期運用を継続することは難しいのです。
マルクスは、机の上で「資本家が労働者を不当に搾取している」と書きました。今では、誰もがNISAや株式投資で資本家となりました。株式を買って資本家になってみると、いかに精神的に大変なことがわかります。実は、資本家はリスクに相応するリターンを得ていたのです。
私たちは、自らが資本家になることで、マルクスに騙されていたということがわかりました。エリスさん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・教育は、一般に最高の投資だ。自分自身や子や孫の教育だけでなく、教育資金をまかなえない家庭の子供を支援する方法もある(p203)
・マーケットが下がる,つまり株が「バーゲンセール」になると,私たちは株を買うのをやめる。のみならず,焦って売ろうとさえする・・・株式相場の下落は,安く買うための第一歩なのだ(p113)
・短期財務省証券は・・インフレ調整後で利益をあげている期間は60%以下だ。さらに驚くべきことに長期年間平均収益率はほぼゼロになっている(p91)
・カジノでギャンブルをする人々は、全体として明らかに多額の損を出しているにもかかわらず、カジノはいつも満員だ(p244)
▼引用は、この本からです
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チャールズ・エリス(著)、日本経済新聞出版
【私の評価】★★★★★(90点)
目次
1 資産運用でまず押さえるべきこと
2 運用を少し理論的に見てみよう
3 人生設計と投資
著者経歴
チャールズ・エリス(Charles D. Ellis)・・・1937年生まれ。イェール大学卒業後、ハーバード・ビジネス・スクールで最優秀のMBA、ニューヨーク大学でPh.D.取得。ロックフェラー基金、ドナルドソン・ラフキン・ジェンレットを経て、1972年グリニッジ・アソシエイツを設立。以後、30年にわたり代表パートナーとして、投資顧問会社や投資銀行などの経営・マーケティング戦略に関する調査、コンサルティングに腕を振るう。2001年6月代表パートナーを退任。現在、ホワイトヘッド財団理事長。この間、イェール大学財団基金投資委員会委員長、米国公認証券アナリスト協会会長、バンガード取締役などを歴任。
インデックス投資関係書籍
「敗者のゲーム」チャールズ・エリス
「父が娘に伝える自由に生きるための30の投資の教え」ジェイエル・コリンズ
「元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法」柴山 和久
「サブプライム後の新資産運用―10年後に幸せになる新金融リテラシーの実践」中原 圭介
「アセットアロケーション革命」内藤忍
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