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【書評】「お金2.0 新しい経済のルールと生き方」佐藤 航陽

2025/05/09公開 更新
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「お金2.0 新しい経済のルールと生き方」佐藤 航陽


【私の評価】★★★★☆(80点)


要約と感想レビュー


資本主義から価値主義へ

著者の提案する「お金2.0」とは、現在の資本主義にけるお金に換算されていない価値を重視する社会です。例えば、1億円の貯金と100万人のフォロアーがいることどちらが価値があるのかといえば、100万人のほうが価値がある場合もあるのです。


ちなみにフェイスブックは、2012年に社員13人で売上がほぼゼロの写真共有アプリ「インスタグラム」を800億円で買収しました。写真というキラーコンテンツを評価したのです。また、フェイスブックは2014年に年商20億円しかないワッツアップを2兆円で買収しました。ワッツアップを使っている4億人の価値が評価されたのです。


このようにお金に換算されていない価値があるのではないか、といのが著者の示唆するところです。主婦の家事も価値があるだろうし、近所の町内会のコミュニティ、NGOにも価値があるのです。


資本主義の欠点を補った考え方として、価値を軸として回る社会「価値主義」という枠組みを提案しています(p4)

資本主義は欲望のネットワーク

資本主義については、ここまで広く普及したのは、人間の欲望に最適化されてきたからだと評価しています。お金を道具とする資本主義経済には、インセンティブ、リアルタイム、不確実性、ヒエラルキー、コミュニケーションという持続的かつ自律的に発展する要素が組み込まれているのです。


つまり、資本主義経済は、人間の金銭欲求、承認欲求を満たしてくれます。また、資本主義は日々状況が変化し、不確実性が高いがゆえに、人間のワクワクを引き出します。


そして、年収、利益、肩書などのヒエラルキーが可視化され、明確化され、承認欲求をさらに満たしてくれるというわけです。


資本市場とは何なのか?・・金融の歴史や人々の欲望を最適化していった結果だ(p10)

格差は資本主義の構造的現象

中央銀行が普及して、まだ100年ほどしかたっておらず、資本主義という仕組みは、いまだ改善の余地があるとしています。例えば、資本主義経済は自由であるがゆえに「偏り」が生じます。人々の欲するものが、よりよいもの、価値あるものに集中するのは当然のことなのです。


この「格差」という構造的な現象に対し、感情的に嫌悪し、資本家を悪人にしたてて、殺してしまえ!というのが共産主義です。悪人らしい人を見つけて懲らしめてスッキリするというのは、わかりやすい主張ですが、その先には一部の共産主義者が支配する社会が待っているわけです。


著者は「格差」という構造的な現象を解決するために、お金を道具として誰もが使える社会を提言しています。仮に、人々が生活するためにお金を稼ぐ必要のなくなった社会ができれば、人はお金のためではなく、価値のために動きだすのではないかというのです。


お金に価値があるのではなく、お金を価値あるものと交換してこそ、楽しい人生になるのだと私は理解しました。


格差とは有機的なネットワークの循環が作り出す一種の「物理現象」です(p256)

お金は道具である

著者は、お金に価値があるのではなく、お金は道具であると理解したとき、人は「自分はなぜ生まれてきて、本当は何がしたいのか?」という本質的なテーマに向き合うことになるとしています。つまり、金銭的な利益を第一に考えるほど儲からなくなり、何か価値あることに熱中している人ほど結果的に利益を得られる社会になっていくというのが著者の主張です。


そういう意味で、著者は日本の詰め込み教育とは反対に、子供の興味をとことん伸ばしていく「モンテッソーリ教育」に注目してます。グーグル、アマゾン、フェイスブックの創業者はいずれもモンテッソーリ教育を受けていたからです。


本当の価値を重視するということは、数字ではなく本当の価値あるものに投資するというウォーレン・バフェットにも通じる考え方だと思いました。佐藤さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・お金の流れの9割近くは資産経済のほうで生まれています・・資産経済はどんどん拡大を続けていて、世界中で金融マネーは投資先を探してさまよっています(p151)


・人間は誰かを羨んだり嫉妬したりする反面、他人に共感したり自分を犠牲にしても何かに献身したりする生き物だと思います(p24)


・ネット企業にとってはこのデータこそが価値であり、会員データ・購買データ・広告配信データなどを失った瞬間に廃業しなければなりません(p159)


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「お金2.0 新しい経済のルールと生き方」佐藤 航陽
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佐藤 航陽(著)、幻冬舎


【私の評価】★★★★☆(80点)


目次


第1章 お金の正体
第2章 テクノロジーが変えるお金のカタチ
第3章 価値主義とは何か?
第4章「お金」から解放される生き方
第5章 加速する人類の進化


著者経歴


佐藤 航陽(さとう かつあき)・・・早稲田大学在学中の2007年に株式会社メタップスを設立し代表取締役に就任。2011年にアプリ収益化プラットフォーム「Metaps」を開始、世界8拠点に事業を拡大。2013年より決済サービス「SPIKE」の立ち上げ。2015年に東証マザーズに上場。フォーブス「日本を救う起業家ベスト10」、AERA「日本を突破する100人」、30歳未満のアジアを代表する30人「Under 30 Asia」などに選出。2017年に宇宙開発を目的とした株式会社スペースデータを設立。


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