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「きみのお金は誰のため: ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」」田内学

2024/02/07公開 更新
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「きみのお金は誰のため: ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」」田内学


【私の評価】★★★★★(95点)


要約と感想レビュー

お金とは何なのか

お金とは何なのか、女の子と少年が謎の老人から学ぶ経済小説です。実はこの老人は、自らお金の魔力に溺れて、家族を失い、今は未来の社会のためになる事業を行って成功しているのです。謎の老人の伝えたいことは何なのでしょうか。


まず、お金の歴史を振り返ってみましょう。元々、お金は貴金属が使われていましたが、持ち運びが難しいことから、貴金属と交換可能な兌換紙幣が作られました。また、日本では江戸時代までは米がお金のように取引されていましたが、明治になってお金で税金を納めることになって、お金の重要性が飛躍的に増したのです。


お金に価値があるのではなく、お金と交換できるものに価値があるから、人はお金を欲しくなるのです。お金を払った人のために人が働くのですから、お金が発明されて、みんながお互いのために働く社会になった、という言葉が印象的でした。


価値が生まれて、お金が回り始める・・みんながお互いのために働く社会に変わったんや(p54)

働いてくれる人がいるからお金に価値がある

ところが、多くの人がお金のために働き、お金で何でもできるようになると、貯金が多ければ幸せと感じたり、お金があればいいと感じる人が増えてしまったと老人は語ります。お金を持っているから偉い、お金を払っているから威張り散らす。これらは、お金があれば、何でもできると勘違いしている現象なのです。


なぜなら、お金を払うということは、自分でできないことを他人にやってもらっているだけなのです。お金に価値があるのではなく、やってくれている人や、やってもらっていることに価値があるのです。もちろん個人で見れば、お金を持っている、持っていないという格差は問題ですが、それは税金で強制的にお金をばら撒くか、お金持ちがお金を使うことで解決していくことができるのです。


また年金問題も同じように考えてみると、個人で見れば老後資金が足りないのではないかと不安となりますが、社会全体で見ると、少子化によって、労働力が足りなくなることのほうが大問題なのです。極端に考えれば、働けない老人だけになったら、いくらお金があっても何も買えないし、生活に必要なものが手に入らないのです。


お金を使うとき、受け取ってくれる人がいる。その人が働いてくれるから問題が解決するんや(p70)

国の借金マイナスは個人や企業の預金のプラス

お金は社会全体で見ると、個人で見るのとは違う景色があることがわかります。例えば国の借金が1000兆円を問題視する人がいますが、国が借金をして道路や港や橋を造る場合、そのお金は、国の内側にいる人や企業の口座に入ることになります。国の借金のマイナス分は、個人や企業の預金のプラスとなっており、全体で見れば帳消しになっているのです。


また、お金を事業に投資した場合、仮に失敗しても損をするのは投資家だけで、その事業のために働いた人たちの口座にお金が移動するので、社会全体ではお金の量は減らないのです。問題となるとすれば、日本のお金を海外に投資すれば、日本のお金が海外の人の口座に移動し、海外に社会資本も移ってしまい、日本としては経済活動が沈んでしまうことでしょう。


国債も日本国内で消化しているうちは問題ありませんが、海外の投資家に頼るようになれば、海外のお金をもらうことで、海外の人のために働かなければならなくなってしまうのです。


国が借金をして道路を造る場合は、国の内側にいる人が働いています(p180)

お金に価値はない、もっと大事なものがある

老人の「お金に価値はない、もっと大事なものがある」という言葉が印象的でした。土地でも株でも、社会全体を考えれば、価格が上がることは大きな意味があるのではなく、重要なのは未来の幸せにつながる社会資本の蓄積を増やすことができるのかどうかのほうが重要だというのです。


また、個人の視点でも、お金はお互いのために働くことを促進することで、個々の人々の幸せを増大させる可能性を持っています。ところがお金のために働きすぎて、家庭が崩壊するようなことがあれば、本末転倒なわけです。


僕たちは何のために働くのか。それを考える必要があるのでしょう。ずーっと考えてきた「お金の本質」が見えてきました。お金と同じように会社の役職も、会社がうまく回るような仕組みであり、役職が上だから偉いのではなく、役割と責任が重要なだけなのです。


非常に深く多くの人に読んでいただきたい一冊でした。★5とします。田内さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・アステカの時代に紙幣を使っていたら、彼らは侵略から逃れられたかもしれない(p39)


・良い点を取ろう暗記だけしても、学力はつかへん・・・GDPを目的にすると、肝心の幸せになることを忘れてしまうんや(p93)


・投資ってのは、未来への提案なんや。こういう製品やサービスがあったら未来は良くなるんやうかとみんなに提案している(p158)


▼引用は、この本からです
「きみのお金は誰のため: ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」」田内学
田内学、東洋経済新報社


【私の評価】★★★★★(95点)


目次

第1章 お金の謎1「お金自体には価値がない」
第2章 お金の謎2「お金で解決できる問題はない」
第3章 お金の謎3「みんなでお金を貯めても意味がない」
第4章 格差の謎「退治する悪党は存在しない」
第5章 社会の謎「未来には贈与しかできない」
最終章 最後の謎「ぼくたちはひとりじゃない」



著者経歴

田内学(たうち まなぶ)・・・1978年生まれ。東京大学工学部卒業。同大学大学院情報理工学系研究科修士課程修了。2003年ゴールドマン・サックス証券株式会社入社。以後16年間、日本国債、円金利デリバティブ、長期為替などのトレーディングに従事。日本銀行による金利指標改革にも携わる。2019年に退職してからは、佐渡島庸平氏のもとで修行し、執筆活動を始める。お金の向こう研究所代表。社会的金融教育家として、学生・社会人向けにお金についての講演なども行う


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