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「元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法」柴山 和久

2020/04/13公開 更新
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【私の評価】★★★★☆(82点)


要約と感想レビュー

 著者は財務省で10年、マッキンゼーで5年働き、資産運用のウェルスナビを起業しました。ウェルスナビとは、富裕層向けのプライベートバンクなどで行われいる「長期・分散」の資産運用を行うサービスです。インデックス投資であれば、手数料は0.5%以下ですが、ウェルスナビは1%です。その代わり、投資比率を一定に保つリバランスをウェルスナビが自動的に行ってくれるのです。


 リバランスとは値上がりした資産を売り、値下がりした資産を買う操作です。リバランスは1年に一度、多くても半年に一度のペースで行います。リバランスにより安くなった資産は買い増しでき、高くなった資産は益出しするということです。


 興味深いのは、著者が入省してから海外留学を目指し勉強する中で、200万円の借金を負ったことでしょう。なりふりかまわない勉強の結果、ハーバード大学院に留学でき、妻と出会うことができた。マッキンゼーにも転職できたのです。だから貯蓄も大切ですが、若いうちは自分に投資することを著者は推奨しているのです。年率10%で資産を運用するよりも稼げる自分になることができれば、継続的な収入が約束されるからです。


・給与が手取りで約20万円だったとき、教育ローンは200万円まで膨らみました・・・私は「若いうちは無理して資産運用をするより、自分に投資してみてはどうでしょうか」と答えています(p188)


 欧米では株式の自動売買が拡大しています。ゴールドマン・サックスの自動取引プログラムを開発するエンジニアは9000人と、従業員の3分の1を占めるという。著者の起業したウェルスナビは資産運用は順調なようですが、資産1800億円で売上8億円。費用は25億円で17億円の赤字です。資産運用のアルゴリズム自体は、資金が10兆円でも10万円でも、同じなのでプログラムにかかった費用を回収するためには大きな資産規模が必要です。資産3000億円以上でないと収支が合わない計算となるので、ここが頑張りどころなのでしょう。


 著者は欧米での生活が長いので、為替取引(FX)は投資銀行や機関投資家のトレーダーが行うものとされており、個人投資家が行うケースは稀としています。FXでギャンブルするくらいならインデックスか分散投資するのが資産を減らさない基本ということです。柴山さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・運用期間が30年間で毎年5%のリターンがあるとします。30年後の資産は、毎月3万円ずつ積み立てると2446万円、毎月5万円ずつ積み立てると4076万円となります(p100)


・50~60代で10年後くらいにリタイアを考えているなら、株式の割合は50~60%が妥当です。これは、ノルウェー政府年金基金と同じくらいの割合です(p89)


・スイスのプライベート・バンカーにとって最大の栄誉は、今の世代だけでなく、その子や孫へと、世代を超えて資産運用を任せられること(p149)


・「過去のリターンの実績」がよいと、将来的にも高いリターンが期待できると誤解しがちです(p9)



柴山 和久、ダイヤモンド社


【私の評価】★★★★☆(82点)


目次

第1章 5つの失敗から学んだ投資の鉄則
第2章 時間と世界を味方につける資産運用とは?
第3章 日本の資産運用はガラパゴス化している
第4章 日本人が知らなかった"正しい"資産運用
第5章 人間の脳は資産運用に向いていない
第6章 テクノロジーが実現する豊かな未来
第7章 お金から自由になったら何をしたいか



著者経歴

 柴山和久(しばやま かずひさ)・・・ウエルスナビ代表取締役CEO 。次世代の金融インフラを日本に築きたいという思いから、2015年に起業し現職。2016年、世界水準の資産運用を自動化した「ウェルスナビ」をリリースした。2000年より9年間、日英の財務省で、予算、税制、金融、国際交渉に従事。2010年より5年間、マッキンゼーにおいて主に日米の金融プロジェクトに従事し、ウォール街に本拠を置く資産規模10兆円の機関投資家を1年半サポートした。東京大学法学部、ハーバード・ロースクール、INSEAD卒業。ニューヨーク州弁護士。


インデックス投資関係書籍

「父が娘に伝える自由に生きるための30の投資の教え」ジェイエル・コリンズ
「元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法」柴山 和久
「サブプライム後の新資産運用―10年後に幸せになる新金融リテラシーの実践」中原 圭介
「アセットアロケーション革命」内藤忍


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