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「いねむり先生」伊集院 静

2023/07/03公開 更新
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「いねむり先生」伊集院 静


【私の評価】★★★☆☆(79点)


要約と感想レビュー

いねむり先生とは?

著者の伊集院 静氏に興味があり手にした一冊です。自伝的小説ということで、夏目雅子と結婚する人はどんな人なのか、夏目雅子を亡くしてからどうしていたのかなど興味があったのです。


妻をなくした主人公は、アルコールとギャンブル漬けのような生活の中で、いねむり先生(阿佐田哲也=色川武大)と出会います。先生は「狂人日記」という狂気と幻覚に悩ませる自伝的小説を書いている最中です。実際、先生は突然眠ってしまう病気を持っており、ある意味狂っているのかもしれません。


友人との紹介で会食したり、麻雀をする中で、いねむり先生と主人公は一緒に酒を飲み、日本中の競輪場を巡る「旅打ち」に二人で出かけるような関係になります。「旅打ち」の中には、競輪の選手一人を追い駆けて旅を続ける人もいるという。ギャンブル中毒のようなものなのでしょうか。


・この次は競輪か、麻雀をしませんか(p27)


ギャンブル好き

意外だったのは主人公(著者)がギャンブルに詳しいということでしょう。ギャンブルで儲け続けることが難しいことは誰もがわかっているのに続けてしまうのがギャンブルなのです。いねむり先生はギャンブル好きで、酒を飲み、文章を書き、心の中に何か狂気と寂しさを持っています。そんないねむり先生と主人公とは、常に二人でいるようになるのです。


著者は競馬場、競輪場に集まる人々を、沼に大勢の男がドロ水に浸かり、飛び跳ねてくる獲物を狙っている姿と似ていると表現しています。そして競輪場にそこを仕切っている地元の暴力団があり、商売の元締め、露天商、飯屋、白タクなどあらゆるしのぎを仕切っていることも赤裸々に描写しています。私の叔父が会社を引退後に、競馬新聞を片手にいつもニコニコとレースを予想しているのを思い出しました。


・ギャンブルを長く続けられる人間の条件は、日銭が入る身分であることだ(p71)


人は寿命で亡くなる

阿佐田哲也(色川武大(たけひろ))といえば私が高校生のとき「麻雀放浪記」を読んで、麻雀プロというものがあるんだなと思った記憶があります。そのいねむり先生が、夏目雅子を失って自暴自棄になっている著者に、『人は病気や事故で亡くなるんじゃないそうです。人は寿命で亡くなるそうです』と伝える部分を著者は書きたかったのではないでしょうか。


時間は悲しみを薄めてくれますし、人の一言も悲しみを和らげてくれるのです。伊集院さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・いつの頃からか、妻に関る話題が出ると、反射的に怒りが込み上げるようになっていた(p209)


・二年前、ボクは人間関係を拒絶しようと決め、それに徹してきた。それまでの付き合いを捨ててしまうと、これが想像以上に楽で、物事の基準が明確になる(p305)


・リズムですよ・・正常なリズムで過ごしているから人間は普通に生きていられるのです(p357)


「いねむり先生」伊集院 静
伊集院 静、集英社


【私の評価】★★★☆☆(79点)



著者経歴

伊集院静(いじゅういん しずか)・・・1950年2月山口県生まれ。立教大学文学部卒。1991年『乳房』で第12回吉川英治文学新人賞、1992年『受け月』で第107回直木賞、1994年『機関車先生』で第7回柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で第36回吉川英治文学賞を受賞


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