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「お金のむこうに人がいる 元ゴールドマン・サックス金利トレーダーが書いた 予備知識のいらない経済新入門」田内学

2023/06/30公開 更新
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「お金のむこうに人がいる 元ゴールドマン・サックス金利トレーダーが書いた 予備知識のいらない経済新入門」田内学


【私の評価】★★★★★(95点)


要約と感想レビュー

なぜ日本の財政は、破綻しないのか

「なぜ日本の財政は、破綻しないのか」、「なぜ敗戦後、ハイパーインフレが発生するのか」について、明確な答えを教えてくれる一冊です。著者はゴールドマン・サックスの金利トレーダーとして働いているときに、多くのヘッジファンドが日本が財政破綻することに賭けて、日本国債の空売りを仕掛けるのを見ていました。しかし、日本国債は安い金利で売れ続け、多くのヘッジファンドは大きな損失を出して退出していったのです。


著者がお金について最初に説明するのは、国内だけを見れば、政府の財布、個人の財布、企業の財布があるということです。そして個人がものを買えば、個人の財布のお金が減って、法人の財布にお金が移動します。国内だけで見れば、お金の総額は変わらないのです。では日本政府が国債を発行するとどうなるのでしょうか。個人や企業は国債という証券をもらって、お金を政府の財布に移動させることになります。これも国内だけで見れば、政府がそのお金を国内で使うのであれば、再び個人や企業の財布に戻っていくだけなのです。


このように国債が国内で売れて、そのお金が国内だけで使われているぶんには、お金が移動しているだけで、政府に貸すお金が足りなくなることはないのです。国から見れば負債ですが、個人や企業から見れば資産なのです。


国債や社債・・保有者には資産だが、証券を発行した人から見れば負債になる(p131)

なぜ敗戦後、ハイパーインフレが発生したのか

お金の量が増えすぎると、モノの値段が上昇し続けてインフレとなると言われています。第一次世界大戦後の1923年のドイツではパンが4000億マルクとなり、買い物のために山のような札束を手押し車で運んでいたという。一方で日本ではアベノミクスということで、2%のインフレ目標を達成するために異次元の金融緩和を行い、マネタリーベース(資金供給量)を大きく増やしました。ところが、インフレにはならず、円安と資源価格の高騰でやっとインフレになりつつあるのが現状です。


著者がドイツでのハイパーインフレの原因として指摘するのは、お金を印刷しすぎたからではありません。モノが足りなくなったからハイパーインフレになったのです。ドイツは敗戦後、戦勝国に多額の賠償金を支払うことになり、国内の石炭を無償で外国に提供したり、自国の通貨を大量に印刷して支払っていました。敗戦の混乱の中でモノが少ないドイツで、石炭は取られるし、外国に支払われた通貨によってドイツの労働力が外国のために使われることになってしまったのです。モノもなければ、労働力もない。インフレになるのは当然なのです。


つまり、お金を増やしてもモノや労働力の不足がなければ、インフレになるわけではありません。アベノミクスでお金が溢れていたとしても、そのお金が使われて、モノや労働力の不足がおきなければインフレにならないのです。


お金を増やしたところで、労働力の不足が埋まるはずがない。増やしたお金が使われれるときに、労働力が奪われる(p207)

お金のむこうには「人」がいる

本書のタイトルである「お金のむこうには「人」がいる」とは、お金を使うということは、あなたのために働く人がいるということです。つまり、知らない人に働いてもらわないといけないから、お金を使うのだ、というお金の定義が目から鱗でした。お金がない時代には、権力者が労働配分を決定していましたが、お金がある時代では、お金を使う人が労働を決定しているのです。こうしたお金の基本を教えてもらうと、見えない世界が見えてくるように感じました。


例えば財務省は「財政規律が崩壊すれば、国は崩壊する」として増税を進めて来ましたが、これは国民や企業の財布から政府の財布に移動するお金を増やすことです。つまり、そのお金を配分する財務省の権限を増やすことを意図しているということなのでしょう。税金でも国債でも集めたお金が国内で使われるのであれば、それは日本の個人や企業の財布に戻っていくのです。


問題は日本のお金が外国に出ていくことです。最近では日本の国際収支の貿易収支は赤字、経常収支がとんとんという状況です。国際収支が赤字ということは、外国に労働の貸しを作っていることであり、いずれ返さなくてはなりません。つまり、国際収支の赤字は未来の日本人の負担となるのです。


貿易黒字とは「外国のために働くこと」(p182)

「経済」の主役は人

「経済」の主役は人であり、誰が働いているのか、そして誰が幸せになっているのかが大事という著者の主張に納得しました。つまり、お金は労働してもらうための道具であり、ある人の労働によって幸せになったとしたら私達が感謝すべきなのは、「お金を払った人」なのではなく、「働いてくれたある人」なのです。財務省が「日本財政が崩壊しないために増税が必要」といっているのに、なぜ日本国債は安定しているのか。なぜ、ウォーレン・バフェットは日本への投資を増やしているのかが少しだけわかってきたように感じました。


日本はこれまで250兆円もの貿易黒字を蓄積してきた実績があり、その黒字は日本人が外国のために働いてきた蓄積なのです。現在の日本が海外から資源を安定して輸入できているのは、こうした先輩たちの蓄積があるからなのです。これまで読んできた本の中で一番「お金」の本質に切り込んだ本でした。星5とします。田内さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・税金というシステム・・紙幣を手に入れるために、みんながお互いのために働くようになる(p45)


・預金残高を増やすには、誰かに借金をしてもらうしかない・・・120兆円しかない現金が1200兆円以上の預金を作り出した(p123)


・株というチケットは、会社がつぶれるまで転売され続ける(p137)


・投資の損は、事業の失敗を意味する。その事業に費やされた労働に対して、お客さんが感じた効用が少な過ぎた(p147)


▼引用は、この本からです
「お金のむこうに人がいる 元ゴールドマン・サックス金利トレーダーが書いた 予備知識のいらない経済新入門」田内学
田内学、ダイヤモンド社


【私の評価】★★★★★(95点)


目次

第1部 「社会」は、あなたの財布の外にある。
第2部 「社会の財布」には外側がない。
第3部 社会全体の問題はお金で解決できない。
おわりに 「僕たちの輪」はどうすれば広がるのか?



著者経歴

田内学(たうち まなぶ)・・・1978年生まれ。東京大学入学後、プログラミングにはまり、国際大学対抗プログラミングコンテストアジア大会入賞。 同大学院情報理工学系研究科修士課程修了。2003年ゴールドマン・サックス証券株式会社入社。以後16年間、日本国債、円金利デリバティブ、長期為替などのトレーディングに従事。日銀による金利指標改革にも携わる。2019年退職。現在は子育てのかたわら、中高生への金融教育に関する活動を行っている。


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