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「日本史にみる経済改革 歴史教科書には載らない日本人の知恵」童門 冬二

2023/07/04公開 更新
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「日本史にみる経済改革 歴史教科書には載らない日本人の知恵」童門 冬二


【私の評価】★★★☆☆(78点)


要約と感想レビュー

軍事から平和

童門さんの本は、すべて読んでしまおうと思っているので、2002年の本ですが読んでみました。雑誌に「経済の視点」として、歴史教科書に載らない経済政策について連載したものです。


江戸時代は、戦国時代に比べて平和な時代でした。戦国の世では、武士には力が求められましたが、江戸時代には、計算できるか、検地して税として年貢を徴収できるかどうかが求められるようになりました。戦国時代には、小田原の城下町は城壁で守られていることが発展のポイントとなりましたが、平和な時代になると、金儲けできるのかどうか、自由に商売をできるのかどうかが重要になりました。


また、軍用品は、一般民生品に転換され、軍用食である梅干は、一般人にごはんのお供の梅干として売られるようになったという。


・小田原近辺で北条家の軍用食として梅の栽培をしていた人びとは・・軍事食だった梅干を・・一般人に売り出した(p159)


歴史のトリビア

童門さんの本のよいところは、歴史のトリビアがたくさん出てくるところでしょう。例えば、赤穂(あこう)藩の浅野に吉良上野介(きらこうずけのすけ)が江戸城で切られた赤穂事件は、吉良邸に討ち入りした赤穂浪士に同情的です。実は赤穂藩はお取り潰しになったのですが、赤穂藩の藩札は通常であれば無価値となるところですが、赤穂藩は正貨の六割で償還したという。多くの商人が驚き、赤穂藩に感謝したという。


また、蒲生氏郷(がもううじさと)は東北の会津黒川に異動させられます。氏郷は、会津黒川を「会津若松」と改め、会津商人の育成に尽力します。日野の名産品である「日野椀」を会津で作り、「会津塗」として売り出します。会津をブランド化しようとしたのです。


また、江戸時代には藩の経営コンサルタントがいたという。江戸後期の海保青陵(かいほせいりょう)は、旅行しながら滞在先の絹織物や煙草など産業改革案を進言したという。例えば、絹の大消費地である京都のニーズを調査して絹織物を生産すること、売れる産地の周辺からも原料を集めて、産地ブランドで売ることなどを助言していたという。江戸時代の藩の経営には、投資やマーケティングといった経営的視点が求められていたのです。


・水野忠之・・一般人にも資金を提供させて新田を開発し、そこでとれる米を、提供資金額に応じて配分する(p44)


学問は役立たなければならない

本書の最後に、江戸両国橋のたもとで講義をおこなっていた細井平州という学者が紹介されています。細井平州は、学問は役立たなければならない、学問は相手に伝わらなければならないという考えのもとに、大道芸人の中に混じって講話していたというのです。童門さんは現代の細井平州になりたかったのではないかと思いました。


歴史とは面白いな!と思わせてくれる一冊です。これだけネタを集めるには、膨大なインプットが必要だと思いますが、そのエキスを教えてもらえるのはありがたいことです。童門さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・かれ(信長)はやがて、「撰銭令」という掟を出した。撰銭令というのは、「良い銭を通用させ、悪い銭を追放しろ」(p12)


・大阪商人は、よくカネがなければチエを出せ、チエがなければアセを出せという(p92)


▼引用は、この本からです
「日本史にみる経済改革 歴史教科書には載らない日本人の知恵」童門 冬二
童門 冬二、角川書店


【私の評価】★★★☆☆(78点)


目次

信長の楽市・楽座の目的
北条氏が育てた商人たち
蒲生氏郷の商人育成
徳川家康の蓄財法
幕府最初の大蔵大臣
長州藩の特別会計
発言力の基盤は財力だ
江戸の経営コンサルタント
殿さまも及ばぬ本間さま
江戸の赤字公債
江戸の環日本海構想
不況時の才覚
幕末のグローバリズム
フランスでまなんだ合本法
江戸の失業者
江戸のEQ



著者経歴

童門冬二(どうもん ふゆじ)・・・歴史作家。昭和2年、東京生まれ。19年、志願して海軍土浦航空隊に入隊。翌年終戦。復員後、目黒区役所に勤務。のちに東京都庁に移り、知事秘書、広報室長、政策室長などを歴任した。54年、美濃部都知事の引退とともに都庁を去り、作家活動に専念。平成11年、勲三等瑞宝章受章。また、「歴史にみる組織と人間」をテーマにした講演も日本全国で開催されている


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